黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

追悼・村木賢吉さん

ユピテル YL-2131~32 

決定盤・有線演歌全曲集

発売: 1979年

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ジャケット



A1 男の哀歌 (千昌夫)

A2 ゆきずり (細川たかし)

A3 新宿・みなと町 (森進一)

A4 港夜景 (細川たかし)

A5 命燃やして (石川さゆり)

A6 抱擁 (箱崎晋一郎)

A7 水割り (牧村三枝子)

A8 涙の朝 (八代亜紀)

B1 女だから (八代亜紀)

B2 おもいで酒 (小林幸子) 🅱

B3 よせばいいのに (敏いとうとハッピー&ブルー)

B4 忘れてほしい (渥美二郎) 🅱

B5 舟唄 (八代亜紀) 🅱

B6 虫けらの唄 (バーブ佐竹)

B7 歩 (北島三郎)

B8 あきらめワルツ (内山田洋とクール・ファイブ)

C1 おまえとふたり (五木ひろし)

C2 意気地なし (箱崎晋一郎)

C3 おまえとおれ (杉良太郎)

C4 おやじの海 (村木賢吉) 🅱

C5 女・ひとり (秋庭豊とアローナイツ)

C6 ぬれて横浜 (黒沢明ロス・プリモス)

C7 別れても好きな人 (ロス・インディオス&シルヴィア)

C8 故郷へ (八代亜紀)

D1 いたわりあい (増位山太志郎)

D2 みちづれ (牧村三枝子) 🅱

D3 夢追い酒 (渥美二郎) 🅱→4/23 (全尺版)

D4 他人船 (三船和子)

D5 花街の母 (金田たつえ) 🅱→4/23 (全尺版)

D6 ひとり酒 (ぴんから兄弟)

D7 蝉時雨 (五木ひろし) 🅱

D8 北国の春 (千昌夫) 🅱→4/23 (全尺版)

 

演奏: ユピテル・グランド・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 2,500円

 

「おやじの海」のメガヒット(1979年、オリコン最高5位)で知られる村木賢吉さんの訃報が、昨晩伝えられました。享年88歳。6月19日に息を引き取られたそうです。

アーバンもしくはニューウェイブな風が吹いていた1979年にしては、ピュアすぎると呼んでも過言ではない音作りの演歌の大ヒットは意外かもしれませんが、演歌自体が今からは想像できない高波に乗っており、大ヒットが出まくってた時期であり、幅広い世代にアピールできる楽曲が相次いで歌番組を賑わせました。そこに食い込んできたのが、その7年前既に自主制作盤として世に出ていたこの曲。この「インディーズ・ヴァージョン」は当然より世間離れした響きをしており、後年湯浅学氏監修によるコンピ『男・宇宙』でメジャー発売された他、2015年にはこれを制作したレーベル『直島ミュージックスタジオ』のアンソロジーCDも発売されるなど、再発見現象が起こっています。それにしても、メジャーヒットした時の村木氏の年齢、現在のMAKIDAIやaikoと一緒だったとは…

 

演歌好きの父が早々と発見したこの曲、時流に逆った音作りで好奇心旺盛だった自分のアンテナにも即引っかかりましたが、こうして歌無歌謡探究に勤しんでいる中、その頃の記憶が蘇るのも当然の成り行き。79年のヒット曲を集めたJack盤『最新ヒット歌謡』に収められていたヴァージョンは、マイナーレーベル故オリジナルのピュアな音に無意識に肉薄していたものの、サウンド的特色の一つ「よいしょ、よいしょ」の掛け声が、一つ前の曲「OH! ギャル」に間抜けなコーラスが添えられたにもかかわらず、オミットされていました(6月11日参照)。同じように79年のヒット曲を集めたこのユピテル盤のヴァージョンには、ちゃんと入っています。勇ましい感じで連呼してるのがかえって微笑ましいですが、キーが変えられており、1コーラス目はこの手の曲には珍しく、フルートで演奏されています。所々尺八っぽい節回しになっているものの、ラブリーな響きは掛け声とアンバランス。しかし、どちらかというとモダンなサウンドの演歌曲が19曲続いたあとだと、かえってフレッシュな印象が。

