黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

矢沢永吉さんの誕生日は9月14日

ポリドール MR-1525

歌謡ヒット最前線 LOVE(抱きしめたい)・絶体絶命

発売: 1978年10月

ジャケット

A1 LOVE [抱きしめたい] (沢田研二) 🅲

A2 透明人間 (ピンク・レディー) 🅲

A3 おもいで河 (中島みゆき) 🅱

A4 銃爪 (世良公則&ツイスト) 🅱

A5 グッド・ラック (野口五郎) 🅱

A6 窓ガラス (研ナオコ)

A7 君のひとみは10000ボルト (堀内孝雄) 🅳

A8 日暮れ坂 (渡哲也) 🅱

B1 絶体絶命 (山口百恵) 🅱

B2 20才になれば (桜田淳子) 🅱

B3 モンテカルロで乾杯 (庄野真代) 🅱

B4 ブルー (渡辺真知子) 🅱

B5 プレイバックPart 2 (山口百恵) 🅵

B6 東京ららばい (中原理恵) 🅳

B7 時間よ止まれ (矢沢永吉) 🅴

B8 ダーリング (沢田研二) 🅴

 

演奏: ポリドール・オーケストラ

編曲: 伊部晴美

定価: 1,500円

 

78年当時のトレンディな喫茶店は、丘サーファーと永ちゃんタオル愛用ピープルの溜まり場だった。永ちゃんも歌無歌謡で讃えるには勇気が要る人だなぁ。そう簡単に許可するとは思えないし、そもそもキャロル時代の曲の歌無盤さえクラウンの「夏の終わり」しかないと思われる…たまに発見して何かを感じれば貴重な体験と思うけど。78年の大ヒット曲が集合したこの盤では、「時間よ止まれ」が実に5番目のヴァージョンとなるけど、かなり軽い解釈とはいえ、普通に歌無歌謡の場に入れられてもなおどこか謎めいていて、特異な雰囲気を失わない。その曲以下、初期「ザ・ベストテン」の熱気が伝わってくる選曲。

ただ、アレンジ的にはちょっと前までのポリドールの雑種さが期待できない。普通にショッピングセンターのBGM的な感触。伊部さんが一人で健闘してるのはさすが職人だなと思えるけれど(但し、本人がギターを弾いている部分は皆無もしくはほとんどなし)。一部長い曲はちょっと端折ってTVサイズになっているし。ソニー盤が残念な出来だった「銃爪」は、ロック度的にはそれとどっこいどっこいだが、演っているだけでも救い(この曲のクラウン盤がないのは今もって歌無歌謡七不思議の一つ。「ザ・ベストテン」最長1位記録所持曲なのに…)。「グッド・ラック」は本家メーカーなのに相対的に軽いし。「君のひとみは10000ボルト」「20才になれば」も、クラウン盤の圧勝。駆け出しのTHE ALFEEが後ろでギターを弾いている光景を思い起こさせる「窓ガラス」「ブルー」で聴けるフルートも、若干色っぽく迫っているとはいえ、硬すぎという印象。「ダーリング」はやはり御本家だけあり、しっかりこなしている。左側に入っている木琴がいいアクセント。クラウン盤の完敗は確定だ。ただ、これまで端折る必要はなかったと思う…

茶店音楽としての歌無歌謡はもう終わったんだなというのを実感してしまう1枚なのは確か。インベーダーのテーブル筐体とフュージョンの風が、場末の色を完璧に褪せさせた。