大映 DAL-16
発売: 1969年8月
A1 シバの女王 (レーモン・ルフェーブル楽団) 🅲
A2 雨 (ジリオラ・チンクェッティ)
A3 ゲット・バック (ザ・ビートルズ) 🅱
A4 インディアン・ギヴァー (1910フルーツガム・カンパニー)
A5 タッチ・ミー (ザ・ドアーズ)
A6 愛のレッスン (フランシス・レイ)
B1 グッドバイ (メリー・ホプキン)
B2 輝く星座 (フィフス・ディメンション)
B3 行かないで (スコット・ウォーカー)
B6 ふたりだけの夜明け (クロード・ボラン)
演奏: インペリアル・サウンド・オーケストラ
編曲: 池田孝
定価: 1,500円
テイチクが配給していた時代の大映レコードは、配給元に負けじと歌無歌謡レコードに力を注いでいたけど、やはり洋楽の演奏ものにも手を出していました。インペリアル・サウンド・オーケストラ名義は70年代にも一部マイナー・レーベルに確認されたりしてますが、直接関係はないと思われます。何ゆえに好んで使われた名義だったのだろうか?
大映の演奏ものの殆どで敏腕を奮っていた池田孝氏が、この盤でもアレンジを担当。ノーチェ・クバーナ出身ということは、山倉たかし氏と同窓ということだ。元々トロンボーンを担当していたが、その辺の谷啓的センスにも恵まれていたのか、翌年にはスパイク・ジョーダン名義で『楽器が歌う・冗談音楽/コミカルソングで今宵楽しく」(DAL-30)なる珍盤を手がけてもいる。選曲の妙もあるけど、これ最早メガレア盤の領域に入ってるんですよ…
そんな珍作の予感を感じさせない、ガチなイージー・リスニングを模索した本作。所々にあっと驚く選曲を交えて、当時のポップス事情を垣間見せてくれる。いかにもエレガントな冒頭2曲は、歌無歌謡の場末感と全く違うところを指向しているが、「ゲット・バック」になるとちょっと違う。軽めな疾走感にホーンの華やかさが加わり、間奏のパーカッションはお遊戯会の合奏のような趣き。2度目のギターソロには、これって好夫師匠の演奏ではと思わせるタッチまで出てくる。バブルガムの極致「インディアン・ギヴァー」はそれなりにポップだが、この曲は米国のZig Zag Peopleによる、それこそ冗談音楽の極みのような屎莫迦解釈に勝るものはないです(爆)。是非捜して聴いてみて下さい。
そして、ダメ押しのように「タッチ・ミー」が登場。「ハートに火をつけて」さえ取り上げられる頻度はそんなに高くないのに(ホセ・フェリシアーノの力を持ってしても)、この曲となると胸熱である。原曲の躍動感を生かしつつ、さすがに妖しさは激減。エレガントな感触にはそんなに違和感がない。そして、エンディングで「Stronger than dirt!」と叫ばせるタイミングが計りづらい。ホーンが入り始めてから23小節目(オリジナルは9小節目)になってますよ。ここ重要(この一節、カラオケの字幕には出てこないけど、歌わずにいられないんですよね)。
B面もビートルズ・ファンの心をさらに動かしそうな「グッドバイ」やここでもやはりセルメン盤に則っている「フール・オン・ザ・ヒル」、今では当時に増してカルト的な支持を受ける曲と化している「行かないで」などを交えて手堅く進行していく。チェンバロの甘い音色が目立ち、ラブ・サウンドの曙ももうすぐといった響きに彩られている1枚。「ふたりだけの夜明け」のギターも、なにかしら好夫タッチですけどね。
"Stronger Than Dirt"の元ネタはこれ