コロムビア KS-7007
テナー・サックス、京琴がうたう 女の演歌
発売: 1974年3月
A1 ひとり酒 (ぴんから兄弟) 🅳
A2 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅺
A3 なみだ恋 (八代亜紀) 🅻
A4 女のゆめ (宮史郎とぴんからトリオ) 🅵
A5 目ン無い千鳥 (大川栄策)
A6 女のきず (宮史郎とぴんからトリオ) 🅲
B1 女のみち (宮史郎とぴんからトリオ) 🅽
B2 女ごころ (八代亜紀) 🅲
B3 新妻鏡 (大川栄策)
B4 なみだ妻 (鶴岡雅義と東京ロマンチカ)
B5 女のねがい (宮史郎とぴんからトリオ) 🅹
B6 おんなの宿 (大下八郎) 🅱
演奏: 松浦ヤスノブ (テナー・サックス)、山内喜美子 (京琴)/コロムビア・オーケストラ
編曲: 佐伯亮
定価: 1,800円
まったりした演歌インスト集がくると、それこそブレーキがかかる…これから本気出すぞと意気込んでる朝の時間帯に聴く音楽じゃないし、夜になったらなったで言葉を選ぶ力が失われている。まぁ、夜聴くとほんとにホロリとするんですよね。飲み屋のねーちゃんに癒されてるようで。自分はそんな積極的に呑む人間ではないし、そうなった経緯を詳細に説明する場所ではないんですけどね、「黄昏みゅうぢっく」は。
コロムビアの歌無歌謡界を長年引っ張ってきた超ベテランアレンジャー、佐伯亮氏が手掛けただけあって、74年という時代性が希薄な1枚で、取り上げられている時代のレンジも幅広い。「女のみち」と「おんなの宿」は、同じく松浦ヤスノブをフィーチャーしたヴァージョンが所謂『KISSアルバム』に収録されていたが(昨年5月29日)、それとは別テイク。とにかくオールドファッション一徹なのだが、その淡々とした音が「女らしさ」そのものなのか。乙女とか淑女とか、最初の1文字を必要としない、根本的な部分から溢れ出る執念。テナー・サックスという、一見マッチョに思える楽器から流れ出る音が、何ゆえにそれを強烈に感じさせるのだろうか。そこに寄り添う「京琴」の、ねっとりとした響きったら。自分が求める京都のロマンを体現する音。ここにあるのは、先斗町の夜の光景そのものってことである。夜の新宿裏通りより、遥かに自分を誘惑する場所だ。
ぴんからの5曲を軸に、そんなロマンを展開する選曲。当時コロムビアに移籍していた東京ロマンチカに加え、後に移籍してくる八代亜紀の曲も含まれているから、結果的に100%コロムビア色充満になってしまったのが面白い。同じように山内さんの京琴をフィーチャーしたワーナー(トリオ)のアヴァンギャルドなヴァージョンに比べると、ここでの「女のみち」は実にストレートだ。325万枚を売り上げた自社史上最大の財産に対して、慎重な姿勢を見せているのは当然の結果。
しかし、一見保守一辺倒と思われがちなコロムビア(ALS系)の歌無歌謡にも、実はとんでもないぶっ飛び盤が密かにあった…答えは、明日のこの時間に。