コロムビア KW-7019
神田川 ヤング・フォーク・ヒット14
発売: 1974年1月
A2 一枚の楽譜 (ガロ) 🅶
A3 白いギター (チェリッシュ) 🅺
A4 君の誕生日 (ガロ) 🅷
A5 心の旅 (チューリップ) 🅳
A6 冬物語 (フォー・クローバース) 🅲
A7 夏色のおもいで (チューリップ) 🅵
B1 心もよう (井上陽水) 🅰→4/22
B2 てんとう虫のサンバ (チェリッシュ) 🅵
B3 さよならをするために (ビリー・バンバン) 🅷
B4 ロマンス (ガロ) 🅵
B5 れんげ草 (ビリー・バンバン) 🅲
B6 学生街の喫茶店 (ガロ) 🅷
B7 愛すべき僕たち (ブレッド&バター) 🅱
演奏: ヤング・フォーク・メイツ
編曲: 小谷充
定価: 1,500円
最後の1ヶ月を前に…
歌無歌謡ブログを始めて以来、「ポーリュシカ・ポーレ」や「さすらいのギター」、「悲しき天使」といった曲を日本語の歌詞と離れた状態で何度も聴いて、その魅力を再発見してきたけど、まさか完結1ヶ月を割ろうとしたところで、世界がこんな情勢に突入してしまうなんて。
こんな段階で改めて我が立場を明確にはしたくなかったのだが、自分は特定の国に対して憎しみを露わにすることは絶対許してはならないという思想を貫いてきたし、特定の国の行動を憎むのであればなぜ宣戦布告しないのだという忠告に従うことは、それ以上に許されないことだと思っている。
今はただ、世界一有名なウクライナ産メロディーと化した「悲しき天使」に米国人がつけた歌詞の一部、「我々は戦おうが決して負けない」を素直に聴けないだけだ。それを有名にしたポール・マッカートニーに罪はない。
いずれにせよ、戦後日本産の歌無歌謡レコードの中では、ロシアの旋律も米国の歌も韓国の歌も、全て歌謡曲と同じ地平上で響いている。それは喧騒に溢れた現実からの揺り返しになり得る。そんなメロディーを、またみんなで共に奏でられる日が来ますように。
予定通り、もうしばらく黄昏みゅうぢっくは続けます。御見守り下さい。
サザンの曲が入っている盤は何枚か手許にあるけど、微妙にここに持ってくるタイミングを逃してしまったし、82年に出たソニー盤「桑田佳祐作品集」はこのブログのカラーとちょっと違うなという気がして外した。あまり知られていない曲だけを野暮ったいアレンジで取り上げた盤なんかがあったら、喜んで持ってくるんだけど、誰が「買う」んでしょうかね。自分は喜んで買いますけど…
そんな桑田さんの誕生日、78年にサザンが登場してくる(奇しくも、ニューウェイヴが台頭の兆しを見せ始めるのも同時期)あたりまでは、日本音楽最前線で「ナウい」と判断されていたニューミュージックの、まさに寸前の段階を捉えたヒット曲を集めた盤を取り上げました。90年代のCD時代以降、改めてそのポップセンスが再評価されたチューリップやガロも、今聴けばやっぱりヒップだなぁと思ってしまう陽水やかぐや姫も、当時は歌謡に対するカウンターカルチャーとしての「フォーク」に一括りにされていた訳です。当然、浅川マキや佐井好子までも。それに対するカウンターカウンターカルチャー(?)に頭脳警察や四人囃子がいたわけだけど、それとてキャロルと同じ括りにはなってなかったし。ややこしいです。全部「歌謡曲」でいいじゃないですか(過激論)。
そんなフォーク・シーンをほんのり場末ムードで捉えたインストアルバムも当然各社から出ており、そんな中のコロムビア盤がこれ。当時ディストリビュートしていたマッシュルーム・レーベルの稼ぎ頭だったガロの曲を大フィーチャーしたのに加え、自社勢ではKitレーベルのビリー・バンバンとフォー・クローバーズの曲を持ってきている。ブレバタも当時コロムビア所属だったけど、この最終曲は当時ビリー・バンバンがシングルでカバーしていた関係で取り上げられたようだ(オリジナルはフィリップスから発売)。重要なガールズ勢だったやまがたすみこや、日暮しの曲まで取り上げる余裕がなかったのが悲しいけど、売る側としてはメジャーな曲が多い方が都合がよかったんでしょう。「風に吹かれて行こう」のオリジナルを超えるインスト盤なんて、とても想像できないですが…(汗)
サウンド的には、アコギの響きをメインにしたオーガニックな作りながら、歌無歌謡ならではの野暮ったさもしっかりあって、象徴的なのは冒頭2曲にフィーチャーされている女性コーラスだ。「神田川」にはお洒落な感触を与えているが、「一枚の楽譜」になると下世話な感じに転じていて、同じコロムビアが手掛けたジョー&ホットベビーズの歌詞無しコーラスの方が、まだヤングな感触が出ている(バックの演奏も含めて)。「夏色のおもいで」になると、より野暮ったい。全体の音へのコーラスの溶け込み具合が変なのだけど、雑多な音を混合している故だろうか。ドラムはかなり攻めた演奏をしているのに…「学生街の喫茶店」でも、相当攻めている間奏から2コーラス目で一気に落とすところが、むしろスリリング。「愛すべき僕たち」の感触は寧ろ山倉たかしっぽい。
アレンジャーの小谷充氏は、9ヶ月後にビクターから出た『フレッシュ・ヒット・フォーク』も手がけていて、3曲被っているのだが、ちゃんと棲み分けを行っている慎重な仕事ぶりで、「心もよう」はこちらの演奏の方が遥かに質が高い。それよりも、同じビクターでこれとほぼ同時期、メロトロンズ『演歌の旅』を手がけているという事実の方が驚嘆に値する(この盤、当ブログで何度も名前を出してますが…未だホーリーグレイルのままですわ。ビクターさんがJ-インスト名盤CDシリーズなんて企画してくれたら、まず真っ先に入れるべき。「衝撃のエレキ尺八」もね)。