黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は岸部四郎さんの誕生日なので

RCA JRS-7116

すべてを愛して 最新歌謡ベスト14

発売: 1971年3月

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ジャケット



A1 すべてを愛して (内山田洋とクール・ファイブ) 

A2 望郷 (森進一) 

A3 男と女の数え歌 (日吉ミミ)

A4 別れたあとで (ちあきなおみ)

A5 秋でもないのに (本田路津子)

A6 長崎ごころ (ジ・アーズ)

A7 生きがい (由紀さおり) 

B1 女は恋に生きてゆく (藤圭子) 

B2 信じてほしい (野村真樹)

B3 貴方をひとりじめ (和田アキ子)

B4 誰もいない海 (トワ・エ・モア)

B5 三人の女 (青江三奈)

B6 京都の恋 (渚ゆう子)

B7 誓いの明日 (ザ・タイガース)

 

演奏: 矢野あきら (テナー・サックス) オーケストラ表記無し

編曲: 松本浩

定価: 1,800円

 

宗内の母体が最も敬愛する音楽家の誕生日でもある今日は、その彼も触手を伸ばしそうなテナー・サックスを手にした女性がジャケを飾るこのアルバムを。といっても、矢野あきらさんはその女性ではありません(汗)。例の如く、夜のムードを盛り上げる手段としてのサックスを奔放にフィーチャーしての、71年初頭ヒット曲集。60年代ビクターの一連のピンクムード・シリーズで敏腕を奮った松本浩氏がアレンジに起用されている。

前年のアルバムチャートで4月から年末まで1位を独占し続けた藤圭子以下、いきのいい自社アーティスト(と言っても当時RCAは未だビクターの支配下レーベルの一つであり、厳密に言えば70年のアルバムチャート1位はビクターの完全独占状態であった)の楽曲を各サイドのトップにフィーチャーし、まさに余裕綽綽という感じのアルバム。そのステイタスだけで結構売れたのではなかろうか。爽やかな印象を残す「秋でもないのに」「生きがい」にまで泥臭さが持ち込まれ、混沌とした時代の響きを演出する。これらを始め数曲にフィーチャーされているフルートも、恐らく矢野氏の演奏ではないだろうか。

注目の楽曲は「別れたあとで」。実はオリジナルのちあきなおみヴァージョンのイントロのピアノがしれっとヒップホップのサンプリングネタになっていたりして、レアグルーヴ的にも要注意楽曲なのだが、歌無しになると余計使い勝手が良くなるのだろうか。この曲が入っている盤の市場相場の行方には注意したいものである。当時としては大胆不敵な「コンセプトシングル」、「三人の女」も忠実にインスト化。ラストはGS時代にさりげなく幕を下ろしたザ・タイガースのラストソング「誓いの明日」で、場末ムードを棚にしまい賑々しく盛り上げている。


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