モダンなサウンドといえば、このアルバムのトップの「男の哀歌」、イントロからピンク・レディー「サウスポー」も顔負けのシンドラムが炸裂。134週もチャートインしたメガヒット「北国の春」の影に隠れ、忘れ去られてしまった曲ですが、発売当時聴いて呆気にとられたことを思い出しました。演歌界と言えど、実験の舞台にも大いに成り得たのです。B面ではキダ・タロー先生作曲による「虫けらの唄」の清涼感が貴重。バーブは70~80年代には目立つヒットに恵まれませんでしたが、80年代には67年のB面曲「青いゴムゾーリ」がカルト曲として再注目を浴びたりしています。

C面は木村好夫先生渾身のペンによる大ヒット「おまえとふたり」からスタート。左側で聴こえるギターは作曲者本人でしょうか。山内喜美子さんかもしれない京琴や、尺八的フルートも動員してのリスペクトあふれるアレンジです。それ以上に耳を引くのが「別れても好きな人」。60年代以来スリーパー的に歌い継がれていたこの曲が、ロス・インディオス&シルヴィアによって突如大ブレイク。そのヴァージョンを基調にしたアレンジですが、全体を彩るケーナ的な音色に爽やかさを感じます。間奏の速吹きは、本物のケーナだとめちゃやりづらそうだし、やはりリコーダーなのかな…頭部管だけ改造したとか。おなじみの曲がずらっと並ぶD面。「夢追い酒」は場末感濃厚で酔いそうな演奏ですが、Jack盤のねーちゃん達のコーラスが愛しくなります(汗)。「他人船」ミノルフォン極初期のリリース曲でしたが、この時期遠藤実ブームに乗って見事に復活した曲です。実にアーバンな「蝉時雨」とど定番北国の春でお開き。色々と感慨深くなってくるこの演歌のコンピに、このジャケットはないでしょう…それがまた、ユピテルのカラー。アレンジャーの顔が見えなくて残念ですけど。村木さん、安らかにお眠り下さい。

 

追補: 4月23日紹介した『夜の盛り場演歌全曲集』と重複する3曲は、この盤では短縮ヴァージョンで収録されていました。

1969年、今日の1位は「禁じられた恋」

クラウン GW-5084

港町ブルース 大正琴は歌う

発売: 1969年7月

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ジャケット



A1 夜明けのスキャット (由紀さおり) 🅴

A2 港町ブルース (森進一) 🅵

A3 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅶

A4 七色のしあわせ (ピンキーとキラーズ) 🅲

A5 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅴

A6 夜の慕情 (美川憲一)

A7 禁じられた恋 (森山良子) 🅲

B1 時には母のない子のように (カルメン・マキ) 🅴

B2 初恋のひと (小川知子) 🅴

B3 港町・涙町・別れ町 (石原裕次郎) 🅳

B4 みんな夢の中 (高田恭子) 🅲

B5 京都・神戸・銀座 (橋幸夫) 🅱

B6 あなたに泣いた (青江三奈)

B7 君からお行きよ (黒沢明ロス・プリモス) 🅲

 

演奏: 吉岡錦正、吉岡錦英 (大正琴)/クラウン・オーケストラ

編曲: 福山峯夫

定価: 1,500円

 

主力商品のテナーサックス、ドラム、ギター以外にも、ありとあらゆる楽器を前面に出し歌無歌謡の可能性を追求しまくった(故に、『さわやかなヒット・メロディー』の牙城に食い込まなかったのが惜しすぎる)クラウン、やはり大正琴にも手を出していました。大正琴ということで、声がかかったのは当然あの二人。これから当ブログで紹介する大正琴レコードは、ほぼ全てこの二人をフィーチャーしています。

