黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は北島三郎さんの誕生日なので

クラウン GW-3139~40

ビッグ・ヒット歌謡ベスト36 カルメン'77・フィーリング

発売: 1977年

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ジャケット(裏)+帯

 

A1 フィーリング (ハイ・ファイ・セット)Ⓐ 🅳

A2 想い出のピアノ (森田公一とトップギャラン)Ⓑ 🅱

A3 俺たちの朝 (中村雅俊)Ⓒ

A4 どうぞこのまま (丸山圭子)Ⓓ 🅲

A5 思いで… (因幡晃)Ⓑ 🅱

A6 揺れるまなざし (小椋佳)Ⓒ 🅱

A7 愛する人へ (南こうせつ)Ⓔ

A8 青春時代 (森田公一とトップギャラン)Ⓔ 🅲

A9 あばよ (研ナオコ)Ⓓ 🅲

B1 カルメン'77 (ピンク・レディー)Ⓐ 🅳

B2 しあわせ未満 (太田裕美)Ⓑ

B3 ドリーム (岩崎宏美)Ⓒ

B4 ラストシーン (西城秀樹)Ⓔ

B5 横須賀ストーリー (山口百恵)Ⓒ 🅱→6/15

B6 初恋草紙 (山口百恵)Ⓔ

B7 むさしの詩人 (野口五郎)Ⓔ

B8 S.O.S. (ピンク・レディー)Ⓔ 🅱

B9 あなたのすべて (桜田淳子)Ⓐ

C1 私のいい人 (内藤やす子)Ⓐ 🅱

C2 ラスト・コンサート (アン・ルイス)Ⓐ

C3 メランコリー (梓みちよ)Ⓐ 🅲

C4 恋は紅いバラ (殿さまキングス)Ⓓ

C5 あなただけを (あおい輝彦)Ⓒ 🅲

C6 四季の歌 (いぬいゆみ)Ⓕ

C7 落葉が雪に (布施明)Ⓓ 🅱

C8 想い出ぼろぼろ (内藤やす子)Ⓕ 🅱

C9 北へ (小林旭)Ⓔ

D1 昔の名前で出ています (小林旭)Ⓖ 🅰→4/3

D2 歩 (北島三郎) 🅱

D3 おんな港町 (八代亜紀)Ⓑ 🅱

D4 逢いたくて北国へ (小柳ルミ子)Ⓒ

D5 女の河 (内山田洋とクール・ファイプ)Ⓓ

D6 雨の桟橋 (森進一)Ⓔ

D7 もう一度逢いたい (八代亜紀)Ⓒ 🅲

D8 北の宿から (都はるみ)Ⓒ 🅲→6/15

D9 どこへ帰る (五木ひろし)Ⓓ 🅱

演奏: クラウン・オーケストラ

編曲: 栗田俊夫Ⓐ、井上かつおⒷ、安形和巳Ⓒ、神山純Ⓓ、井上忠也Ⓔ、久冨ひろむⒻ、小杉仁三Ⓖ、安藤実親Ⓗ

定価: 3,000円

 

サブちゃんといえばクラウン、というわけで一文字シリーズの名曲「歩」が取り上げられている2枚組。いろんな意味で困ってしまう…が、まずジャケットが問題すぎる。どこをどう見せれば掲載可能になるのか、まじで悩みましたが、これで勘弁してということで…このジャケゆえ、美品ならとんでもない価格で売り買いされることもあるけれど、自分内では特に75年以降のクラウン盤の基準相場は100円ですので(汗)。ジャンク漁りを繰り返してるうちに、自然とクラウンの割合が増える結果になったのは否めないですよ。物凄い値段(っても、4桁を1円でも超えたら勇気を出す範疇)を出す時があるとすれば、主にとんでもない曲を最低2曲は演っている場合に限られますので。

この盤も、既に語った他の盤と3曲重なってますが、最終的にはもっともっとダブりが発覚するはず。ロングセラーとなった曲も相当数あるため、実に8人のアレンジャーの仕事が混在しており、そのためかバラエティーに富んだサウンドが楽しめる。というのを強引なメリットにしちゃいましょう(汗)。聞き流すにはちょうどいいけど、時折意表をつくサウンドが耳を逆立たせるのだ。全体的に主に無味乾燥な音で展開していくけれど、「あばよ」の中で自己主張し始める笛の音に耳が止まる。控え目なさえずりぶりのわりに低音部がぶっとい音で、リコーダーでこの音を出すとしたらかなりの技量が必要とされるが、曲の後半では普通にリコーダーを奏でてたりして、技の使い分けが心憎い。秀樹の「ラスト・シーン」でも、メロウ化の一翼を担う存在としてリコーダーが大活躍。当時の女の子のファンが、好んで吹いたような曲とは思えないけど。1ヶ所、オクターブ上に上がる段階でつまずくところに萌えまくる(汗)。「四季の歌」は名演「おまえに」の線上にあるエレガントなアレンジで、4種の楽器がそれぞれ1コーラス奏でており、リコーダーは「春を愛する人」の役だ。「初恋草紙」でも笛が大活躍していて、この盤の(それこそジャケットとは程遠い)清らかさの象徴になっている。

社会現象になる寸前状態だったピンク・レディーの当時の最新曲カルメン’77」はノリのいい演奏ではあるけれど、随所にディフォルメ化を行ったような形跡があって笑える。このヴァージョンは、当然の如くその後何度もリサイクルされているのだ。女性コーラスが活躍する「ドリーム」や、効果音の部分を始め随所でシンセが妙な存在感をアピールする「おんな港町」などもクラウンらしい、入ってなきゃ困っちゃうと思わせる演奏だ。「どこへ帰る」はアレンジのせいか、クラウン盤「恋人試験」(6/15参照)にやたらテイストが似てしまっているのが面白い。この曲でも聞かれるケーナ風で実はそうじゃない笛の音の謎は、来週あたりに解明のチャンスが演ってくるはず…

クラウンには珍しい、各サイド毎にカラーが分けられた構成で聴き手に優しいけど、いかにも当時らしい分け方だと思う…個人的には雑種入り混じっていた方が聴いててスリリングと思いますが…