黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はアグネス・ラムの誕生日なので

クラウン GW-3153~4

ビッグ・ヒット歌謡ベスト36 憎みきれないろくでなし/遠慮するなよ

発売: 1977年

ジャケット

A1 はーばーらいと (水谷豊)Ⓐ 🅱

A2 渚のシンドバッド (ピンク・レディー)Ⓑ 🅴→2/25

A3 帰らない (清水健太郎)Ⓒ 🅴→2/25

A4 昔の名前で出ています (小林旭)Ⓓ 🅰→21/4/3

A5 河のほとりに (谷山浩子)Ⓐ 🅰→2/25

A6 雨あがりのダウンタウン (アグネス・ラム)

A7 さすらいの道 (小林旭)Ⓑ 🅲→2/25

A8 コスモス街道 (狩人)Ⓐ 🅵

A9 おまえに (フランク永井)Ⓒ 🅰→9/18

B1 憎みきれないろくでなし (沢田研二)Ⓐ 🅳

B2 ターゲット (内藤やす子)Ⓒ

B3 気まぐれヴィーナス (桜田淳子)Ⓑ 🅰→2/25

B4 マイ・ピュア・レディ (尾崎亜美)Ⓒ 🅲→2/25

B5 カルメン'77 (ピンク・レディー)Ⓔ 🅳→10/4

B6 熱帯魚 (岩崎宏美)Ⓒ 🅱

B7 もう戻れない (桜田淳子)Ⓐ

B8 ひとり芝居 (布施明)Ⓒ 🅰→2/25

B9 北へ (小林旭)Ⓑ 🅰→10/4

C1 遠慮するなよ (清水健太郎)Ⓐ 🅲

C2 暑中お見舞い申し上げます (キャンディーズ)Ⓑ 🅱→2/25

C3 街角のラブソング (南沙織)Ⓒ

C4 フィーリング (ハイ・ファイ・セット)Ⓔ 🅳→10/4

C5 風来坊 (ふきのとう)Ⓐ

C6 恋まくら (殿さまキングス)Ⓒ

C7 風の子守唄 (五木ひろし)Ⓐ 🅱→2/25

C8 夜行列車 (森進一)Ⓑ 🅱→2/25

C9 季節風 (野口五郎)Ⓒ 🅲

D1 初恋の通り雨 (尾崎亜美)Ⓐ

D2 イミテイション・ゴールド (山口百恵)Ⓑ 🅴→2/25

D3 夢先案内人 (山口百恵)Ⓒ 🅳→2/25

D4 おんな港町 (八代亜紀)Ⓕ 🅱→10/4

D5 ひとあしお先に (豊島たづみ)Ⓒ

D6 S.O.S. (ピンク・レディー)Ⓑ 🅱→10/4

D7 恋愛遊戯 (太田裕美)Ⓐ 🅰→2/25

D8 恋歌 (八代亜紀)Ⓑ 🅱→2/25

D9 悲恋白書 (岩崎宏美)Ⓒ 🅱→2/25

 

演奏: クラウン・オーケストラ

編曲: 神山純Ⓐ、井上忠也Ⓑ、久富ひろむⒸ、小杉仁三Ⓓ、栗田俊夫Ⓔ、井上かつお

定価: 3,000円

 

実を言うと、数度の箱買いでクラウン・オーケストラ名義のアルバムがかなりの枚数増えたのだけど、案の定曲の被りが多くていちいちチェックするのも面倒だし、目標枚数を越えたのを確認した段階でそれらを全て予備盤に回すことにした(実はブルーナイト・オールスターズの1枚ものも幾つか、同様の理由で端折っている。その全てが小梅ちゃんジャケット故、見せたい気持ちはあるのだけど…)。辛うじて救われたのがこの盤だ。やはり、前後のアルバムと相当の曲が被っているのだけど、そうじゃない曲に特異なものがあるし、ジャケットもいい感じでさわやか。ただ、やはり箱買い盤の宿命か、状態がだめだめだし、かけっ放しで使う気にならない。ダブってる曲をDJで使いたい時なんて、他の盤を優先するのを余儀なくされる。ちなみに昔の名前で出ていますが出てくるのはこれで8枚目である(!)。少なくともあと12枚、この小杉仁三アレンジ版が入ってるアルバムがあるはずだ(汗)。