69年中盤のヒット曲で固めたこのアルバム、音色がしっくり来るドメスティックなメロディーが中心になってるけど、やはり味わいが不思議。長崎は今日も雨だったも、旋律を崩し気味になってる箇所があったりして、伴奏の場末感も絡んでかなり侘しい出来。それ以上にポップス系の曲からもたらされる妙な空気が、このアルバムの色を決定づけている。6曲、5日前に紹介した森岡賢一郎編曲のアルバムと重なっているが、洗練度は雲泥の差。冒頭の「夜明けのスキャットからして、テイチクのスタジオで録られたのかという錯覚さえ抱かせる、「こんなにこんなに愛してる」感が漂うバッキング(特にベースとドラムのフィルなど「もろ」なところもあり、山倉氏の波長が確実に伝わってそう)に乗せて、黙々とメロディーが奏でられる。残念ながらBメロの7小節目のコードは変えられている(ここはほんと重要なので、この曲のヴァージョンを語る時に避けて通れない)。同じ福山氏が手掛けたギター・ヴァージョン(5月3日参照)には、「テイチク感」はまるでなかったのにね。やはり、ミュージシャンを丸ごと変えたのだろうか。こちらは「’68オールスターズ」名義を使ってないし。

これ以上に破壊力が強いのが「禁じられた恋」。この曲の場合、キハーダの音が必要以上に強調されてるとか、リズムのジャングル感(?)がより際立っているとか、アレンジの面白さを決定づける要素が固定しているのだけど、このヴァージョンにはそれらがない。ただ単に平坦に、しかもオリジナルよりテンポがかなり遅く演奏され、キハーダが入るはずの部分には控えめにクラッシュシンバルが入るのみ。その侘しさを、大正琴が淡々と奏でるメロディーが強調しており、それが逆説的なやばさを醸し出している。まるでいけない恋をした後、一人で家路につく背中を照らす朝陽のような感触だ。同様の孤高感は、案の定「時には母のない子のように」にも顔を出しているが、こちらは曲の性格上、そんなに違和感がない。

全編を通して、律儀に全ての音が均等なタッチで演奏される大正琴。その表情を決定付けるのは、バックの音との温度差。その事実が非常によくわかるアルバムである。緩急つけた曲順も、それを強調するのに役立っている。ジャケットの爽やかさは不似合いだな…裏も違うモデルが同じようなポーズをとってるし。

歌謡フリー火曜日その14: 音楽?それはもちろん…

テイチク FX-403

ダイナミック・ベンチャーズサウンド

発売: 1971年

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ジャケット



A1 ダイヤモンド・ヘッド

A2 パイプライン

A3 ウォーク・ドント・ラン

A4 さすらいのギター

A5 10番街の殺人

A6 太陽の彼方 🅲

B1 キャラヴァン

B2 ワイプ・アウト

B3 アウト・オブ・リミッツ

B4 バンブル・ビー・ツイスト

B5 ドライヴィング・ギター

B6 レッツ・ゴー

 

演奏: ザ・サウンド・スピリッツ

編曲: 鈴木義夫

備考: RM方式4チャンネル・レコード

定価: 2,000円

 

