黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

まったり底無し地獄への夜汽車の旅

マキシム MM-1508

最新ヒット歌謡18 夜汽車

発売: 1972年

ジャケット

A1 虹をわたって (天地真理) 🅽

A2 どうにもとまらない (山本リンダ) 🅲→21/6/12

A3 夜汽車の女 (五木ひろし) 🅻

A4 素足の世代 (青い三角定規) 🅰→21/6/12

A5 あなただけでいい (沢田研二) 🅺

A6 陽はまた昇る (伊東ゆかり) 🅱→21/6/12

A7 めぐり逢う青春 (野口五郎) 🅵

A8 さようならの紅いバラ (ペドロ&カプリシャス) 🅱→21/6/12

A9 哀愁のページ (南沙織) 🅾

B1 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🆃

B2 幸福泥棒 (井上順) 🅰→21/6/12

B3 サルビアの花 (もとまろ) 🅱→21/6/12

B4 旅路のはてに (森進一) 🅷

B5 鉄橋をわたると涙がはじまる (石橋正次) 🅱→21/6/12

B6 こころの炎燃やしただけで (尾崎紀世彦) 🅵

B7 恋唄 (内山田洋とクールファイブ) 🅲→21/6/12

B8 別れの旅 (藤圭子) 🅰→21/6/12

B9 夜汽車 (欧陽菲菲) 🆀

 

演奏: エマノンストリングス楽団

編曲: ピーター・ギブス(21/6/12初出の曲)、ケイ・直岡(それ以外…個別クレジットはないが、恐らくそうと思われる)

定価: 1,500円

 

ローヤル/マキシムの盤となると、全く違うジャケットの盤でも既視感に悩まされたり、逆に既に持っている盤をうっかりして再度買ったり(汗)と、想定外の副作用に悩まされることがありありですが、この盤にしたって、半数の曲が一つ前の番号で出た名盤「幸福泥棒」からのリピート収録だし…それを解っていても買うんですよね。特に名演「素足の世代」に顕著なピーター・ギブス・サウンドが、新しく収録された9曲にも引き継がれているかもと言う期待感もあるし。その9曲の内4曲は、昨年12月ここで展開した最多ヴァージョン曲カウントダウン上位40曲に入っていたので、比較も容易にできるのだが、オープニングの「虹をわたって」からちょい違うな感が充満している。うきうき感がいまいち欠けているのだよね。松浦ヤスノブのテナーといい、バックのストリングスといい、妙に守りに入っているような気がするし、ピーター・ギブスならここはこうするだろうとか妄想してしまうのだ。例えばありたしんたろう盤のような意表の突き方とかが愛しくなってしまう。「夜汽車の女」も完全に毒抜きした印象。こないだこの曲を初めてカラオケで歌ったけど、一言で言えば鬼でしたね(汗)。歌無盤でも、鬼を倒そうと言うくらい気迫が感じられないと、聴く気がしないのだ。それぞれの音が強烈に自己主張している割に、噛み合った感じがしないし、エンディングも手抜きしてるし…その後、「素足の世代」が来るから、余計ピーター・ギブス万歳と叫びたくなるのだ。「あなただけでいい」も、衝撃のテイチク盤を聴いた後だと全然だめ。松浦氏がそちらでプレイしているのとカラーが違う演奏なので、ここでのソロはジョージ高野氏によるものだろう。ファズギターも全体に溶け込んでいない響きだし。「哀愁のページ」はエレガント色が出ていて許せるのだが、決定的ダメダメヴァージョンがあるからしょうがないか(昨年12月14日参照)。ただ、ミックスのバランスがあまりよくない。こんな感じで、前作からのリピート曲とそれ以外の差に気を揉まれながら進んでいく。最後の「夜汽車」の歯切れの悪さが、この不安定な気分を総括してくれるようだけど、やっぱり「素足の世代」のこのヴァージョンが入ってる盤は、何枚持ってようが平気ですね。ポリドール盤も入れて3枚です現在のところ。