黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その7: アーティストもの

Camel C-15

カーペンターズ・ヒットメロディー 

発売: 197?年

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ジャケット



A1 見つめあう恋

A2 ふたりの誓い

A3 イエスタデイ・ワンス・モア 🅱

A4 シング

A5 ア・ソング・フォー・ユー

A6 ヘルプ 🅱

A7 小さな愛の願い

A8 ジャンバラヤ 🅱

B1 オンリー・イエスタデイ

B2 トップ・オブ・ザ・ワールド

B3 恋よさようなら

B4 遥かなる影

B5 愛のプレリュード

B6 愛は夢の中に

B7 スーパースター

 

演奏: インペリアル・サウンド・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,800円

 

歌のない歌謡曲の「ちょっとハイソ版」として70年代前半盛り上がった、「ラブ・サウンズ」の象徴的存在となったカーペンターズ。当然、その曲をカバーすることはインスト界でもトレンドになりまくり、彼らに的を絞ったカバーアルバムもいくつも作られたが、そのうちの1枚。こんな機会に当然の如くしゃしゃり出てくるパチインストの帝王、エルム/Camelの仕事。ある意味嘘はつかないと当然期待。リチャードを筆頭に、ロジャニコ、キャロル・キングバート・バカラックレオン・ラッセルらによる名曲が、どのように料理されているのか?

やはり、サウンド的にはせこいけど、憎めないですよね。代表曲「イエスタデイ・ワンス・モア」にしても、エレガントなストリングス・アレンジで、せこいレーベルの芸当ではないなと思わせつつ、サビでIからVImに行くべきところをIIImに行ってしまい、それに本来のメロディが乗っているので、ズルッとくる。それゆえにある程度の愛着を感じてしまうんですよね。「オンリー・イエスタデイ」も、もたついたような演奏の上、必要以上に曲を長くしてしまっていて、一体何があったのやら。しかも変なところでフェイドアウトしてるし。

一方、ジャンバラヤではカーペンターズ版の間奏のフルートソロをめちゃ楽しそうに完全再現していて、演る側の心意気を制作側も楽しそうに試していたに違いない。そこに限って、高木綾子さんも真っ青のガチプレイ。ただ、惜しまれるのはこの曲を筆頭に、いくつかの曲で音質ががたっと落ちることである。まるでカセットコピーからマスタリングしたような。マスター音源の所有権自体怪しそうだし。それと、カーペンターズ版はスローなアレンジになっている「ヘルプ」が、既に何度かこの手の「パチビートルズインスト」盤に登場しているヴァージョンを流用しているので余計おかしい。落ち度はあれど、多くの曲でカレンのさわやかな歌声を模倣する如くフィーチャーされるフルートや、「ソング・フォー・ユー」であまりにも曖昧なリバーブをかまされ、メロトロン疑惑さえ浴びせたくなるストリングスなどが織りなす心躍る調べで、改めて彼らの偉大さを認識するのもいいものです。あと1枚、メジャーから出たカーペンターズ・カバー盤を紹介する予定なので、お楽しみに。本家キングが大胆不敵にも送り出した「カー・ペインターズ」名義のアルバムではありませんが(爆)。