黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1975年、今日の1位は「時の過ぎゆくままに」(2週目)

コロムビア KW-7061

最新ヒット情報 至上の愛/みれん心

発売: 1975年9月

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ジャケット



A1 至上の愛 (西城秀樹) 🅳

A2 旅支度 (小椋佳) 🅲

A3 絵日記 (チェリッシュ) 🅳

A4 賣物ブギ (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)

A5 さだめ川 (ちあきなおみ) 🅱

A6 夕立ちのあとで (野口五郎) 🅳

A7 天使のくちびる (桜田淳子) 🅳

B1 みれん心 (細川たかし) 🅲

B2 時の過ぎゆくままに (沢田研二) 🅴

B3 北へ帰ろう (徳久広司) 🅳

B4 誘われてフラメンコ (郷ひろみ) 🅲

B5 気がかり (黒沢年男)

B6 人恋しくて (南沙織) 🅴

B7 白いくつ下は似合わない (アグネス・チャン) 🅴

演奏: ゴールデン・ポップス

編曲: 永作幸男

定価: 1,500円

 

老舗コロムビア・レコードが送る1975年夏のヒット曲集。歌無歌謡黄金期を過ぎて、果たしてどんなアプローチで攻めてくるだろうか…演り手の顔も見えないし、やぱい展開が期待できそうもないな…と言いながら「至上の愛」に針を落とす。おとなしい…秀樹の熱量とは全く別の行儀のよさを、フルートとサックスが落ち着いた音色で紡いでいるし、リズム隊も全く目立たない。と思いきや、Bメロで切り込んでくるディストーションたっぷりのギター。でもそれだけなんだな…田舎のスーパーマーケット店内で、全く自己主張することなく流されている音楽。そうとしか言えないけれど、当時の流行歌を全部そんな色に染め上げること自体に美学を感じずにいられないのだ。それこそがこの種の盤に対する需要の素だったわけで、解っていたレコード会社は懲りずにそれらを作り続けたってことである。故に、それらを買う立場としては、どうしてもメリットってものを見出さないと気がすまないし、それこそが「黄昏みゅうぢっく」の主題なんだな。

クラウン盤ではムーディに決め過ぎた故サイケ色さえもが現出した「旅支度」もここでは、普通にムーディなだけ。フルートが適度な色付けを行なっているのがいい。「賣物ブギ」は単に平面化したブルースになっちゃってるけど、故に想像力が膨らむ。「さだめ川」「天使のくちびる」も、全て同じラインの上で料理されていて、曲そのものにある「個性」がどうでもよくなっている。それでいいじゃないか。ただ、「時の過ぎゆくままに」のサイドに添えられているフルートが、他のヴァージョンにはない清涼感を出しているのが耳を引く。この時期の曲を演っている盤としては、魅力に乏しい方ではあるけど、それも色だなということで。