黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は柳亜矢 (坂芳子)さんの誕生日なので

クラウン GW-5158

波止場女のブルース 魅惑のトランペット・ムード

発売: 1970年8月

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ジャケット



A1 波止場女のブルース (森進一)

A2 ヤング・ラブ・スイング (オズモンド・ブラザーズ)

A3 噂の女 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅲

A4 自由の女神 (黛ジュン)

A5 酔いどれ女の流れ歌 (森本和子)

A6 愛こそいちずに (小川知子)

A7 私を責めないで (園まり)

B1 圭子の夢は夜ひらく (藤圭子) 🅲

B2 恋の色・恋の味 (じゅん&ネネ)

B3 ふりむいてみても (森山加代子)

B4 みれん町 (美川憲一)

B5 夏よおまえは (ベッツィ&クリス) 🅱

B6 女が男を棄てるとき (美樹克彦)

B7 男と女がいるから (柳亜矢)

 

演奏: あらおまさのぶと'68オールスターズ

編曲: 福山峯夫

定価: 1,500円

 

脇役としての派手な活躍は歌謡界でも目立つ方の楽器故、ソロ演奏での雰囲気作りにはあまり適さなかったと思われたのか、フィーチャーされたレコードがサックスに比べて相対的に少なすぎるトランペット。それでも、フルートやクラリネットに比べると多いのは確か。そして、歌無歌謡界随一のトランペッターといえば、荒尾正伸氏にとどめをさす。クラウンのハウスバンドにフィーチャーされての70年ヒット曲集。

派手なヒット曲が多い時期ながら、今振り返ると大ヒット曲と呼べるのは多くて4曲くらいか。故に、ペットとの適性を重視して選曲されているのかなと思う。森進一らしい哀愁のブルースから、若々しい躍動感に満ちたオズモンズの曲への転換もそこまで違和感なく、堅実なプレイによって統一されている。「噂の女」も退廃感が希薄な、明朗な仕上がり。自由の女神のような落ち着いた曲に、最も持ち味が出ているという感じ。

各面のラストに着目してみたい。園まりにこんなグルーヴィな曲があったのか、とびっくりさせられる「私を責めないで」。100位以内に入らなかったから、印象に残らないのも仕方ないが、ベースも暴れていてなかなかの隠れた名演になっている。B面ラストも負けずに躍動感の高い「男と女がいるから」。元々クラウン設立記念新人第1号少女歌手として63年デビューした坂芳子が、当時のグラマラスムードに乗じて再出発を図ったもので、「経験」を意識した曲調になっている。プッシュの甲斐あって、オリコンで75位までランクアップしたが、森山加代子のレベルまで行くことを当事者は期待していたのではないか?

筒美京平作品も実に3曲あるが、即お解りになった方は凄い。「恋の色・恋の味」、じゅん&ネネにとって初めて100位圏外の味を味わされた曲になってしまったが、二人のパートを多重録音で再現して工夫の効いたヴァージョンに仕上げている。「女が男を棄てるとき」も85位止まりだったとは意外。「愛こそいちずに」さえ、小川知子史上最低ランク記録を更新している。「ふりむいてみても」はむしろ近年、とある言葉が歌われているせいで封印された感が強い曲になったが、発売当時はそこまで深刻な問題にならず、かなりヒットしたし(前作とかなり差がついたが)、歌無歌謡界でも頻繁に演奏されている。ここでは硬質なベースが印象に残る演奏だ。

スリーパー曲の比重が高いのに印象が派手なのは、やはりトランペットの成せる技か(ついでにベースも)。光だけで歌謡曲は語れない。当然、歌無歌謡も。