黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は西崎みどりさんの誕生日なので

ユピテル YLT-108

ヒット速報

発売: 1975年3月

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ジャケット



A1 湯けむりの町 (森進一)

A2 冬の色 (山口百恵)

A3 旅愁 (西崎みどり)

A4 あじさいの雨 (渡哲也)

A5 わたし祈ってます (敏いとうとハッピー&ブルー)

A6 涙と友情 (西城秀樹)

A7 理由 (中条きよし)

A8 愛の逃亡者 (沢田研二)

B1 襟裳岬 (森進一)

B2 あなたにあげる (西川峰子)

B3 冬の駅 (小柳ルミ子)

B4 おんなの運命 (殿さまキングス)

B5 北国の朝 (森昌子)

B6 甘い生活 (野口五郎)

B7 白い冬 (ふきのとう)

B8 みれん (五木ひろし)

 

演奏: ザ・サウンズ・エース/ジェイク・コンセプション (テナー・サックス)、木村好夫 (ギター)、石川晶 (ドラムス)他

編曲: 池多孝春

定価: 1,500円

 

1974年にレコード事業に参入したユピテルは、初っ端から歌のない歌謡曲に力を入れまくり、75年頃まで一般販売ルートに加え「博光」経由で特販を展開。現在リサイクル市場に出回る盤は後者、「RH品番」の方が圧倒的に多く、一般ルートの「YLT品番」は寧ろ稀少である。一見、レコードジャケットとは思えないオブジェクトを全面に出したアートワークがユニークで、そのためか密かに人気も高い。この郵便ポストをあしらったアルバムは、全く同じ内容のものが博光ルートで『最新歌謡ベスト16』(RH-3)として出ており、宗内は先にそちらを手に入れていたが、ポストジャケにそそられて全く同じ内容であることに気づかずこちらも買ってしまい、「まぁいいか」となっている。スタンパーまで同じものを使っているようだ。これもまた、歌無歌謡探究者の宿命の一つ。

「ザ・サウンズ・エース」名義は元々大映レコードで使われていたが、どういうわけかユピテルが引き継ぎ、70年代後半までその名義でのリリースを重ねた。クレジットが明記されている3人のプレイもそこまで目立たせず(「好夫節」は曲によって健在であるが)、全体的に手堅い音作りをしている。本盤のアレンジは「死ね死ね団のテーマ」「おさい銭」などを手がけた大御所・池多孝春先生。74~75年のヒット曲がいっぱいだ。以下、聴きどころ。

A面はポップス・演歌をバランスよく均衡の取れた音作りで統一し、中でも「涙と友情」はノリのいい演奏。しかし、B面に行くといきなり大爆弾に見舞われる。襟裳岬だ。イントロ6小節目までは手堅く進むが、その直後突然降り注ぐメロトロンコーラスの洪水!フォークでも演歌でもない異次元が、その先を待ち受けている。ユピテル歌無歌謡の頂点に光り輝く孤高の名演。その後も程よい場末感で進んでいくが、ふきのとう「白い冬」がどちらかというと異色。ただ、他のフォーク総括系コンピであまり取り上げられない曲なので、ここでの演奏は貴重。全体の流れを考慮すると、やはり「襟裳岬」で締め括って欲しかったという思いが強い。もしくは「必殺」を意識して旅愁がトリでもよかったかも。

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『最新歌謡ベスト16』ジャケット