黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は藤村美樹さんの誕生日なので

ポリドール MR-8189~90

ヒット歌謡ベスト28 夕立ちのあとで

発売: 1975年7月

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ジャケット+盤

A1 別れの接吻 (森進一)Ⓒ 🅲

A2 夕立ちのあとで (野口五郎)Ⓑ 🅴

A3 恋の暴走 (西城秀樹)Ⓐ 🅲

A4 巴里にひとり (沢田研二)Ⓐ 🅳

A5 夏ひらく青春 (山口百恵)Ⓑ 🅲

A6 ともしび (八代亜紀)Ⓒ 🅳

A7 内気なあいつ (キャンディーズ) 🅲

B1 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)Ⓐ 🅱

B2 はだしの冒険 (アグネス・チャン)Ⓑ 🅲

B3 千曲川 (五木ひろし)Ⓒ 🅳

B4 恋のリクエスト (あいざき進也)Ⓐ

B5 女がひとり (森進一)Ⓑ 🅱

B6 よる (中条きよし)Ⓒ 🅲

B7 湖の決心 (山口百恵)Ⓐ 🅳

C1 シクラメンのかほり (布施明)Ⓐ 🅹

C2 十七の夏 (桜田淳子)Ⓑ 🅲

C3 心のこり (細川たかし)Ⓒ 🅶

C4 初めての涙 (天地真理)Ⓐ 🅱

C5 ひと雨くれば (小柳ルミ子)Ⓑ 🅲

C6 あいつ (渡哲也)Ⓐ 🅱

C7 花のように鳥のように (郷ひろみ)Ⓐ 🅱

D1 昭和枯れすゝき (さくらと一郎)Ⓒ 🅸

D2 ペパーミント・キャンディー (チェリッシュ)Ⓐ 🅱

D3 哀しみの終るとき (野口五郎)Ⓑ 🅲

D4 22才の別れ (風)Ⓒ 🅴

D5 カッコマン・ブギ (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)Ⓐ 🅱

D6 愛のアルバム (天地真理)Ⓑ 🅱

D7 我が良き友よ (かまやつひろし)Ⓒ 🅷

 

演奏: 原田寛治 (ドラムス) オールスターズⒶ

伊部晴美 (ギター) オールスターズⒷ

秋本薫 (テナー・サックス) オールスターズⒸ

編曲: 伊部晴美

定価: 2,500円

 

ポリドールの歌無盤のジャケは、手に取るだけでも勇気が要るものが多い。69年あたりまではそうでもなかったけれど(他社比)、「そういう市場」になってたから仕方ないのか。74年以降、他の各社(クラウン除く)がトーンダウンし始めてからは、ますます際どさを増す傾向に入っていたりして、その辺を「悪用」する中古業者もいくつかあるようだけど、やっぱ重要なのは「音楽」なんだから。それぞれが見つけた時の価値観以上に膨らませたもの、それが「真の価値」なのではないか。

…と書き出して、とあるアルバムの説明の前書きにしてアップしようとしたのだが、喜多條忠氏の訃報により保留していたのだった。既に説明していたのなら、今回のアルバムの前書きに充分値すると思ったのだが、しょうがないな、ということで、前書き丸ごとこちらに移植。その時したためた文章は、何事もなければ来月の頭にはお届けできるはずですが、そのアルバムほどではないけれど、75年夏のヒットを集めたこの2枚組のジャケットも、負けずに強烈だ。比較的に安い値段でオークションに出た時、無事射止めることができたけれど、好事家の薬指を動かす為に強気な価格設定を惜しまない者の気持ちは本当解せないし、そんな人達のブラックリストに載らずに済むよう、こちらも慎重に動かねばならない。再度言うけど、当方にとって重要なのは「中身」だから。このアルバムへの興味も、港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカを歌無でどう料理しているかとか、「十七の夏」の主旋律をどの楽器が奏でているかとか、そういうのに起因しているのですから。

と言いつつ、このジャケ写は好きです。危うく、持っているのを忘れて再度ビッドしかけた位(実際全然エロくないジャケの別のアルバムに対して、昨年末そのことをしてしまい、猛烈に反省している)。アイドルの写真集に同じ構図の写真が出ていたら、たとえ上半身にカーディガンを纏ってようが、大騒ぎしますからね(瀧汗)。例によって、デリケートな部分を刺激したくないので、「盤隠し」しますが。帯がないのが残念でしょうがない…ちなみに裏はもっとやばいです。家庭崩壊の原因になりかねない(自滅)。

で、肝心の音の方は、安定のポリドール3種盛り以上のものではない。この頃になると、かえって保守の領域に入ったというか、まだクラウンの方がカラフルで欲をそそるというか…サウンド作り面では前に進んだと言え、コンセプトが60年代末期のままなのがかえって面白くない。問題の「港のヨーコ」は、クラウン盤のような演出もせず、ひたすらドラムが先導していく。「あんた、あの娘の…」のところが、ドラムだけになるのは新鮮な仕掛けだが。「十七の夏」の方は安定の伊部サウンドシクラメンのかほりを、ドラムを強調しキーボードを主導役にした異色の感触に仕上げているのが、全体の流れではいいアクセントになっている。

一昨日煽りすぎたキャンディーズ関係の選曲だが、「内気なあいつ」は大ヒットした「年下の男の子」の次だけあって、比較的取り上げられた方の曲。ちょっと前までは歌無歌謡で活躍しまくっていた穂口雄右氏は、このあたりから「料理される側」に回るわけだけど、果たしてどんな思いでこの辺の解釈を耳にしてらっしゃったのだろうか…こうして歌無盤を聴くと、これもまた74~75年に集中的に勃発した「隠れキンクス歌謡」の一つだったことに気づかされるのです。