CBSソニー SOLU-39
歌謡ワイド・スペシャル
発売: 1975年6月
A1 女がひとり (森進一)☆ 🅲
A2 我が良き友よ (かまやつひろし) 🅱→5/10
A3 22才の別れ (風) 🅰→5/10
A4 ひとり歩き (桜田淳子) 🅳→2/24
A5 さすらいの唄 (小沢深雪) 🅲
A6 昭和枯れすゝき (さくらと一郎)☆ 🅷→11/15
A7 朝の海 (野川明美)
A8 別れのスナック (朝丘雪路)
B1 花のように鳥のように (郷ひろみ)☆ 🅲
B2 恋人たちの午後 (アグネス・チャン) 🅲
B3 想い出通り (南沙織)
B5 哀しみの終るとき (野口五郎) 🅳
B6 ペパーミント・キャンディー (チェリッシュ) 🅳
B7 湖の決心 (山口百恵)☆ 🅴→2/24
B8 ふたりの秘密 (西川峰子) 🅲
演奏: クリスタル・サウンズ
定価: 1,500円
クリスタル・サウンズのアルバムを語り分けるのは至難の業である。75年までの盤は全てタイトルが「歌謡ワイド・スペシャル」だし、ジャケットの印象とか代表的な曲名で個別イメージを振り分けるのがベストかもしれない。もっと手っ取り早いのはレコード番号を使うことだけど、価格変更やら何やらでそれさえも容易に行うわけにいかない。この盤はSOLU-39だけど、前年3月に出た盤はSOLH-39(2月2日参照)だし、翌年7月には15AH-39(手許にあるが、ダブり曲が多いため語るのは断念)が出ている。「39番のクリスタルのアルバム」が特定の1枚を指すことはあり得ないのである。他にも複数規格で番号が共通しているアルバムがあり、実にややこしいのだ。
いずれにせよ、流れていると落ち着く、何も考えたくない時にぴったりのクリスタル節が堪能できる1枚ではあるけれど、なんかもう一つ勢いが欲しいなぁ。「女がひとり」ではイントロからソリーナが炸裂し、この新兵器を使ってちょっとは手間を軽減してやろうという意気込みを感じるけれど、ちゃんと控えめに本物のストリングスも入れているあたりが憎いところ。2コーラス目でチェロ(ヴィオラ?)にソロを任せているのも新鮮だ。かと思えば、「22才の別れ」は全体の雰囲気を簡素化しているのが逆効果になってしまい、クラウン盤の泥臭いイントロやコロムビア盤の新鮮な音色遣いが恋しくなる。「ひとり歩き」もイントロの音色が妙なのはいいんだけどね…A面後半のディープ・ゾーンを抜けて、期待感と共にB面に移るも、ときめきの盛り上がりが基準値以上に達することがない。「花のように鳥のように」のフルートも、もっとはじけた音色だったらよかったのに。「恋人たちの午後」のマリンバもキュートでいいのだけど、キラキラしたコロムビア盤の勝ち。煮え切らない気分で聴き進めると、前作からのリピート収録である「湖の決心」にぶち当たる。この謎の雄大感、混沌としたイメージの交錯こそがクリスタルなんだよと、改めて感動の渦に襲われるのだ。そして、前作でその後に続いていた2曲を、改めて恋しがるという結論に導かれる。その代わりに「ふたりの秘密」であっさり終わるのが物足りない。
その曲でも、「想い出通り」や「哀しみの終るとき」でも清らかに歌ってたフルートが、全てリコーダーだったらと夢想せずにいられないんだよね…自分のクリスタル愛を決定付けたのが何かを、予期せず再確認する。「わたしの宵待草」や「若草の季節」で聴けたアレ。案外、ここで吹いているフルーティストだったりするかもしれないのだよね、その音の主は。コスト面で密度ギリギリな分、経験値の高いプレイヤーを使うことがあまりないと読んでるからね。それが露呈する瞬間こそが、自分にとってのクリスタル・サウンズ最大の魅力なんですよ。
しかし、この頃はまだ完全人力写植だったはずなのに、帯の「昭和枯れすゝ木」とはなんなんだ…