黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は前川清さんの誕生日なので

ミノルフォン KC-59

‘73最新ヒット歌謡 はる

発売: 1973年2月

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ジャケット



A1 あなたの灯 (五木ひろし)Ⓐ 🅲

A2 漁火恋唄 (小柳ルミ子)Ⓐ 🅱

A3 そして神戸 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱

A4 中学三年生 (森昌子)Ⓑ 🅱

A5 放浪船 (森進一)Ⓐ 🅲

A6 ひなげしの花 (アグネス・チャン)Ⓑ

A7 あなたが帰る時 (三善英史) Ⓐ

B1 ふたりの日曜日 (天地真理)Ⓐ

B2 悲しみの町 (藤圭子)Ⓐ

B3 雨のヨコハマ (欧陽菲菲)Ⓑ

B4 オロロン慕情 (小林旭)Ⓑ

B5 秘密 (鶴岡雅義と東京ロマンチカ)Ⓑ

B6 早春の港 (南沙織)Ⓑ

B7 じんじんさせて (山本リンダ)Ⓑ 🅱

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ

編曲: 竜崎孝路Ⓐ、土持城夫Ⓑ

備考: RM方式4チャンネル・レコード

定価: 1,500円

 

ミノルフォン歌無歌謡過渡期の名物シリーズ「四季」。ジャケットのディレクションは統一感なかったけど、この盤のジャケはミノルフォンの歌無盤の中でも最高傑作ではないかと個人的に思う。写真なのか絵なのかはっきりしないところもあるけれど、どっちだとしても技ものだし。「協力: ディスク・チャート」とあるのは、山下達郎ファンの間で神格化されている、四谷にあった喫茶店のことだろうか。だとしたら、写真の線が濃厚。自由が丘にあった伝説の「レノンの店」を舞台にした白川るみ子「日暮れのまちぼうけ」のジャケットといい、70年代喫茶店文化と歌謡曲の接点を探ってみると結構奥深い。

というわけで内容の方は、春までもう少しという感じの73年初頭の最新曲をずらり。昨日紹介の『漁火恋唄』と2曲重なっているが、一部の歌手の曲は早々と次の新曲へと進化しているし、当時の歌謡界の慌ただしさが伝わってくる。

トップの「あなたの灯」はオリジナルと同じく竜崎孝路氏が手掛けているが、オリジナルのオケを流用することはせず、歌無歌謡ならではの色を加えての新解釈。特に女性コーラスの配し方に意地を感じるし、4チャンネルならではの音場形成もここだからできたこと。自社曲であろうと、いや自社曲だからこその意地の見せ所で、違うアレンジャーを起用した「中学三年生」にも同じことが言える。フルートの響きがフレッシュで、恥じらい気味に卒業生を見送る感じがよく出ている。Bメロで1オクターブ下げているところにも、そんなニュアンスが。高い音出すとなると、嫌でも力んでしまうからね。「ひなげしの花」は優しいオーボエのリードに、恥ずかしそうに鍵ハモが寄り添う。はて、リコーダーはどこで出てくるかなと思ってたら、なんと「オロロン慕情」に登場。この時期のアキラの曲がクラウン以外で取り上げられるのは稀だけど、このジェントルなアレンジには意表突かれた。意外にも本ブログ初登場の「早春の港」は、間奏のフルートに着目して聴いてしまうのだけど、ここではしっかりこなしてます。この着眼点のオチは、いつかじっくり。たじろぎますよ、きっと。

レコード会社云々と言えば、「古巣のリベンジ」、即ち以前所属していた会社でくすぶってた歌手が移籍した途端大ブレイク、その曲を古巣が歌無盤で取り上げどのような仕打ちを下すかというのに関心があって、本盤では「じんじんさせて」がそれにあたる。ここでは最早佳境に入った感じで普通にグルーヴィに演っているのだけど、やたら悪意丸出しのアレンジもたまにあったりするので、これは結構面白い研究課題ですよ。ブルーナイト・オールスターズが鮮やかに脱皮を見せ始めるのは、もう少し先の話…