黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は近藤真彦さんの誕生日なので

東芝 TP-60505

オリコン・ベスト・ヒット! ポップス・インストゥルメンタル

発売: 1985年3月

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ジャケット



A1 天使のウインク (松田聖子)

A2 ユー・ガッタ・チャンス (吉川晃司)

A3 もっと接近しましょ (石川秀美)

A4 ジュリアに傷心 (チェッカーズ)

A5 熱視線 (安全地帯)

A6 ヨイショッ! (近藤真彦)

B1 銀河の神話 (田原俊彦)

B2 リ・ボ・ン (堀ちえみ)

B3 二人だけのセレモニー (岡田有希子)

B4 シンデレラは眠れない (THE ALFEE)

B5 スターダスト・メモリー (小泉今日子)

B6 そして僕は途方に暮れる (大沢誉志幸) 

 

演奏: 東芝EMIグランド・オーケストラ

編曲: 丸山恵市

定価: 2,000円

 

80年代にだって、普通に歌無歌謡レコードはありましたよ…ただ単に、70年代のそれのような下世話な売り方ができなくなっただけで。もちろん、演歌ファンを狙ってのその手の演奏ものも健在でしたし(当然木村好夫先生のライフワークも続いていたわけで)、一方アーティスト別にまとめての「ニューミュージック作品集」みたいな盤も数多く出てましたが、大抵は無難すぎる料理法で空気みたいに軽くて、言葉に出す気にもならないし。それに近いものが、アイドル歌謡の類にも数枚出ていて、菊池桃子小泉今日子は直接その制作に関わったりもしてましたね。この系統は、最近の松井咲子に至るまで細々と続いています。ちょっと毛色は違うけど神崎愛のフルート演奏盤とかも思い出したり。というわけで、柴本幸さんのリコーダー演奏盤を待望しています!!!

余計な方向に話が逸れてしまったけど、まさかの80sアイドルポップ中心の歌無歌謡盤を見つけたので、マッチの誕生日に取り上げてみました。そして、これもまさかのオリコンタイアップ付きレコード。業界誌そのものとレコード会社が出している商品が結び付くなんて、常識じゃあり得ないことで、ライノが出した『Billboard Top Hits』シリーズに遥かに先駆けている。さらにまさかなのは、小池社長自身によるライナー。収録アーティストが見事に他社所属ばかりというのに(吉川晃司とTHE ALFEEは当然移籍前)、ここまで褒めたり内幕を暴露しちゃっていいのでしょうかね。このシリーズ、2枚以上確認されていないけど、まぁそれなりに理由は推測できそうです。

安直に買っちゃっていいのかな、と迷いがありましたが、そんなの吹っ切ってしまった最大の理由は、「もっと接近しましょ」が収録されていること、それに尽きます。ライナーにもモロ書かれてるように、アレとアレなことであまりにも有名な曲。その歌無ヴァージョンだから、黙っちゃいられません。原曲を劇的にいじってない分、躍動しまくりのパーカッション、そしてエディ・M感たっぷりのサックスが堪能できます。使えますよ(爆)。

その曲を筆頭に、全編でサックスがリードをとっていますが、まぶち印とか稲垣印とか、そんなもんとは無縁。当時幅を利かせていたフュージョンのレコードで聴けるような、耳あたりの良い響きで統一されてる。バックの音も、グランドオーケストラを名乗っているものの、そこまでスケールのでかいものではなく、堅実にオリジナルを再現するにとどまってる。「熱視線」なんかは、かなりがんばって打ち込みを再現した感があって、カラオケ職人の気持ちをちょっと早めに体感したのだろうなと。「ヨイショッ!」のコーラスもしかり。楽しく演ってみました、という印象以上のもんじゃない(Jackの「夢追い酒」みたいなのの方が、やっぱ聴いてて楽しいけど)。

「リ・ボ・ン」ではやっぱり、70年代初期の歌無歌謡全盛期のカラーがちょっと顔を出したりしているし、まだまだ有望株だったユッコの「二人だけのセレモニー」には悲壮感のかけらもないし、タカミー曲2連発にはファン歓喜だろう。どうして「そして僕は途方に暮れる」だけオリジナルのキーから大幅に逸脱してるのか不可解だけど、サックスの都合だからでしょうね。

個人的には「天使のウインク」でBメロの頭、ついつい「You love me…」と歌ってしまいます。サンディ・ラム・ファン心理は滅びてませんので(汗)。いやぁ、やっぱ80年代の曲も素晴らしいですね。


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