黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は青江三奈さんの誕生日なので

コロムビア ALS-4504

ゴールデン・ヒット・メロディ決定盤 逢わずに愛して/ネオン街ブルース

発売: 1970年5月

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ジャケット



A1 逢わずに愛して (内山田洋とクール・ファイブ)

A2 女のブルース (藤圭子)

A3 あなたならどうする (いしだあゆみ)

A4 国際線待合室 (青江三奈)

A5 燃える手 (弘田三枝子)

A6 恋人 (森山良子) 🅱

A7 経験 (辺見マリ)

B1 ネオン街ブルース (真木七奈)

B2 恋ひとすじ (森進一)

B3 四つのお願い (ちあきなおみ)

B4 恋狂い (奥村チヨ)

B5 花のように (ベッツイ&クリス)

B6 北国の町 (鶴岡雅義と東京ロマンチカ)

B7 白い蝶のサンバ (森山加代子)

 

演奏: 柴田晴代 (スチール・ギター)/コロムビア・オーケストラ

編曲: 甲斐靖文

定価: 1,500円

 

大好物のスチール・ギター・ムード、本盤の主役・柴田晴代さんは珍しい女流奏者の上、現役バリバリ未だに最前線で活躍中。このアルバム発売の直前には自らのバンド、ハニー・ビーズでムードコーラスのシングル「愛にぬれたギター」と歌物のアルバム『さみしがり屋のあなたに』をリリース。このバンドが「サイケ・カッポレ」のザ・レンチャーズの中の人疑惑も一部にあるが、実際のところどうなのだろうか…のちに「スーパーJOCKEY」でピアニストとしてレギュラー出演したり、生田流の琴の師匠でもあるなど、実に多才な方だ。一人で歌無歌謡アルバム作ることさえできそう…そんな彼女が70年に残した歌無歌謡アルバム。ちなみにジャケットの女性は別人(汗)。96年と09年にそれぞれ出したリーダーアルバム(CD)にも一部の曲が流用されていて、そちらの方がむしろレア。

小気味よい演奏に艶のある、それでいて意外と骨太なスチールの音色が乗り、南国気分以上にさわやかな空気がもたらされる。「国際線待合室」「恋ひとすじ」などにはスタンダードなハワイアンモードが取り入れられ、曲に軽さを与えているし、逆にポップス度の高い「恋人」「白い蝶のサンバ」あたりには程よい粘着力が。最大の聴きものは惜しくも昨年、歌手・作詞者・作曲者を全て失った「燃える手」。改めて、曲の良さを思い知らされる快演だ。スチールの脇役として、フェミニン度を強調するようなフルートが効果的に響く瞬間も幾度かあり。

B1「ネオン街ブルース」宝塚歌劇団出身の異色新人・真木七奈のデビュー曲として猛プッシュされ、コロムビアは少なくとも3種類の歌無歌謡ヴァージョンをリリースして後押しするも奮わず、半年も経たないうちに彼女は別のレコード会社に移り、新たな芸名を与えられ再デビューというまさかの道を辿ることになるのだが、歌無歌謡界を探ると意外なドラマの素が隠れていたりして、その辺もたまりません。

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ハニー・ビーズとその後の真木七奈さんのシングル盤