黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その42: なんてったって(演る)アイドル

東芝 TP-7258

ベスト・ポップス・フォー・ユー/高橋レナ 

発売: 1968年6月

ジャケット

A1 マサチューセッツ (ビー・ジーズ)

A2 アリゲーターブーガルー (ルー・ドナルドソン) 

A3 ハロー・グッドバイ (ザ・ビートルズ) 🅲

A4 ホリデイ (ビー・ジーズ) 🅱

A5 サニー (ボビー・ヘブ) 🅳

A6 パリのめぐり逢い (フランシス・レイ)

B1 暗くなるまで待って (ヘンリー・マンシーニ)

B2 デイドリーム・ビリーバー (ザ・モンキーズ) 🅱

B3 オーケイ! (デイヴ・ディー・グループ)

B4 パタ・パタ (ミリアム・マケバ) 🅱

B5 初恋の並木道 (ボビー・ダーリン)

B6 花のサンフランシスコ (スコット・マッケンジー)

 

演奏: 高橋レナ (エレクトーン、ヴォーカル)/クイン・ノート

編曲: 道志郎

定価: 1,500円

 

お待たせしました、日本ポピュラー演奏家史に於ける元祖アイドル、高橋レナ初登場!過去クイン・ノート名義のアルバムを2作紹介した時、ジャケットに姿が出てないということは演奏にも参加してないと決めつけ、余計その存在を恋しがったのですが、やっぱ本人が確実に存在する盤を聴くと、くっきり刻印されたその魅力に釘付けになってしまうのです。顔無きクイン・ノートもいいけど、この盤はその比じゃない。ピアノを始めたのが17歳というから、決して生粋のお嬢様とは言えないけど、持ち前の好奇心で間も無くエレクトーン界に進出。67年勁文社から発売されたミュージック・ブック『HIT TUNE/エレクトーン・サウンズ』に3曲ソロ演奏を残しており、これが初録音と思われる。前後してグラモフォンから、師匠・道志郎との「デュエット・アルバム」として『エレクトーン夜のデュエット』をリリース、そして東芝からのアルバム3枚リリースに至る。中でもファースト・アルバム『グループ・サウンズ・フォー・ユー』(TP-7243)はGSファンも追い求める人気盤。5桁で取引されることも多い幻の逸品である。間も無くリリースされた今作では、ノリの良さはそのままに視点をよりグローバルに。アリゲーターブーガルーがリイシューCDに収録されたおかげで、これもまた人気盤の仲間入りをしたが、こちらは奇跡的に容易に手許に巡ってまいりました。

グルーヴィかつロマンティックなムードの中、クイン・ノート印と言える渦巻オルガンも早々と随所にフィーチャーされ、個性的サウンドが確立されていますが、それ以上に針を落とした途端流れてくるレナの歌声に耳を奪われるのだ…楽器演奏と同等にサウンド全体に溶け込んでいくその声、言葉がないと余計説得力が増すかも。「アリゲーターブーガルー」の囁きはもうおなじみだけど、キーが変わることによって恥じらいの要素が増すのがまたなんとも言えない。「ハロー・グッドバイ」ではドラムが熱演し、彼女のやる気をエキサイトさせているし、エンディングで加速するところもユニーク。「デイドリーム・ビリーバー」を原題のまま表記したのは、当時にしては異例のこと。これもまた、初期の貴重なカバーとして楽しいし、彼女の茶目っ気が全開している「初恋の並木道」も聴きもの。鳴っている音全てに乙女の祈りを注入する極上ヴィーナス。決して外せない名盤。