黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は黛ジュンさんの誕生日なので

東芝 TP-7385

花と涙

発売: 1970年

f:id:knowledgetheporcupine:20210525052832j:plain

ジャケット+盤



A1 花と涙 (森進一)

A2 恋泥棒 (奥村チヨ)

A3 土曜の夜何かが起きる (黛ジュン)

A4 あなたの心に (中山千夏)

A5 人形の家 (弘田三枝子)

A6 あなたと生きる (小川知子)

A7 いいじゃないの幸せならば (佐良直美)

B1 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子)

B2 まごころ (森山良子)

B3 昭和ブルース (ブルーベル・シンガーズ)

B4 涙をなめてごらん (黒木憲)

B5 ドリフのズンドコ節 (ザ・ドリフターズ)

B6 夜と朝のあいだに (ピーター)

B7 雨に濡れた慕情 (ちあきなおみ)

 

演奏: ゴールデン・サウンズ

編曲: 荒木圭男

定価: 1,500円

 

きわどいジャケでムーディサウンド路線を牽引しまくるゴールデン・サウンズ、70年代のっけに放つ一発は60年代末尾を飾ったヒット曲集。決してヒップな方向に走らず、いつも通り手堅く聴かせる。世相が反映されまくったライナーから、当時の雰囲気を窺い知れるのは非常にありがたい。「同じレコードを3枚もお買い上げになった」お客さんの話まで。このヤバいジャケット(恐らく前々作『不思議な太陽』あたりの話だろうか)についつい「積み欲」を刺激された人が、昭和40年代既にいたって事実にびっくりですね。

ヒップな方向には走ってないものの、前作前々作とタイトル曲を勝ち取った黛ジュンの新曲「土曜の夜何かが起きる」は案の定、それっぽい解釈を得ている。歌無歌謡界に残されたこの曲のヴァージョンはどれをとってもダメさを感じることはなく、それだけ曲そのものがとんがってるということか。ぐいぐい突き進んでくるダンスフロア向きの音だ。他の曲はやはり、69年らしい内省的でダークな雰囲気を漂わせたものが中心で、サウンドの方も派手さを抑え適度にムーディ。特定の性に囚われない不思議な感覚をたたえた2曲をラストに持ってきて、来るべき70年代に備えたのではなかろうか。「雨に濡れた慕情」でのフルートの吐息が、度を超えて悩ましい。