本来ボブ・ボーグルの命日の翌日に語るはずだった、本家ベンチャーズサウンドに新たな側面から取り組んだアルバム。一部アイテムが大騒ぎの対象となっている70年代初期テイチクの実験的シリーズの1枚。あくまでも4チャンネル・サウンドのダイナミズムを伝えることを念頭に置いていて、そこまでカラフルなサウンド演出はされてない代わりに、これでもかとギターの大群が押し寄せてくる。楽曲的にはベンチャーズのレパートリーを素材にしつつ(「太陽の彼方」は便宜上選ばれたという感しかないが)、4チャンネルの四隅にそれぞれ違った個性を放つギターサウンドを配置。その録られ方もスタジオの響きを生かしたというより、アンプの出音をそのまま伝えるという感じで、故に通常のステレオで聴くとアンバランスに感じる箇所も多い。ベースとドラムがポジション的に固定してるので、余計そう感じるのかも。当時のドラムものに顕著だった、ドラムサウンドに実験的空間演出が生かされている曲もわずかにあるが(肝心のワイプアウトがそうじゃないのが惜しい)、ひたすらあっちでもこっちでもギター、ギター、ギターの応酬。オープニングの「ダイヤモンド・ヘッド」ひとつとっても、オリジナルの雰囲気を踏襲したリードプレイを、時代らしく若干ディストーション気味のリズムギターが支え、さらに当時ならではのニューロックオブリガートのギターと、もう一本地味に響くリズムギターが鳴っている。それら全てを違うポジションに配しているのが、いかにも4チャンネルですという感じ。ウルトラヴォックスの「ニュー・ヨーロピアンズ」を予見したような中間部が付け加えられているのにも工夫が窺える。続く「パイプライン」も必要以上にハードなサウンドに変容していて、エンディングでこれでもかと大爆発する。ラストの「レッツ・ゴー」では、アンプに密接したマイクがミュージシャン達の歓喜の叫びを微かに拾いまくり、実にエキサイティング。この頃は専ら歌謡曲との親和性しか語られていなかったベンチャーズのロックな一面を剥き出しにするという点で、まさに天晴なアルバムだ。

ところでライナーで指摘されている「アウト・オブ・リミッツ」ベンチャーズ盤が「63年にしてピンク・フロイドに通じるサウンドを出していた」件。ここで聴けるヴァージョンはそれを立証するようなアレンジになっているのは解るとしても、なんか腑に落ちないという感じ。確かに「星空のドライヴ」あたりに通じているなという感はあるが、それを言うならスパイダースの「トワイライト・ゾーン」の方が遥かにサイケだし、プログレ感さえあるのではないかと。いずれにせよ、ベンチャーズを縦軸にインスト・ロックを語ってみると、色々と新しい発見があったりして。ベンチャーズ歌謡だけ語ってもしょうがないのですよ、このブログでさえもね。

今日は片平なぎささんの誕生日なので

ミノルフォン KC-81

最新ヒット歌謡

発売: 1975年4月

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ジャケット



A1 湖の決心 (山口百恵) 🅰→5/13

A2 私鉄沿線 (野口五郎) 🅰→5/13

A3 はまなすの旅 (西崎みどり)

A4 この愛のときめき (西城秀樹) 🅰→5/13

A5 哀愁のレイン・レイン (チェリッシュ) 🅱→5/13

A6 純愛 (片平なぎさ)

A7 哀恋記 (五木ひろし) 🅰→5/13

B1 春のめざめ (森昌子)

B2 ひとり歩き (桜田淳子) 🅰→5/13

B3 たんぽぽ (太田裕美) 🅰→5/13

B4 白い部屋 (沢田研二) 🅰→5/13

B5 浮草の宿 (殿さまキングス) 🅰→5/13

B6 片隅のふたり (麻生よう子)

B7 黄昏の街 (小柳ルミ子) 🅰→5/13

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ&ストリングス

編曲: 福井利雄、神保正明

定価: 1,800円

 

我が永遠のアイドル「なぎ」を讃える回です。歌手としての活動を本人は封印したがってるようだけど、初期の頃からただものではない期待が寄せられ、歌無歌謡界でも最低4回、その曲がカバーされている。「頬にかかる涙」を収録した『ピアノ・ムード2』のライナーに記された「片平なぎさは大柄な美人」というもろな論評には笑うしかないが…

ここで取り上げられた「純愛」はそのデビュー曲で、売上的には最大のヒットを記録。純愛すぎて絶望感が露呈してしまうほどの懸命な乙女心を、ここではファンシーな音色使いで堅実にインスト化。「オリーブの華麗な青春」あたりが歌無歌謡界で取り上げられてたらと期待してしまうのだけど。

