黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は中村泰士さんの誕生日なので

ミノルフォン KC-45

さよならをもう一度・長崎から船に乗って 最新歌謡ヒット速報

発売: 1971年9月

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ジャケット



A1 さよならをもう一度 (尾崎紀世彦)

A2 わたしの城下町 (小柳ルミ子) 🅱

A3 男のこころ (由紀さおり)

A4 雨の日のブルース (渚ゆう子)

A5 砂漠のような東京で (いしだあゆみ) 🅱

A6 あなたとわたしの街だから (大木英夫・二宮善子)

A7 川の流れのように (奥村チヨ)

B1 長崎から船に乗って (五木ひろし) 🅱

B2 愛の泉 (トワ・エ・モア)

B3 いつもなら (朝丘雪路)

B4 熱い涙 (にしきのあきら)

B5 ふたりだけの旅 (はしだのりひことクライマックス)

B6 天使になれない (和田アキ子)

B7 よこはま・たそがれ (五木ひろし) 🅲

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ

編曲: 福井利雄

定価: 1,500円

 

惜しくも昨年亡くなったもう一人の歌謡界の大偉人・中村泰士氏を偲んで、彼の作品2曲が演奏されているこのアルバムを取り上げたいと思います。筒美京平作品も3曲ありますし。しみじみ聴きたくなりますね。

ミノルフォンの歌無歌謡の代名詞となったブルーナイト・オールスターズ、その名義でリリースされた初のアルバム。この名義がまさか79年まで使われるとは、出した方は予期しなかったと思いますが、ラテン・タッチでヒット曲を料理するというコンセプトは、あくまでも実験的な考えだったんでしょう。

のちに東宝のミラクル・サウンズで敏腕を振るう福井利雄氏がアレンジを手がけ、ラテン的要素は実の話、カラフルに脇を固めるパーカッション程度に抑え、従来のムード・ミュージックの主役たるチェンバロやフルートを小粋に配した付き合いやすい音作り。歌謡界全体がエキサイティングに揺れるまさに前夜の曲集だけあり、極度に変な方向に行ってないのは成功。派手すぎない音作りなのに、よく聴くとベースが相当暴れていたり。さりげなく腰に来るサウンド。60年代のミノルフォン歌謡を思い起こさせる女性コーラスが、随所に雰囲気作りに加担する。中村氏の傑作の一つ「砂漠のような東京で」は笛に頼らず、この女性コーラスの効果が退廃的なムードに拍車をかけるが、チェンバロのおかげでアーバンな感覚も。曲調的によく似ている「あなたとわたしの街だから」を次に配したのは、ミノルフォンの同曲に込めた意地の現れか?惜しくもこの曲は最高61位と、あまり奮わず。

もう1曲の中村作品川の流れのようには、当然「あの曲」ではない。これも最高41位止まりだったので、あまり知名度はないけれど。よく聴くと、1箇所フルートが意図してない音を出している箇所があって、やっぱ性急な仕事だったんだなと推測できる(何せこの曲に関しては、発売翌月にこのレコードが出ているので)。「愛の泉」はラテン・タッチを最も派手に生かした演奏で、ベースの音量がもう少し大きければ、より凄いことになってたかも。