黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はボブ・ディランの誕生日ですが…

マキシム MM-1512

最新ヒット歌謡20 若葉のささやき・春のおとずれ

発売: 1973年

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ジャケット



A1 若葉のささやき (天地真理) 🅱

A2 夕顔の雨 (森昌子) 🅱

A3 少年記 (三善英史)

A4 森を駆ける恋人たち (麻丘めぐみ) 🅳

A5 危険なふたり (沢田研二) 🅲

A6 恋の十字路 (欧陽菲菲)

A7 オレンジの雨 (野口五郎)

A8 傷つく世代 (南沙織) 🅲

A9 妖精の詩 (アグネス・チャン)

A10 霧の出船 (五木ひろし) 🅱

B1 春のおとずれ (小柳ルミ子)

B2 学生街の喫茶店 (ガロ)

B3 男泣き (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱

B4 狙いうち (山本リンダ)

B5 私は歩いている (和田アキ子)

B6 愛への出発 (郷ひろみ)

B7 劇場 (ちあきなおみ)

B8 女のねがい (宮史郎とぴんからトリオ) 🅱

B9 怨み節 (梶芽衣子)

B10 夜の走り雨 (森進一) 🅱

 

演奏: ジョージ高野 (テナー・サックス)、野口武義 (ギター)、竜崎孝路 (ハモンド・オルガン)/ニュー・サウンズ・オーケストラ

編曲: 竜崎孝路、野口武義

定価: 1,500円

 

ディランの誕生日に取り上げる「歌無歌謡アルバム」?当然、アレが収録されている盤に限られますよ(汗)。もっとフォーク色の濃いものを選んでもよかったのだけど、いろいろな思惑が絡み、今日はこれにさせていただきます。

66年設立され、歌謡曲マニアの間ではカルトなレーベルとして未だ重宝されているローヤル・レコード。72年に看板歌手だった椿まみの自死という衝撃的な事件があり、それと前後してレーベルのポリシーに揺らぎがあった。メインとなるローヤル・レーベルを廃止し、新たなレーベルとして「マキシム」を設置。一時期、小林幸子が所属したりもしていたが、派手なヒットに恵まれず、人知れず活動を終結。どうやら原盤権だけは何らかの形で生きていて、一部の駅売CDに音源が転用されているらしい。また、傘下の童謡専門レーベル「みみちゃんレコード」には、某80年代伝説のアイドルが少女合唱団の一員として録音を残している。本人のWikipediaにもその事は記されていず、最早都市伝説に近い話なのだが…

とにかく、ガチな歌謡レーベルだった故、ローヤル時代から歌のない歌謡曲にも積極的に取り組んでおり、マキシムの初期にもそそるリリースが何枚か残されている(第一回発売『ニューロックとストリングスの競演』からして、たまらなく薬指が…)。「GOLDEN HIT SERIES」の1枚となる今作は、ザ・カーナビーツアイ高野の実父で、息子の在籍していたフィリップスにも「ジョージ・ヤング」名義で多数の録音を残していた高野譲治氏のサックスをフィーチャー。73年の最新ヒット曲を熱く聴かせる。一部の曲で詰めが甘い部分が露呈してもいるけど(メイン以外の楽器が微妙に入るタイミングを間違えるとか、その程度ではあるが)、雰囲気作りとしてはいい線行っている。「傷つく世代」はあまりにも走り過ぎた演奏故、かえって微笑ましいし、「妖精の詩」のとってつけたようなリコーダーには、もっと目立ちたいのにという意地が読み取れる。もたつき気味の狙いうちも、このレーベルカラーが濃厚な出来。今日の課題「学生街の喫茶店は比較的忠実なアレンジ故、逆説的に滑稽な味が出ている。エンディングで高野氏の意地が炸裂するが、フェイドアウトするつもりでし損ねたのでしょうか。色々と妙な解釈が今後出てくるので、この曲に関しては語り甲斐がありそうですよ。