黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は美空ひばりさんの誕生日なので

コロムビア KW-8099~100

軽音楽による昭和の流行歌 その五/高校三年生~北の宿から

発売: 1977年7月

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ジャケット



A1 高校三年生 (舟木一夫)Ⓐ

A2 出世街道 (畠山みどり)Ⓑ feat. 村岡実 (尺八)

A3 こんにちは赤ちゃん (梓みちよ)Ⓒ feat. 小島秀子 (電子オルガン)

A4 愛と死を見つめて (青山和子)Ⓓ feat. 大橋節夫とハニー・アイランダー

A5 アンコ椿は恋の花 (都はるみ)Ⓔ feat. 与田輝雄 (テナー・サックス)、鶴岡雅義 (レキント・ギター)

A6 おんなの宿 (大下八郎)Ⓕ feat. 松浦ヤスノブ (テナー・サックス)

B1 柔 (美空ひばり)

B2 涙の連絡船 (都はるみ)Ⓖ

B3 女の意地 (西田佐知子)Ⓕ feat. 松浦ヤスノブ (テナー・サックス) 

B4 兄弟仁義 (北島三郎)Ⓗ feat. 船村徹 (ギター) 🅱

B5 夢は夜ひらく (園まり)Ⓘ feat. 小島策朗 (クラビオリン) 🅱

B6 恍惚のブルース (青江三奈)Ⓙ feat. 松浦ヤスノブ (テナー・サックス) 🅱

C1 悲しい酒 (美空ひばり)Ⓔ feat. 古賀政男 (マンドリン)、山本丈晴 (ギター)

C2 夜霧よ今夜も有難う (石原裕次郎)Ⓔ feat. 松浦ヤスノブ (テナー・サックス)、木村好夫 (ギター) 🅱

C3 新宿ブルース (扇ひろ子)Ⓚ feat. 堀口博雄とストリングス・エマノン

C4 港町ブルース (森進一)Ⓙ feat. 松浦ヤスノブ (テナー・サックス) 🅲

C5 知床旅情 (加藤登紀子)Ⓕ feat. 松波常雄 (チェンバロ) 🅱

C6 わたしの城下町 (小柳ルミ子)Ⓙ feat. 稲垣次郎 (テナー・サックス) 🅳

D1 女のみち (宮史郎とぴんからトリオ)Ⓔ feat. 松浦ヤスノブ (テナー・サックス)、木村好夫 (ギター) 🅳

D2 喝采 (ちあきなおみ)Ⓛ 🅱

D3 なみだの操 (殿さまキングス)Ⓕ feat. 松浦ヤスノブ (テナー・サックス) 🅳

D4 心のこり (細川たかし)Ⓜ︎ 🅱

D5 昭和枯れすゝき (さくらと一郎)Ⓕ 🅲

D6 北の宿から (都はるみ)Ⓝ feat. ジェイク・コンセプション (テナー・サックス) 🅱

 

演奏: コロムビア・オーケストラ

編曲: 安藤実親Ⓐ、山路進一Ⓑ、前田憲男Ⓒ、大橋節夫Ⓓ、佐伯亮Ⓔ、山田年秋Ⓕ、市川昭介Ⓖ、栗田俊夫Ⓗ、甲斐靖文Ⓘ、河村利夫Ⓙ、青木望Ⓚ、荒川康男Ⓛ、永作幸男Ⓜ︎、坂下晃司Ⓝ

定価: 3,000円

 

1977年は「レコード発明100周年」ということで、回顧録的作品のリリースが相次いだが、コロムビアが2枚組全5巻というヴォリュームで出した『軽音楽による昭和の流行歌』シリーズもそんな中の一つ。最終巻となる今作は、昭和38年(1963年)から当時までに至る15年間を24曲で振り返る。最もモダン化が進んだ時代ではあるものの、制作スタンス的にはまだ保守的という感じ。そんなアルバムではあるものの、ジャケットを見た途端、即手が伸びてしまいました。それぞれのアルバムで扱う年代に相応しい格好を、歌無歌謡のアルバムの概念で捉えると普通すぎる装いの若い女性にさせているのだが、このテーマでこれはないだろと。その帽子!のりピーのベスト盤に唐突に登場するアンスラックスと双璧。これが昭和歌謡だ。

まぁそれは別として、聴いていると色んな妄想が巡ってきて面白い。トップの「高校三年生」、オリジナル自体コロムビアの発売曲なので、オーセンティックな歌無歌謡ヴァージョンを採用してるのかと思いきや、ステレオ感やリードをとるハーモニカの響きの距離感から判断して、どうやら77年当時の新録音っぽい。2コーラス目の転調とか、アレンジ的にも63年感と程遠いし、77年のスタジオ環境でこの音を録れたのかという新鮮な驚き。思えば中沢千鶴子の「花売り娘」も同年だし、この感じは見直されていたのだろうか。「柔」も然り。一方、「愛と死を見つめて」は明確なクレジットがないながら、確実に65年の録音で、当ブログでもいつか語る予定の『ハワイアン歌謡アルバム』の音源を流用している。「涙の連絡船」も当時の録音ではなかろうか。「こんにちは赤ちゃん」は他社曲なので明らかに新録音。女性奏者の先駆けの一人、小島秀子さんが軽やかに聴かせる。それぞれの時代感を的確に封じ込めた音作りがまだできたのは幸せであった。港町ブルース以降はリアルタイムで取り上げたヴァージョンを採用してるっぽい。わたしの城下町で聴けるミレニウムベースなど、確かに77年の発想ではあり得ません(爆)。さすがに「なみだの操」はメロトロンヴァージョンを選んでませんでした(爆)。錚々たる面子を並べ、まさに昭和歌謡博覧会の如く展開していく2枚。