その曲以下、75年春のヒット曲をずらっと取り上げているこのアルバムだが、14曲中10曲が8月リリースされた2枚組『最新ヒット歌謡BEST30』に流用されており、そちらを5月13日に先に語ってしまったため、あまり語り残したことがない(爆)。ここでしか聴けない4曲はいずれも女性歌手の中ヒット規模の曲なので、他の曲と比べてしまうとどうしても地味に感じてしまうけど、「春のめざめ」のBメロのリコーダーはやはり純情満点という感があり貴重。やはり「私鉄沿線」「ひとり歩き」のイントロで聴ける過剰なエフェクトギターが、全体のトーンを決定づけていると言える1枚だ。アレンジャーにクレジットされた二人の役割分担がどうなっているかは未知数だけど、東宝のミラクルサウンズで確立された福井氏のアレンジからは、確実に一歩踏み出している印象。この先ブルーナイトのクレジット周りは、さらに謎めいた傾向が強まるのである…

今日は木の実ナナさんの誕生日なので

国文社 SKS-115

ギター・ムード2

発売: 1976年?

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ジャケット



A1 愛の始発 (五木ひろし) 🅱

A2 女の十字路 (細川たかし) 🅱

A3 北の宿から (都はるみ) 🅳

A4 花水仙 (八代亜紀)

A5 おまえさん (木の実ナナ) 🅱

A6 愚図 (研ナオコ)

B1 昭和枯れすゝき (さくらと一郎) 🅴

B2 北へ帰ろう (徳久広司) 🅱

B3 命かれても (森進一) 🅲

B4 熱海の夜 (箱崎晋一郎) 🅱

B5 女のみち (宮史郎とぴんからトリオ) 🅴

B6 あなたにあげる (西川峰子) 🅱

 

演奏: ニュー・サン・ポップス・オーケストラ/木村好夫 (ギター)

編曲: T. Ikeda/T. Misaki

定価(参考市価): 2,200円

 

和洋折衷だった『ギター・ムード』から一転して、ど演歌中心の内容となった『2』。しかも好夫御大を担ぎ出すという大胆な技に出た。と言えども、国文社らしい「ニュームードミュージック」の色は保たれているから、安心して聴ける。洋楽的サウンド作りで料理されたこれらの曲も悪くない。「愛の始発」はさりげない低音ギターが先導し、のちに作曲家として大ヒット曲「おまえとふたり」を提供することになる五木ひろしとの友情を音像化。「女の十字路」も華麗なオーケストレーションを背に、好夫節が炸裂。このメロディーこなしがあると、途轍もない安心感がもたらされる。「北の宿から」は過度に洗練させすぎてしまったような。76年当時の最新ヒット曲で固めたA面と打って変わって、B面はスタンダード曲を中心に、最新サウンドで統一感を出している。「昭和枯れすゝき」一人二役でデュエット。「命かれても」は何度も録音しているためか、余裕綽綽といったプレイだ。木の実ナナさんは歌無歌謡全盛期に主だったヒットに恵まれなかったけど、プレイボーイ・レコードから出たこの曲「おまえさん」は静かなヒットを記録し、結構取り上げれられている。丹羽応樹さん作曲というのがポイント高い。

アレンジに保守性が出ているところは国文社らしくはないけれど、その枠組みにはめ込んだところは評価したい。ジャケットは…帯をずらしたけどこれが限度ですね…(汗)

1978年、今日の1位は「モンスター」

Dovecot DL-1007

ニューヒット・スタジオ・ベスト12 Vol. 2

発売: 1978年

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ジャケット



A1 飛んでイスタンブール (庄野真代)

A2 かもめが翔んだ日 (渡辺真知子) 🅱

A3 この空を飛べたら (加藤登紀子) 🅱

A4 さよならだけは言わないで (五輪真弓)

A5 ジョーのダイアモンド (朱里エイコ)

A6 Mr. サマータイム (サーカス) 🅱

B1 モンスター (ピンク・レディー) 🅱

B2 かもめはかもめ (研ナオコ) 🅱

B3 宿無し (世良公則&ツイスト) 🅱

B4 ダーリング (沢田研二) 🅱

B5 東京ららばい (中原理恵) 🅱

B6 時間よ止まれ (矢沢永吉) 🅱

 

演奏: Dovecot Sounds

編曲: 無記名 (柳刀太?)

