黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は畑中葉子さんの誕生日なので

クラウン GW-5425

ダーリング 魅惑のヒット歌謡ベスト16 

発売: 1978年6月

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ジャケット



A1 林檎抄 (森進一)🅰→4/3

A2 サムライ (沢田研二)

A3 サウスポー (ピンク・レディー)🅰→4/3

A4 ゴー・ウエスト (ザ・ドリフターズ)🅰→4/3

A5 エーゲ海の旅 (平尾昌晃・畑中葉子)

A6 泣き上手 (野口五郎)🅰→4/3

A7 迷い道 (渡辺真知子)🅰→4/3

A8 愛なき世代 (南沙織)

B1 ダーリング (沢田研二)🅰→4/3

B2 時には娼婦のように (黒沢年雄)🅰→4/3

B3 微笑がえし (キャンディーズ)🅰→4/3

B4 プレイバックPart 2 (山口百恵)🅰→4/3

B5 かもめはかもめ (研ナオコ)🅰→4/3

B6 カナダからの手紙 (平尾昌晃・畑中葉子)

B7 あざやかな場面 (岩崎宏美)🅰→4/3

B8 与作 (北島三郎)🅰→4/3

 

演奏: クラウン・オーケストラ

編曲: 神山純Ⓐ、井上忠也Ⓑ、久富ひろむⒸ

定価: 1,800円

 

4月3日のエントリで『絶体絶命・ヤマトより愛をこめて』を取り上げた際、クラウンの歌無歌謡レコード、特に75年以降のリリースがいかに厄介かにちょっとだけ触れましたが、その理由を説明する機会が早くもやってまいりました。

これは『絶体絶命~』に約3ヶ月先立って発売された盤。クラウンはずっと歌無歌謡アルバムの中軸に2枚組を置いていたが、78年には久々に1枚もののリリースにも手をつけており、そんな中の1枚がこれ。何せ当時のクラウンが歌無歌謡を「生もの」として位置付けていたせいか、ほぼ1ヶ月ごとに内容をリニューアルして新譜をリリースし、旬を過ぎたアルバムは早々とカタログから削除しており、そのため完全なるカタログを追うのは至難の技であるが、確かなのは収録曲が重なっている場合、同じ録音をリサイクルしていたことである(この風習はそれこそ70年代前半に既に始まっていたのである)。なので、安いからとついつい手を出しても、完全なる満足感に襲われるということはまずない。録音が同じでも盤によって音質が違うとか、偏執狂的に検証しているマニアがいるとは思えないし…

この『ダーリング』にしても、後に出た『絶体絶命・ヤマトより愛をこめて』にご覧の通り、16曲中12曲が流用されており(🅰マークは、無印で初回紹介されたアルバムのヴァージョンと同一を示す)、恐らくその他のアルバムにも転用された曲があるはずである。逆に、このアルバムが初出ではない音源も確実にあると思われ、この辺の真相は恐らく当時の関係者でさえ正確に把握しているとは思えない(何せ40年以上時間が経過してますからね…)。転用されていない4曲のうち半分が今日誕生日の畑中葉子さん絡みということで、こちらを後に紹介ということになりましたが。

タイトル曲「ダーリング」はオリジナル発売が78年5月21日で、翌月にはこのアルバムが早々と出ている。よって、電光石火の如き早技でアレンジ・レコーディングが行われたのは確実。故に、イントロ全体を間奏とエンディングにも転用した慌ただしいアレンジになったと推測される。ジュリーの当時の新曲に対するとてつもない期待度が、これだけでも解るというものだ。20日早くリリースされた「プレイバックPart2」は、そこまで危なっかしいアレンジにはなっていないのだが、シンセのシーケンスに近いものを必死に弾いているクラヴィネットの健闘ぶりを讃えたい。

「サムライ」はオリジナルが長い曲故、1コーラス端折っているが、それはやはり仕方ないところ(そこを強行突破したのがクリスタル・サウンズであるが)。ギターアンプのマイキングが無茶気味で、ミックスに悪影響を及ぼしているのが気になる。平尾・畑中コンビの2曲は、楽器の使い分けにデュエット感を活かしたアレンジ。しかし橋本淳さん、エーゲ海の旅」の出だしの歌詞は挑発してるとしか思えませんよ…そして、リピート使用されなかった「愛なき世代」が本盤の中で最も聴きものなのが皮肉。オリジナルは最高順位74位と地味なヒットに終わった、シンシアの最後から3番目のシングル(復帰後は除く)だが、宗内が「ミレニウムベース」と呼ぶ躍動感の高いベースとドラムに引っ張られ、女性コーラスが爽快感を盛り上げる好ヴァージョン。鍵盤ハーモニカや、時折妙なアクセントを入れるギターなど、全てが光り輝く末期クラウン歌無歌謡屈指の名演だ。