黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1975年、今日の1位は「シクラメンのかほり」

RCA JRS-9521

ヒット&ヒット ギター

発売: 1976年

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ジャケット



A1 ファンタジー (岩崎宏美)

A2 泣かないわ (桜田淳子)

A3 白い約束 (山口百恵)

A4 弟よ (内藤やす子)

A5 あの日にかえりたい (荒井由実) 🅳

A6 木綿のハンカチーフ (太田裕美) 🅱

B1君よ抱かれて熱くなれ (西城秀樹)

B2 女友達 (野口五郎)

B3 立ちどまるなふりむくな (沢田研二)

B4 シクラメンのかほり (布施明) 🅵

B5 めまい (小椋佳) 🅱

B6 俺たちの旅 (中村雅俊) 🅲

 

演奏/編曲: 横内章次《ミスター・ギター》

オーケストラ表記無し

定価: 1,800円

 

歌無歌謡ギター界の「もう一人の帝王」と言えば、やはりこの人、横内章次氏。ジャズ界出身で小粋なフレージングを知り尽くし、全パートのアレンジに個性を発揮。早くから多重録音の可能性を信じ、全ギターパートを一人で弾きこなすという革新的精神で各社に録音を残しまくった。ポップス全体がカラフルに揺れ出した76年前半のヒット曲を集めた本作でも、横内印全開。大まかに4つのパートに分かれ、いずれでも聴かせどころを心得ている。ヤングポップスに徹した冒頭3曲での軽快なこなしは、まさに挨拶代わりといった趣き。シャープなリズムアレンジが光る。A面後半はアンニュイにまとまっているが、木綿のハンカチーフだけはそれやっちゃいかんだろという解釈…オリジナルに忠実なのはいいんだけれど、余計な色が加わると曲の主張する部分が薄れるという気がするし、2コーラス半にまとめたのもよくない。原曲の起承転結度が生きたインスト解釈は、簡単なようで難しい。それをクリアしたヴァージョンもあるにはあるが…

B面は前半が男の哀愁で軽めにまとまり、後半は小椋佳作品をリリカルに畳み掛ける。この10日間だけでシクラメンのかほりが4ヴァージョン登場したが、その中ではここできける小粋な味がプラスされたヴァージョンの圧勝という感じだ。