さて、1曲目から「はーばーらいと」。いくら勢いのあった水谷豊の初ヒットシングルとはいえ、これをトップに持ってくるのは相当冒険じゃ…盤の状態でダイナミックレンジがめちゃ狭まって聴こえるせいもあるけれど(元から曲を詰め込みすぎているから余計)、あまりにもレイジーな解釈で勢いつけのカラーがない(「愛の狩人」でスタートするよりはまだいい、か)。ただ、このサウンドがくせになりそうなのだ。井上陽水作曲というのが納得できる、のちの「リバーサイドホテル」の予感さえ感じさせる、クラウンの雰囲気作りのうまさが凝縮されたサウンド作り。気怠いギターとムーディなサックスに合わせて、ちょっぴりほろ酔い加減のむすめの声が、左のチャンネルで誘惑する。一部無茶して出してそうな箇所が、意図的なのかなんなのか、めちゃ耳元をくすぐる。これってリコーダーの高い音のかすれにも通じるんだよね…そんなこんなの間に、いとう敏郎的ギターが絡み始め、気怠くリズムを刻んでいたギターが間奏でここぞとばかりがんばり始める。その後のギターのメロも、オクターブ奏法を決めようとして時折危うくなったり、そんな演奏がめちゃ愛しい。名曲名演だなぁ。ちゃんとした音質で聴きたい。

その後、「例の曲」とまたも名曲名演の「河のほとりに」に続いて出てくるのは、当時社会現象化していたアグネス・ラムの歌手デビュー曲。弾厚作(加山雄三)が気合を入れて提供した曲で、これは演奏がどうのこうのよりも、取り上げたことに意義があると言いたい。別に妙なアレンジをしてるわけでもなく、ただオリジナルのイントロを奏でていたサックスの音色を、メインメロ本体に持ってきたのが効果的だ。そしてやっぱり、7年後に発売されたヴァン・ダイク・パークスの「Opportunity For Two」に、強烈に繋げたくなる(爆)。前作(いや前々作?)『暑中お見舞い申し上げます』のジャケットは、きっとアグネス・ブームに色気を見せた結果に違いない。

あとの非ダブり曲は、盤が弱っているせいもあってまともに語る気が失せる。「憎みきれないろくでなし」も、実際はもっとタフなサウンドで録られているかもしれないけれど、こんな状態のせいで飛びまくるし、いまいちパワー不足のギターの演奏しか伝わってこない。でも、タイトルフレーズのバックのコード付けが残念なのは元からしょうがない。他の盤にもどうせ入ってるだろうし、それにめぐり逢うのを期待するしかないか。ただ、どの曲にもクラウンらしい、積極的な軽さがあっていいとは思う。「街角のラブソング」は選曲・アレンジ共に鋭いし、「ひとあしお先に」なんて、口琴から始まりかなり妙なサウンド配合ぶりだし。それにしても、名曲「とまどいトワイライト」より前の、チャートインさえしてないこの曲、よく取り上げたなぁ。そこまで視野を広く持っていたのに、「銃爪」のクラウン盤がないなんて。あるとは思うけれど、「さよならを言う気もない」や「哀愁のシンフォニー」も見つからない。この2曲に関しては、他社盤も巡ってこない‥77年春に限って、歌無界に何かあったのだろうか。ヘンプ騒ぎとは関係ないと思うけど(そういえば、「気絶するほど悩ましい」もないな)。引き続き求め続けます…前者は確実にいいヴァージョンを一つ知ってはいるのだけど…