黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1978年、今日の1位は「サウスポー」

クラウン GW-3195~96

ビッグ・ヒット歌謡ベスト36 絶体絶命・ヤマトより愛をこめて

発売: 1978年9月

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ジャケット



A1 ヤマトより愛をこめて (沢田研二)

A2 時間よ止まれ (矢沢永吉)

A3 時には娼婦のように (黒沢年男)

A4 プレイバックPart 2 (山口百恵)

A5 あしたも小雨 (五木ひろし)

A6 昔の名前で出ています (小林旭)

A7 林檎抄 (森進一)

A8 与作 (北島三郎)

A9 微笑がえし (キャンディーズ)

B1 ブルー (渡辺真知子)

B2 モンスター (ピンク・レディー)

B3 Mr.サマータイム (サーカス)

B4 絶体絶命 (山口百恵)

B5 サウスポー (ピンク・レディー)

B6 この空を飛べたら (加藤登紀子)

B7 あざやかな場面 (岩崎宏美)

B8 津和野ひとり (森昌子)

B9 ドール (太田裕美)

C1 20才になれば (桜田淳子)

C2 林檎殺人事件 (郷ひろみ樹木希林)

C3 UFO (ピンク・レディー)

C4 あれ! (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)

C5 君の歌がきこえる (布施明)

C6 泣き上手 (野口五郎)

C7 あの人の匂い (三善英史)

C8 お店ばなし (増位山太志郎)

C9 あんたのバラード (世良公則&ツイスト)

D1 たそがれマイ・ラブ (大橋純子)

D2 東京ららばい (中原理恵)

D3 リップスティック (桜田淳子)

D4 ダーリング (沢田研二)

D5 かもめはかもめ (研ナオコ)

D6 そんな女のひとりごと (増位山太志郎)

D7 迷い道 (渡辺真知子)

D8 ゴー・ウエスト (ザ・ドリフターズ)

D9 宿無し (世良公則&ツイスト)

 

演奏: クラウン・オーケストラ

編曲: 神山純Ⓐ、井上忠也Ⓑ、久富ひろむⒸ、小杉仁三Ⓓ、栗田俊夫Ⓔ、湯野カオルⒻ

定価: 3,000円

 

歌無歌謡の王者といえば、何と言ってもクラウン。その偉業を語るには相当の勇気を要する。が、大まかに分けて1974年を境に、このレーベルの歌無歌謡の歴史が2等分されるのは確かだ。その後半の方がとにかく、頭痛の種である。他のレコード会社が「乱発」をやめてもなお、ここだけはペースを崩さず、寧ろ暴走気味となるのだ。そして、演奏者クレジットも「クラウン・オーケストラ」で統一される。しかし、面倒なくせして、時折ハッとさせる名演が残されてもいるのだから、決して素通りできない。これからの1年間、クラウンものは週1~2枚のペースで必ず出てくると思われますが、どうかお付き合い下さいませ。

1978年の今日、「サウスポー」が1位となり、翌日にはキャンディーズが後楽園球場(当時)にて「ファイナル・カーニバル」を行い解散した。他のレコード会社の殆どが、演奏ものの重点をカラオケのレコードにシフトしたこの頃も、相も変わらず元気だったクラウンによる、78年春~初夏(一部それ以前からのロングランヒットも含む)のヒット曲選集。全体的にはせこい、「クラウン節」というべきサウンドながら、面白い展開がここそこに聴かれる。以下、聴きどころ。

クラシカルなアレンジで新たな色彩を与えている「時には娼婦のように」。アグレッシヴに攻めつつ、シンセのシーケンスの代役にファンキーなクラヴィネットを立ててみせたのが痛快な「プレイバックPart 2」。恥じらいがちな乙女心をリコーダーで再現してみせる「20才になれば」などが傑出した出来。D面冒頭の筒美京平曲3連発では、やはり曲の良さに引っ張られていい演奏をしている。一方で、歯切れの悪さが否めない微笑がえしや、恐らくギターで出していると思われる「UFO」のストレンジな効果音、アレンジに時間をかける余裕がなかった様子が窺える、イントロ全体を間奏やエンディングにも転用した「ダーリング」などにも、逆説的な風情を感じずにいられない。

そして、クラウンものがいかに頭痛の種かは、恐らく今後の更新で徐々に語っていくことになると思うが、ここでもA面6曲目に選ばれている昔の名前で出ていますは、正にその象徴というべき楽曲なのであった…