黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は南こうせつさんの誕生日なので

クラウン GW-5289

闇み夜の国から ドラム・ドラム・ドラム

発売: 1974年4月

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ジャケット

A1 闇夜の国から (井上陽水)Ⓐ 🅱→11/28

A2 ふたりの急行列車 (チェリッシュ)Ⓑ 🅲

A3 銀の指環 (チューリップ)Ⓑ 🅰→11/28

A4 恋は邪魔もの (沢田研二)Ⓑ 🅳→11/28

A5 パピヨン (ジェリー・ゴールドスミス)Ⓑ

A6 薔薇の鎖 (西城秀樹)Ⓑ 🅵

A7 赤ちょうちん (かぐや姫) 🅳

A8 ジャンバラヤ (カーペンターズ)Ⓐ 🅲→6/1

B1 バラのかげり (南沙織)Ⓐ 🅲→11/28

B2 花とみつばち (郷ひろみ)Ⓑ 🅲→11/28

B3 愛しのヘレン (ポール・マッカートニー&ウイングス)Ⓑ

B4 星に願いを (アグネス・チャン)Ⓑ 🅴→1/2

B5 姫鏡台 (ガロ)Ⓑ 🅲→11/28

B6 学園天国 (フィンガー5)Ⓑ 🅲→11/28

B7 金曜日の朝 (吉田拓郎)Ⓑ 🅱→1/28

B8 カイバード (ニール・ダイヤモンド)Ⓐ

 

演奏: ありたしんたろうとニュービート

編曲: さいとう・とおるⒶ、青木望

定価: 1,800円

 

「闇み夜の国から」と書かれると、思わず「椿き家のとうふ」を思い出してしまう…(汗)。というわけで、1月29日記した事情を考え合わせると、ありたしんたろうとニュービート名義で出された最後のリリースがこちら、という線が濃厚。この辺に関しては74年に出されたクラウンの歌無歌謡盤を全部解剖しない限り、結論が出しづらいですが、何せカタログに残る期間が短いこともあり、非常に頭が折れる。前年はサウンド的な改革が進み、「3大スターの共演盤」も含めて第二次黄金期到来かと思わせる活躍ぶりだったが、この盤ではよりあっさり気味のサウンドに方向転換。もしかしたらここで「中の人」が交代したのではという可能性も考えられるが、従来のタッチが生きた演奏もあるし、とにかく過渡期だったのは確か。青木望氏がアレンジを手掛けた曲には前年の名残が残っているが、シンセを控えめに使った曲も増えて、自由奔放さより洗練された感覚の方が前に出ている。対してタイトル曲は軽量のこなしで、斬新な音色使いも目立つけれど驚きの度合いは少ない。パピヨンのように、ラブ・サウンド路線を慎重に支える曲の導入が耳を引く。赤ちょうちんは派手さを抑えつつロック度を高めた演奏だ。ジャンバラヤはやはり、ドラムよりフルートのがんばりが目立つ。B面ではやはり「愛しのヘレン」の選曲に胸熱。ハードロック色を控えめにして、おとなしい演奏だなと油断していると、突然シンセが唸りをあげる。この瞬間に全神経を傾けたんだなと思わせるびっくりアレンジだ。どポップな音色使いに安心していると、Bメロで突然「バンド・オン・ザ・ラン」みたいなシンセが現れてハッとさせる「星に願いを」も、この曲順での収録には納得。

この曲を始め、4曲が6月発売の2枚組『恋のアメリカン・フットボール/もう一度』に流用されたが、その後のニュービート名義の音源周りがどうやら曖昧なのだ。こうなったら、見つけたものをこつこつ検証していくしか術がないが、9月出た『秋日和・ちっぽけな感傷』では少なくとも1曲、岡山かずよしとセブンビート名義と同一の音源が見受けられた(「君は特別」)。岡山氏といえば、東宝盤のノリノリな「学園天国」が思い浮かぶが、この盤で聴けるこの曲の演奏とは明らかにカラーが違う…よって、この盤は100%、従来の中の人の演奏であるとしていいでしょう。