黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は筒美京平さんの誕生日なので

アトランティック L-6048A 

華麗なるドラム・ベストヒット20 恋の追跡/瀬戸の花嫁

発売: 1972年4月

f:id:knowledgetheporcupine:20210527050204j:plain

ジャケット



A1 恋の追跡 (欧陽菲菲) 🅳

A2 ふたりは若かった (尾崎紀世彦) 🅳

A3 お別れしましょう (朝丘雪路) 🅱

A4 新しい冒険 (フォーリーブス)

A5 あの鐘を鳴らすのはあなた (和田アキ子) 🅱

A6 フレンズ (平山三紀)

A7 ハチのムサシは死んだのさ (平田隆夫とセルスターズ)

A8 さすらいの天使 (いしだあゆみ)

A9 ちいさな恋 (天地真理)

A10 かもめ町みなと町 (五木ひろし) 🅱

B1 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子) 🅴

B2 許されない愛 (沢田研二) 🅱

B3 今日からひとり (渚ゆう子) 🅳

B4 北国行きで (朱里エイコ)

B5 友達よ泣くんじゃない (森田健作)

B6 雨のエアポート (欧陽菲菲) 🅱

B7 涙 (井上順)

B8 さようならの紅いバラ (ペドロ&カプリシャス)

B9 ともだち (南沙織)

B10 めぐり逢い (渚ゆう子)

 

演奏: 市原明彦 (ドラムス)/ワーナー・ビートニックス

編曲: 原田良一、穂口雄右(A7、A9、B6、B7、B9)

定価: 1,800円

 

日本の戦後大衆音楽の象徴にして、「歌のない歌謡曲」に欠かせない存在である筒美京平先生を称える時が遂にやってまいりました。何しろ、当ブログの右側でチェックできるカテゴリーに「筒美京平」を加えようと思いはしたものの、昨日までに語った歌無歌謡アルバム49枚中、筒美作品が入ってないのは16枚のみ(火曜日の1枚『ラヴ・サウンド』に「にがい涙」が入っているので、収録作品は34枚ということになる)!当然今後もこの位のペースで増えるのが確実。余程演歌かフォークに特化してない限り、筒美作品が収録されていない方がおかしいという位、驚異的なヒット率を誇っているのだ。出たばかりの新曲さえ、ヒットポテンシャルを見抜かれて選ばれるケースが多いわけだから、まさに制作陣にも信頼が厚かったというわけ。

それで、どのアルバムを選ぶかとなると、すっきり気分にならない。編曲・演奏者として関わったアルバムがいくつもあるが、それらは既に別格的扱いを受けていて容易に手を伸ばせないし、じゃ単純にヒットメイカーぶりを反映したアルバムを持ち出すしかないなということで、これを選ばせていただきました。全20曲中半数の10曲が筒美京平作品。しかも殆ど全て大ヒット曲だし、いずれも生半可な解釈をされていない。何せワーナー・ビートニックスですから。ドラムシリーズでは通算3作目にあたるアルバム。

早々と炸裂するドラムに導かれ爆走する「恋の追跡」、続く「ふたりは若かった」にも疾走感を加えて、他のヴァージョンと一味違う仕上がり。さらに「お別れしましょう」と、オープニングから派手に筒美作品3連発をかます。A面では「フレンズ」「さすらいの天使」で多少アダルトに傾きつつ攻めに攻めた演奏、「かもめ町みなと町」も隠れがちな洋楽的要素をおびき出し、これもまた筒美作品だったんだなという認識に導いてくれる。B面では隠れた名曲「今日からひとり」がメロウかつグルーヴィに手招き。「雨のエアポート」「ともだち」は共に穂口雄右アレンジで、ポップな面が強調されているものの感触は重厚。ラストもまたあまり語られることのない「めぐり逢い」で、半分筒美祭りに派手な幕を下ろす。

残る10曲の非筒美作品もそれぞれ気合が入った演奏で、中でもBメロを完全に端折って大胆なアレンジを試みた「ハチのムサシは死んだのさ」は異色。いずれにせよ、良曲が多かったな。そんな時代の空気が派手に伝わってくるアルバム。そして、やっぱり筒美京平は凄い。