黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その33: 笛は恋人

コロムビア SW-7021

フルート・ムード

発売: 1975年11月

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ジャケット(裏)

 

A1 ロミオとジュリエット

A2 白い恋人たち 🅵

A3 シャレード

A4 ラヴァーズ・コンチェルトⒷ

A5 ラスト・ワルツⒶ 🅱

A6 いそしぎⒶ

A7 男と女Ⓑ

A8 スターダストⒷ

A9 恋はみずいろⒷ 🅲

A10 月は黄色にⒷ

B1 シェルブールの雨傘

B2 ムーン・リヴァーⒶ 🅲

B3 エスタデイⒷ 🅵

B4 ルック・オブ・ラヴⒶ  

B5 スカボロー・フェアⒶ

B6 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンⒷ

B7 アンド・アイ・ラヴ・ハーⒶ 🅳

B8 誰かが誰かを愛してるⒷ

B9 黒いオルフェ

B10 グッドバイⒷ

演奏: 衞藤幸雄 (フルートⒶ)、薗武史 (フルートⒷ)/GOLDEN POPS ORCHESTRA

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

せっかく「歌謡フリー火曜日」を設定したのだから、1枚位フルートがメインのアルバムを紹介しなきゃ…っても、この1枚しか手元にない(CDは別として)。こういう演奏レコードに憧れて、フルートを吹きたいと思ったことはないのだけど(宗内の母体・談)、イージーリスニング界では主流ですしね。

9月25日のエントリで、歌無歌謡盤で活躍したフルート奏者を即答するのは困難と書いたのだけど、忘れちゃいけないのが『ヤング・ヤング・フルート』シリーズを東芝に録音した衞藤幸雄さんだ。つい最近、その1枚を入手するチャンスが巡りかけたのだけど、そう簡単に許されるはずがない。何たって、筒美京平先生がアレンジャーとして関わっているので、やたら争奪戦を誘発する。ただ、内容のゴージャスさに増して、その盤が語りかける「ヤング」というイメージが重要。何せ、GSに於いてさえ、ギター、ベース、ドラム、オルガン、タンバリン(笑)の次位に重要な楽器になっていたし、高嶺の花というより親しみやすさがイメージ浸透に繋がったのではなかろうか(たとえおぼっちゃま系GSメンバーに好まれたと言えども)。縦が吹けたら横も吹けそうって、単純に思えたりしますもんね(実際はそう甘くないけど)。GSとは言い難いポップ・バンド系に於いても、ピンキーとキラーズ、麻里圭子とリオ・アルマなど、重要ポジションを占めた例は多かったし、フォーク界、さらにムード・コーラス界でも然りだ。そして、当時の歌無歌謡/ムード音楽の中にあっても、その響きがもたらすものは清涼剤的な感覚に他ならなかったし、先の『ヤング~』のジャケットを見てもエロスというより、さわやかな躍動感が伝わってくる。これでモデルが楽器でも持っていれば完璧だったし、その人が演奏してるという妄想を促すことにもなるわけで(汗)。

そんな衞藤さんが半数の曲にフィーチャーされてのポップ・スタンダード集。例によって、コロムビアから大量にリリースされたお手軽なポップ・インスト・コレクション・シリーズの1枚で、雰囲気作りには持ってこいという面構えだ。喫茶店というよりは、ファミレスよりちょっとだけ階級が上の庶民的レストランで流れるイメージ。流行りの歌謡曲より、この辺の曲をすらすら演奏できたら、めちゃモテたんでしょうな。バックの演奏も派手になりすぎず、まろやかな響きを適度なおとなしさで支えている。擬似生演奏としての機能を果たすのには丁度いいのかな。自分(宗内の母体)もこの辺の曲は基本として押さえておけばよかったかな…(汗)。なお、「グッドバイ」メリー・ホプキンではなく、ベニー・グッドマン楽団の曲。

ジャケット、表の方はムード盤の黄金律に則った構図にフルートをはめ込んだという感じですが、裏の方が遥かに妄想心を刺激するので、そっちを載せておきます。こういう選曲を縦笛でも聴きたいですね(汗)。