黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1968年、今日の1位は「恋の季節」

コロムビア/山田書院 GES-3001 

ゴールデン歌謡アルバム スチール・ギター・ムード

発売: 1969年

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ジャケット



A1 ブルー・ライト・ヨコハマ (いしだあゆみ) 🅳

A2 恋の季節 (ピンキーとキラーズ) 🅱

A3 知りすぎたのね (ロス・インディオス) 🅳

A4 愛の奇跡 (ヒデとロザンナ) 🅲

A5 愛するってこわい (じゅん&ネネ)

A6 年上の女 (森進一) 🅴

B1 夕月 (黛ジュン) 🅴

B2 愛のさざなみ (島倉千代子) 🅱

B3 今は幸せかい (佐川満男) 🅳

B4 ゆうべの秘密 (小川知子) 🅳

B5 霧にむせぶ夜 (黒木憲) 🅱

B6 さよならのあとで (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)

演奏: テディー坂口とコロムビア・オーケストラ

編曲: 河村利夫、甲斐靖文

定価: 1,700円

 

全10枚リリースされた(はずの)コロムビア原盤、山田書院ディストリビュートによる「ゴールデン歌謡アルバム」の最初の1枚。とにかくこのシリーズものはなぜかジャンク市場に溢れすぎていて、やたら騒がれそうな「グループ・サウンズ」編でさえ4桁出したら大損というほどありふれているのだけど、それだけライト層に対して魅力的だったということか。これらの音源が、コロムビアから正規にディストリビュートされたものからの流用かどうかさえ完璧には解明できていなく、いずれにせよ当時の「音楽のある生活」の凡庸ぶりを物語る。しかし全巻予約特価1300円って、決してお手頃価格とは思えないのですが…

そんな事情をまるで把握できていない頃(21世紀初頭)、適当に買ったこのアルバムは、うちの棚に最も長い間ある歌無歌謡のLP。何に魅せられて買おうと思ったかは覚えていないけど、当時既に大正琴と尺八をそれぞれフィーチャーした4曲入りの盤を持っていたし、ある程度関心はあったんでしょう。まぁ、買った場所が吉祥寺にあった好き者カルチャーの殿堂「東風」でしたし。

シリーズ第一弾に相応しい王道選曲にして、メイン・フィーチャーにスチール・ギターを持ち出してるのは鋭い。バックの演奏は淡々と牛歩する感じで、決してお洒落ではないけれど、そこがたまらない場末感のもとになっている。「愛の奇跡」の絶叫する部分に、さりげないトーンで色っぽいコード弾きをはめ込んでくるところなど、なかなか憎めないセンス。この崩し方が最も効果的に現れたのが、名曲「愛のさざなみ」。これは結構DJで使ったりしてました。この世界を追い求めようと思わぬまま10数年が過ぎて突如覚醒して、今に至るわけですが、このレコードとの出会いもまたいい「勉強」でしたよ。