黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は 「アッコにおまかせ」放映開始記念日

大映 G-4002-D

new hits in autumn 何があなたをそうさせた/私生活 

発売: 1970年10月

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ジャケット

 

A1 何があなたをそうさせた (いしだあゆみ) 🅲

A2 X+Y=LOVE (ちあきなおみ) 🅲

A3 わたしだけのもの (伊東ゆかり) 🅲

A4 泣きながら恋をして (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅲

A5 さすらいのブルース (和田アキ子)

A6 愛こそいちずに (小川知子) 🅲

A7 命預けます (藤圭子) 🅴

B1 私生活 (辺見マリ) 🅳

B2 ロダンの肖像 (弘田三枝子) 🅲

B3 手紙 (由紀さおり) 🅲

B4 噂の女 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅵

B5 お嫁に行きたい (森山加代子) 🅱

B6 希望 (岸洋子) 🅳

B7 昨日のおんな (いしだあゆみ) 🅲

 

演奏: ザ・サウンズ・エース

編曲: 須磨あかし

定価: 1,500円

 

1970年、ディストリビューションをテイチクからコロムビアにスイッチ、再出発を図った大映レコード。結果的により地味な存在に追いやられ、派手なヒットは出せず仕舞いだったけれど、大胆に芸風を変えてきたことは、この歌無歌謡レコードの仕上がりからも容易に窺い知れる。計4枚リリースされたことが確認されている「New Hits」シリーズの第1作で、心なしか響きもテイチク色からコロムビア色へと衣替えしているようだ。アレンジャーは馴染みのない名前ではあるけれど、第1作から大胆なアプローチを試みている。ライナーで記されている通り、他のレコードでは滅多に使われていない、エレキ・サックス、エレキ・フルートを大フィーチャーしているのだ。

管楽器の電化といっても、それほどまでに大掛かりなものではなく、ピックアップからの出力を特殊なエフェクターに通して加工、アンプで再生するというもので、必然的にマイクで拾う音と違うカラーが出てくる。ある種のディストーションを通してオクターブ上ないし下の音を生成する、ジミヘンが多用した「オクタヴィア」と同じ原理のエフェクトであり、トーンの変化はそこまで大胆に行っていない。故に、こけおどし的効果はなく、全体のサウンドに程よく溶け込んでいる感じがする。やはり歌無歌謡、基本は慎重にといったところか。所々、プレイそのものが大胆な方向にはみ出すと、その分音色の変化も目立ってしまうところもあるけれど、それも個性というものか。「命預けます」のような仁侠的要素のあるメロディーをこなすと、かえって凄みさえ感じさせるエレキ・フルートの音色。「私生活」では一転してセクシーに迫る。息遣いよりアクセントの方が強調される、出音の構造故の感触だろうか。そういえば、男性ソロ・シンガーの曲だけ避けられているのも、思わせぶりかも。「生で勝負」の世界と思われたのかな(汗)。

大胆なサウンド故のロマンチシズムが異色の輝きを放つ1枚。昨今密かに話題を呼ぶエレキ・リコーダー=ELODYで歌無歌謡ってのもイケるかも。