黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は大橋純子さんの誕生日なので

キャニオン C18R-0009 

愛のエレクトーン 江川マスミ

発売: 1979年5月

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ジャケット



A1 夢一夜 (南こうせつ)

A2 季節の中で (松山千春)

A3 精霊流し (グレープ)

A4 「いちご白書」をもう一度 (バンバン) 🅱

A5 神田川 (かぐや姫) 🅱

A6少しは私に愛を下さい (小椋佳)

A7 わかって下さい (因幡晃)

A8 帰らざる日々 (アリス)

B1 たそがれマイ・ラブ (大橋純子) 🅱

B2 思い出は美しすぎて (八神純子)

B3 どうぞこのまま (丸山圭子)

B4 心もよう (井上陽水) 🅱

B5 なごり雪 (イルカ)

B6 あの日にかえりたい (荒井由実) 🅱

B7 シクラメンのかほり (布施明) 🅱

B8 さらば青春 (小椋佳)

 

演奏: 江川マスミ

編曲: 付属品欠落につき調査不能

定価: 1,800円

 

歌無歌謡のレコードを集め始める前から、エレクトーンのレコードは大好物だった。小学生~中学生時代、学校の音楽室にあったその楽器を触ることは恐れ多くてできず、クラスメイトの家にアップライトピアノはあれど、電子オルガンがある家はほぼ皆無。そんな身で、ヤマハ音楽教室の「ジュニアオリジナルコンサート」の生徒さん達の作品が放送される「若き音楽家たちの世界」を聴いて歯ぎしりする思春期を過ごした反動で、今世紀に入ってからそういったレコードが手許に集まり始めるのである。もっとも、決め手になったのはネット友経由で聞かせていただいた、南ア出身の全盲少年ニコール・ヴィルジョアンが演奏する、大胆に解体・再構築されたビーチ・ボーイズ「グッド・ヴァイブレーション」の衝撃だったのだが(『第7回エレクトーン・コンクール 栄光のグランプリ・アルバム』の2枚組版に収録されている。同作は完全に骨抜きされた「ホールド・オン・アイム・カミン」も必聴)。

当ブログでも相当数紹介する予定の歌無歌謡、ないしイージーリスニング系のエレクトーンレコード(カテゴリーはヤマハ社以外への配慮も兼ね、「電子オルガン」で統一。その他の特殊キーボードは別途まとめ予定)には、そうした冒険性は皆無。とはいえ、それぞれに憎めない響きがあり、青春の甘酸っぱさを脳裏に甦らせてみせる。

70年代全般のフォーク~ニューミュージックの名曲を取り上げたこの『愛のエレクトーン』は、「女性が選ぶ女性のためのエレクトーン」と銘打たれ、楽器演奏の乙女の嗜みとしての側面を強調した1枚。たとえ神田川とか「帰らざる日々」とか、そうした主題に不釣り合いな曲が入ってようがだ。手許にある盤からは残念ながら欠落しているが、全曲の譜面が付けられており、淑女たちの実践精神を湧き立たせたはずである。演奏者の江川マスミさんは、60年代中期よりレコード活動を開始。女流奏者としては先駆者的存在。なにせ、斉藤英美さんの例もあるし、実際写真を拝見(ネット上で)するまで不覚にも性別を存じ上げませんでした(汗)。70年代末期らしく、音色にカラフルなバリエーションが出てきて、特に減衰音系が曲のリリカルさにマッチしている。手堅いリズムセクションのバッキング入り。続いて、もう少し上の年齢層を狙った『愛のエレクトーンII』も発売されているが、いつ紹介されるか、それはお楽しみということで。やはり、自分で実践してなんぼでもあります、「歌のない歌謡曲」は。

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『第7回エレクトーン・コンクール 栄光のグランプリ・アルバム』