黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は増位山大志郎さんの誕生日なので

テイチク SL-1528

演歌ヒット・メロディー

発売: 1979年

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ジャケット



A1 北国の春 (千昌夫)Ⓐ 🅳

A2 みぞれの酒場 (石原裕次郎)Ⓒ

A3 涙の朝 (八代亜紀)Ⓐ 🅱

A4 みちづれ (牧村三枝子)Ⓔ 🅲

A5 そんな女のひとりごと (増位山太志郎) 🅲

A6 そんなナイト・パブ (増位山太志郎)

A7 だから今夜は… (増位山太志郎・沢田嘉津枝) 🅱

B1 夢追い酒 (渥美二郎)Ⓐ 🅳

B2 お店ばなし (増位山大志郎) 🅲

B3 惜春 (五木ひろし)Ⓑ 🅲

B4 花街の母 (金田たつえ)Ⓐ 🅳

B5 そんな夕子にほれました (増位山大志郎) 🅱

B6 与作 (北島三郎)Ⓑ 🅳

B7 青葉城恋唄 (さとう宗幸)Ⓐ

演奏: カンノ・トオル (ギター)とオーケストラⒶ

テイチク・オーケストラⒷⒸⒹ

吉岡錦正・錦英 (大正琴)/テイチク・オーケストラⒺ

坂田宏聡 (尺八)、山内喜美子 (琴)/テイチク・オーケストラⒻ

編曲: 伊藤幸彦ⒶⒷ、高田弘Ⓒ、竜崎孝路Ⓓ、池多孝春ⒺⒻ

定価: 1,500円

 

現役力士にして、得意の喉で演歌歌手としても大ブレイクした増位山のヒット曲5曲をフィーチャーしてのインストコンピ。今じゃ想像できないけど、歌うアスリートと言えば80年代までは演歌が当り前でしたよ…ハードな競技人生に対する「癒し」のような意味合いもあったのでしょうか、それとも「男道」にヤワなフォークなんて似合わない、という持論でも蔓延っていたのでしょうか。うちにも野球選手が歌うレコードがいくつかありますが、並じゃないドラマを聴かせてくれているし。200勝投手・平松政次なんて、ブレイク前の伍代夏子を早々とデュエット相手に起用したりしてるし。80年代あたりから、特に力士の課外芸能活動に対して規制がかけられたのがつくづく惜しまれます。最近は全然別の観点から、女子アスリートの音楽的センスに興味津々ではありますが(汗)。

話が大幅に脱線しましたが、演歌が波に乗っていた79年ならではの選曲で気楽に聴けるし、明らかにカラオケユースと一線を画したカラフルな音色使いは、どっこいまだ生きてたんだなと安心させてくれます。裕ちゃんにこんな曲あったんだ、60年代初期の曲をアーバンに新解釈したような「みぞれの酒場」は、オリジナルのオケを流用してギターを被せての「自社アドヴァンテージヴァージョン」。出来がいい故にこの盤でも目立ちまくります。かと思えば「涙の朝」は、アレンジは忠実ながらキーを変更して録り直しているし、やはり大人の事情ってあったのでしょうか。増位山の大ヒット曲「そんな女のひとりごと」では、成熟しきった山内さんの琴の音が艶かしく誘惑します。「夢追い酒」は、飲み屋のねーちゃんコーラスの不在が惜しい。最後、青葉城恋唄」はそれ演歌やないやろという感じですが、さわやかに幕引き。

この頃は山倉たかし先生も主な活動の場を日本プリンスレコードに移していたこともあり、てっきり歌無歌謡モードを捨てたと思われたテイチクの意地が、密かに炸裂してますが、いくら「プレイバックPart2」とか演ってても、カラオケのレコードは買う気になりませんな…裕ちゃんのカラオケ盤は、ジャケットにやられて買ってしまったけど(汗)。