黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は石原裕次郎さんを偲んで

ポリドール SMR-3034

スチール・ギター・ムード 花はまぼろし

発売: 1969年2月

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ジャケット



A1 花はまぼろし (黒木憲) 🅱

A2 年上の女 (森進一) 🅳

A3 夕月 (黛ジュン) 🅳

A4 誰もいない処で (小川知子) 🅱

A5 愛の香り (布施明) 🅲

A6 ラブユー東京 (黒沢明ロス・プリモス) 🅱→6/24

A7 忘れるものか (石原裕次郎) 🅱

B1 今は幸せかい (佐川満男) 🅱

B2 朝のくちづけ (伊東ゆかり) 🅲

B3 知りすぎたのね (ロス・インディオス) 🅱

B4 熱祷 (美空ひばり) 🅱

B5 花と蝶 (森進一) 🅵

B6 慟哭のブルース (水原弘)

B7 私って駄目な女ね (和田弘とマヒナ・スターズ)

 

演奏: 山口軍一とルアナ・ハワイアンズ

編曲: 川上義彦

定価: 1,700円

 

ハワイアンムード商戦のポリドール代表、ルアナ・ハワイアンズによる69年初頭のヒット集。軽妙なムードはあれど、ポリドールのミラクサウンド特有の奥行きというか、甘美な音空間の中に溶けていく感じで、クラウンの山下洋治ものほどの場末感はない。主にドメスティックなメロディーの曲を取り上げているのも、かえって特異なバランスを押し出すためだろうか。スチールの音なのに、浜辺感がまるでないのだ。ジャケットにあしらわれたソフトフォーカスなポートレイト群が、まさにその音のカラーを物語っている感じ。

3番前にリリースされた『紅白歌謡ヒット・メロディー』と6曲が重なっているが、「ラブユー東京」がわずかにリピート使用されるにとどまっていて、たとえ同じアレンジャー、ミュージシャンを使おうとも同じ質感を繰り返したくないポリドールの強固な姿勢が伺える。「愛の香り」の「パパヤパヤ」コーラス一つとってみても、全然響きが違うのだ。「ラブユー東京」が息の長いヒットになったので、これだけはわざわざリメイクしようと思わなかったのでしょうか。「夕月」の琴のイントロを必死にギターで弾いているところなど、独自性を出そうとしていて微笑ましい。裕ちゃんの「忘れるものか」は流石にハワイアンスタイルが様になる解釈。

ライナーでは「おかしなグループサウンズ」とばっさり切り捨てられているけど、ほぼ全てを洋楽班が手掛けていたポリドールGSに対して、歌無し歌謡班は同胞意識もなかったんでしょうね。それゆえに「サイケ・カッポレ」や「ラリラリ東京」のような、突然変異的なサイケへの返答を行うことができたのだろうけど、いずれにせよどのレコードでも、ドラムを叩いていたのは原田寛治というのは否定できない事実ですので…ここでも地味な響きながら、底辺をしっかり押さえています。