備考: カラーレコード (橙)

定価: 1,480円

 

前6作からしばらく間隔を置いてリリースされたと思われる、ヨーカドーのカラオケシリーズ、ポップス編第2弾。と言っても、第1弾を紹介するのはまだ先の話ですが…ニューミュージック色が濃い内容の中、『ヤングアイドルベスト12』を補填するように「モンスター」も選ばれている。カラオケと言えば、ヨーカドーの先立つ盤も証明しているように、淡白なシンセ音でガイドメロディーが薄く入るのが定番だが、ここでは主にフルートの音が先導しており、音量も通常の歌無歌謡並み。「さよならだけは言わないで」は特に、かなり大きい。よって、イージーリスニングとしても聴けるし、フルートの練習にも使えそう。そこまでガチなプレイではなく(リズムセクションやストリングスは、例によってかなり力がこもった演奏ないし録音になっている)、このフルーティストの「顔は見えないけど、力一杯あなたの歌に寄り添うわよ!」と言う心意気がさりげなく伝わる。A面に並ぶ女性ヴォーカル曲のリリカルさが、特にこの音色にぴったりフィットしている感じ。かの「リトル・ダイナマイト」(ワーナー・ビートニックスに関しては、このサイトの恩恵を多大に授かっております!)にも歌無歌謡ヴァージョンの存在が記されていない「ジョーのダイヤモンド」の選曲が実にレアだ。「Mr.サマータイムにはご親切にも、コーラスパートが完璧に収録されている。Jack盤のような滑稽なコーラスでなくてよかった(爆)。「モンスター」はサービス以外のなんでもないが、イントロの絶叫はパチソン好きを戦慄させそう。「宿無し」「ダーリング」は、さすがにフルートは一休み。後者は有線の言い分だと「人の声に一番近い楽器」らしいアコーディオンがリードをとっている。「時間よ止まれ」は意外にもガチでオリジナルに近いサウンドに、フルートが恥ずかしそうに色を添えている。そっちに気をとられてしまい、カラオケどころではない。嗚呼、これはヨーカドーのカラオケレコードなのに。

DL-1008以降のリリースは、残念ながら確認されていない。もうちょっと続いて「ガンダーラ」なんかを収録して欲しかった感もあるが。ここでも既に「PRODUCER/ハウス・プロダクション」以外のクレジットが一切消えており、もう諦めモードだったのかも。蛇足ながら、DL-2000番台の最初のリリースは、英国のアヴェニューと提携しての「サタデイ・ナイト・フィーヴァー」のカヴァー盤であることまで確認されている。

100日目、今日は高橋健二さん (ブルー・コメッツ)の誕生日なので

コロムビア HS-10002-J

ニュー・ヒット14 或る日突然

発売: 1969年7月

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ジャケット



A1 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅵

A2 或る日突然 (トワ・エ・モア) 🅲

A3 禁じられた恋 (森山良子) 🅱

A4 みんな夢の中 (高田恭子) 🅱

A5 涙の糸 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅱

A6 港町シャンソン (ザ・キャラクターズ) 🅱

A7 時には母のない子のように (カルメン・マキ) 🅳

B1 愛して愛して (伊東ゆかり) 🅱

B2 港町ブルース (森進一) 🅵

B3 夜明けのスキャット (由紀さおり) 🅳

B4 白いサンゴ礁 (ズー・ニー・ヴー) 🅱

B5 粋なうわさ (ヒデとロザンナ) 🅱

B6 風 (はしだのりひことシューベルツ) 🅴

B7 涙の中を歩いてる (いしだあゆみ) 🅲

 

演奏: ゴールデン・ポップス・オーケストラ

編曲: 森岡賢一郎

定価: 1,500円

 

