ビクター JV-379~80
流行歌ヒット年鑑 軽音楽でつづる'72~3
発売: 1972年
A1 雨の御堂筋 (欧陽菲菲)Ⓐ
A2 水色の恋 (天地真理)Ⓐ 🅲
A3 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ)Ⓐ 🅱
A4 別れの朝 (ペドロ&カプリシャス)Ⓑ 🅱
A5 雨のエアー・ポート (欧陽菲菲)Ⓑ 🅲
A7 ちいさな恋 (天地真理)Ⓓ 🅱
B1 終着駅 (奥村チヨ)Ⓓ
B2 ハチのムサシは死んだのさ (平田隆夫とセルスターズ)Ⓓ 🅱
B4 波止場町 (森進一)Ⓔ 🅲
B5 ともだち (南沙織)Ⓔ 🅱
B6 結婚しようよ (吉田拓郎)Ⓔ 🅲
B7 だれかが風の中で (上條恒彦)Ⓑ
C1 ひまわりの小径 (チェリッシュ)Ⓑ 🅱
C2 ひとりじゃないの (天地真理)Ⓕ 🅵
C4 虹をわたって (天地真理)Ⓖ 🅱
C5 夜汽車 (欧陽菲菲)Ⓖ 🅲
C6 京のにわか雨 (小柳ルミ子)Ⓖ 🅳
C7 旅の宿 (吉田拓郎)Ⓗ 🅱
D1 古いお寺にただひとり (チェリッシュ)Ⓗ
D2 芽ばえ (麻丘めぐみ)Ⓗ 🅲
D3 雨 (三善英史)Ⓘ
D4 日本列島・みなと町 (青江三奈)Ⓘ
D5 放浪船 (森進一)Ⓘ 🅱
D7 哀愁のページ (南沙織)Ⓘ 🅲
演奏: 松浦ヤスノブ (テナー・サックス)、木村好夫 (ギター)/オールスターズ・ファミリーⒶ
チコ菊池とイージー・ライダーズⒷ
木村好夫ギタートリオ、ビクター・ギター・アンサンブルⒸ
木村好夫とビアーズⒺ
金成良悟 (フォーク・ギター)、ビクター・オーケストラⒻ
ヒット・サウンド・オーケストラⒼⒽ
宇都宮積善 (大正琴)、ビクター・オーケストラⒾ
編曲: 舩木謙一ⒶⒷⒻⒾ、秋山実Ⓒ、近藤進Ⓓ、植原路雄Ⓔ、馬飼野俊一Ⓖ、馬飼野康二Ⓗ
定価: 2,000円
「年末商戦」の季節になると、各社こぞって一般国民の消費欲をそそり立たせる「総括商品」をまとめて市場に送り込むのが当たり前になっていて、それらは大抵「限定盤」と銘打たれていた割に、中古市場に出回る確率がレギュラー・カタログ商品より遥かに高いのであるが、納得するしかない。お祭りに乗るのが日本人気質ですからね…この盤も、そんな年末用商品の一つで、72年の代表的ヒット曲の歌無ヴァージョンを、ビクターがその年出した複数のアルバムから寄せ集めた便利な内容。様々なアレンジが聴けるという点では美味しいし、この内容で2000円だからコスパも高い。クリスマスにかけて、みんなで唱和したんだろうなと想像できます。
まぁ、親和性に関しては、演奏者によってまちまちですが。冒頭3曲は松浦ヤスノブの咆哮をフィーチャーしながらも、ポップで親しみやすい。際どいジャケのレギュラー演奏アルバムに手を出させてもらえなかった子供たちにも安心の展開。続いてはドラム戦線ビクター代表、チコ菊池の登場。単独名義のアルバムは何故かあまり市場に出てこないので、ここで聴けるのは嬉しいが、確かに空間いっぱい広がりまくるドラムサウンドに、強烈に襲いかかるブラス、そして何よりも激しく暴れ回るベースを聴くと、稀少なのも納得するしかない。そのあとの「よこはま・たそがれ」が、好夫スピリットを集団で体現する演奏で、チルアウト効果抜群。
続いてジャズ・クラリネットの大御所・北村英治氏が登場するが、「ちいさな恋」がガチなジャズに生まれ変わっていて吃驚。クラリネットも意外に歌謡メロディーとの親和性が高く、フィーチャーアルバムがもっと作られても良かったと思う。「ともだち」は好夫にしてはファンキーな演奏になっているが、この曲のビクター盤はやはり山内喜美子さんの琴に軍配をあげたい(3日後紹介予定)。金成良吾のフォークギターをフィーチャーした2曲は癒しスポット。その後のヒット・サウンド・オーケストラの6曲は、馬飼野兄弟がアレンジで対決したアルバムから抜粋したもので、これはいずれ単独紹介する予定だが、制作スタッフの手動コピペミスか(?)、康二氏が担当した3曲がここでは俊一氏の編曲とミスクレジットされてしまっている。こういうのはこの種の編集盤あるあるですので。
さて、D面2曲目まで聴いて、ここまでにも相当強烈な楽曲がいくつもあったのだが、続く「雨」のインパクトで一発粉砕されてしまう。これは凄すぎる。エモさを制御できない大正琴の響きを強力に打ち出しているだけでも圧倒的なのに、バックのサウンドが無駄にイカし過ぎているのだ。Bメロからベースとドラムがダイナミックに煽り始め、原曲のニュアンスを大胆に破壊。この1曲がこのアルバムのイメージを決定づけてしまっている。まさに大正ロマン的な「赤色エレジー」も、3コーラス目からまさかの展開に。「哀愁のページ」もご察しの通りの演奏。やはり、大正琴は楽しいし、ここでのロックとの融合に舩木氏の執念を見た思い。この5曲は11月に出たアルバム『大正琴によるベスト・ヒット』からの抜粋。
便利な2枚組ですが、やっぱそれぞれの原典に思いが募るんですよね。