黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は扇ひろ子さんの誕生日なので

コロムビア/山田書院 GES-3004 

ゴールデン歌謡アルバム ムード・イン・ブルース

発売: 1969年

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ジャケット

A1 港町ブルース (森進一) 🅹

A2 追憶のブルース (舟木一夫)

A3 恍惚のブルース (青江三奈) 🅳

A4 みんな夢の中 (高田恭子) 🅵

A5 新宿ブルース (扇ひろ子) 🅳

A6 京都・神戸・銀座 (橋幸夫) 🅳

B1 夜明けのスキャット (由紀さおり) 🅻

B2 思案橋ブルース (高橋昭とコロ・ラティーノ) 🅲

B3 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅻

B4 盛り場ブルース (森進一) 🅲

B5 逢いたくて逢いたくて (園まり) 🅱

B6 君こそ我が命 (水原弘) 🅴

 

演奏: 松浦ヤスノブ (テナー・サックス: A)、稲垣次郎 (同: B)/コロムビア・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,700円

 

今日は…ブルース・ヴァレンタイン・デイ…というわけではないのですが、テーマに「ブルース」を掲げたアルバムを持ってきましたよ。全曲「◯◯ブルース」から構成されたアルバムも歌無歌謡界に何枚かあるのですが、さすがにそこまでは掘ってないし、これも山田書院盤ということで超コモン、どのジャンク箱にも常備されていたりする(そこからの解放を「黄昏みゅうぢっく」は決して推奨はしていません…念のためですが…)。でも、それなりに存在意義はありそうだし。チョコが巡ってこない孤独の紳士達の心を潤すもの、それはブルースなのだ。魂の音楽ではない、歌謡的な意味合いでのブルース。それをいかに軽量化するかに向き合ったのがこのアルバム。山田書院盤のサウンドを形容するのに「牛歩的」という言葉をよく使うけれど、ここでのサウンドはもろそれ、あくまでも原曲のニュアンスに沿っての牛歩だ。港町ブルースは主旋律にアコーディオンを配した分、むしろファンシーな色を感じさせるし、イントロも含め所々コードをお洒落な感じに改変して、日本以外の国の港にも寄り道したムードを醸し出している。アコーディオンも1曲の中で様々に表情を変え、なかなか侮れないプレイだ(中ちゃん見てる?)。「追憶のブルース」はこの盤の中ではレア選曲で手堅い感じの演奏だ。「恍惚のブルース」はもろ歌謡ブルースの真髄といった感じで、好夫っぽいギターが聴ける。この流れの中になぜか放り込まれた「みんな夢の中」。どこがブルースやという感じがするが、フィーチャーされた音がコルネットヴァイオリンというより、むしろ二胡っぽく、不思議なムードを演出する。この異国感もまた、ブルースなのかも。「新宿ブルース」は音数を少なくしてやさぐれ感がダイレクトに。「京都・神戸・銀座」は一転してお洒落な感じに戻る。

B面はさらに驚きの「夜明けのスキャットでスタート。テンポをかなり遅めて侘しい感じが倍増、そこにブルース色が。Bメロが「パーパーパーパーパパ、パー」という感じの演奏になっているのがより妙さを高めているが、その後のコード展開がダメ化の罠に嵌っているのが惜しい。2曲目以降は3連ブルース系を畳み掛ける予定調和的展開で、ヴァレンタイン・ブルーがさらに強調される。「逢いたくて逢いたくて」には二胡的音色が再び登場。クラビオーラ(初期のでかい鍵ハモ)の侘しい音もいい。やっぱこの曲を聴くと「ふしぎなくすり、のまされて…」と歌いたくなります(爆)。

この流れで「あなたのブルース」「真赤な夜のブルース」「蒸発のブルース」あたりを畳みかけられたらたまんないでしょう…でも、実際にあるんですよ、そんな盤が。しかもまさかの人のアレンジで。その答えは、約1ヶ月後に改めて。