本日で当ブログも100日目(前夜祭は除く)を迎えました。寺さんの訃報に1日黙祷していなければ、これが100枚目…来るとこまで来ましたが、まだまだ先は長いです。開始後解明された新たな謎もあったり、近々「当事者に直撃」の最初の事例を試みる運びになりそうだったり、やはり歌無歌謡のことを考えるのが一番楽しいし、世の理不尽からのいい解放ができてるなと思います。

いい感じでネタも増えてきたので、「はじめに」で提示したポリシーにいくつか変更があることを、この機会に表明します。

「通販で売られたセット物の1枚」「当時のLPの流れを忠実に再現したCD」を取り上げることを示唆していましたが、これらは対象外とすることにしました。また、「2枚組で片方が欠けたもの」もいくつか手許にありますが、万全を期すため排除。但し「ジャケットと違う盤が入っていたアイテム」が1枚あり、それ自体が重要盤のため取り上げます。カセットはすでに1本取り上げているし、語る価値がありすぎるブツが更新予定に組み入れられているので、今更対象外にはしません。

「単独アーティストの楽曲をカヴァーした盤」に関して、主に火曜日に数枚取り上げており、通常の日にもあと数枚予定していましたが、それも諦めました。よって、4月11日の『加山雄三ヒットメロディー』が唯一のその手のエントリになります(火曜日は除く)。但し、各サイド毎に単独アーティストをカヴァーした盤は、すでに1枚(1面)取り上げており、あと2作予定しています。

「相応しいテーマが思いつかない日は、適当に1枚拾い上げて対応」=いわゆる「ノンセクションの日」も、開始当初は10日程設定していましたが、丹念な史実調査、新たに入手したネタの内容などが関係し、結局今後全ての日(火曜日は除く)にある程度のテーマが設定され、そこで語る盤が決まりました。その変更を促すものがあるとすれば、偉大な歌謡関係者の訃報のみです。それこそ、もし「あの方」が亡くなったら、1週間かけて追悼します。

そんなわけで、今後はひたすら「67~79年に市販された歌のない歌謡曲のコレクションLPレコード」を、数回の例外はありますが取り上げていきたいと思います。火曜日に関しても、ポリシー変更を決めましたが、これに関してはもうしばらく黙っておくことにします。

 

というわけで、本題そっちのけになってしまいましたが…68年まで扱っていたCBSレーベルを筆頭とするコロムビアの洋楽部から枝分かれしてスタートしたインスト盤専門シリーズ、HS品番で出されたレコード30数枚のうち、現時点で手元にあるのは今日取り上げる1枚のみ。何せ質の高さ故か妙に人気があり(村岡実の『尺八ロック』シリーズなど、4桁で買えれば奇跡という領域に達したものも)、全容を解明するのに相当勇気が要りそうである。69年の大ヒット曲が勢揃いの本盤も、取り上げられまくった曲のオンパレードで、見た目には面白味皆無。しかし、その編曲者が森岡賢一郎先生であるというのがポイント。この時点で既に歌謡界随一のアレンジマスターである。せこい仕事をするわけない。本作では長崎は今日も雨だった港町ブルースの2曲がセルフリアレンジで、当然原曲の魅力をある程度再現しているが、他の曲も一切手加減せず「自分ならこうするな」という絶妙な技を見せまくり。「禁じられた恋」のキハーダの音がせこかったり、「涙の糸」ではオリジナルのソウルフルさが抑え気味だったりするけれど(この曲にはめちゃ贔屓目があるのでね…)、それらが「落ち度」にはなっていないし、「夜明けのスキャットもコードの簡素化一切なしで容赦してない。他の盤で聴けるこれらの曲のヴァージョンより、遥かに「華」がある音だ。これが71年とか72年になると、相当変わってきそうだけど、森岡氏の多忙さがそんな余裕にかまける暇を与えるわけないだろう。奇跡の大ヒット曲が次々と出されるわけだから…