黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は郷ひろみさんの誕生日なので

アトランティック QL-5034~5A 

華麗なるドラム・ベストヒット40 漁火恋唄・悲しみよこんにちわ

発売: 1972年11月

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ジャケット

A1 24000回のキッス (ゴールデン・ハーフ) 🅱

A2 悲しみよこんにちわ (麻丘めぐみ) 🅴

A3 春・夏・秋・冬 (後藤明)

A4 漁火恋唄 (小柳ルミ子) 🅳

A5 生まれかわれるものならば (いしだあゆみ) 🅱

A6 狂わせたいの (山本リンダ) 🅴

A7 虹をわたって (天地真理) 🅶

A8 小さな体験 (郷ひろみ)

A9 若草の頃 (小川知子)

A10 サラダ・キャンディ・オレンジ (平田隆夫とセルスターズ)

B1 恋の約束 (西城秀樹)

B2 同級生 (森昌子) 🅲

B3 死んでもいい (沢田研二) 🅱

B4 御案内 (ウイッシュ)

B5 あなたに賭ける (尾崎紀世彦) 🅳

B6 古いお寺にただひとり (チェリッシュ) 🅲

B7 放浪船 (森進一) 🅳

B8 ラヴ・ソング (井上順)

B9 恋の衝撃 (朱里エイコ) 🅱

B10 僕だけひとりぼっち (伊丹幸雄)

C1 夜汽車の女 (五木ひろし) 🅵

C2 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🅴→7/1

C3 哀愁のページ (南沙織) 🅷

C4 夜汽車 (欧陽菲菲) 🅱→4/30

C5 孤独 (和田アキ子) 

C6 ひとりじゃないの (天地真理) 🅺

C7 結婚しようよ (吉田拓郎) 🅷

C8 太陽の彼方 (ゴールデン・ハーフ) 🅳

C9 今日からひとり (渚ゆう子) 🅳→5/28

C10 嵐の夜 (にしきのあきら) 🅱

D1 恋の追跡 (欧陽菲菲) 🅷

D2 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子) 🅴→5/28

D3 ふりむかないで (ハニー・ナイツ) 🅲

D4 許されない愛 (沢田研二) 🅴

D5 誰も知らない (伊東ゆかり)☆ 🅲→7/4

D6 愛する人はひとり (尾崎紀世彦)☆ 🅱→7/4

D7 ちいさな恋 (天地真理)☆ 🅰→5/28

D8 友達よ泣くんじゃない (森田健作) 🅰→5/28

D9 涙 (井上順)☆ 🅰→5/28

D10 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅳

 

演奏: 市原明彦 (ドラムス)/ワーナー・ビートニックス

編曲: 原田良一、穂口雄右(☆)

備考: SQ方式4チャンネル・レコード

定価: 3,000円

 

歌無歌謡界でも最大級のリスペクトをもって扱われているHIROMI GOの誕生日、敢えて歌無歌謡的にはあまり目立たない2枚目のシングル「小さな体験」を取り上げたこのアルバムを引っ張り出してきました。72年、ワーナー・ビートニックス(+ブリリアント・ポップス77)の勢いは怒濤の如しで、1枚もののアルバム21作、2枚組を7作リリース。うち1枚もの4作と2枚組2作がドラムものでした。この2枚組には、当然のように1枚ものと同じテイクも多数収録されていますが、独自のセレクションもいくつかあり、ディープなリスナー(いたのか?)にはたまらない内容になっています。何せ、ドラムメインで40曲突っ走るのは並大抵の力じゃ無理だし、聴く方も相当の覚悟がいるはず。

個人的にはビートニックスのアルバムの中でも最も思い入れの強い『虹をわたって/死んでもいい』からもかなりの曲が流用されているので、そちらの方に温存したい話もいくつかありますが、とにかく飛ばす飛ばす。トップの、ゴールデン・ハーフにより蘇ったイタリアの古いヒット曲「24000回のキッス」からして快調すぎる。複数のマイクを使ってシャープに捉えられたドラム・サウンドをさらに2回重ね、あまりにも重厚すぎる音作りを試みているし、ギターも煽りまくり。悲しみよこんにちはは逆にメロウな雰囲気を地道に支える方に徹している。その次の「春・夏・秋・冬」なんて、殆ど記憶に残ってない曲だけど(泉谷しげるの曲が同時期だけど、当然異曲)、レゲエっぽいオルガンも入ったりしてなかなかかっこいい。と思えば、「漁火恋唄」ではパラドックス大爆発。どう凄いかは聴いてびっくり、だけど、これを走りっぱなしのアルバムにちゃっかり入れるところもまた、当時のワーナーの勢いの現れなのかも。以降も、もろフランソワーズ・アルディのアレな若草の頃や、厭世観がただならぬ「御案内」などをペースチェンジャーとして配しつつ、ひたすら走りまくるアトランティック・ドラム。「流浪船」など、のちの水谷公生&トライブ版「夫婦鏡」に通じる美学の萌芽さえ感じさせる演歌ロックも。何が一番凄いかというと「孤独」なのだが、これに関しては初出盤となる『虹をわたって/死んでもいい』を取り上げる日の主題に直結しているので、今日はノーコメントとします。

ジャケットいいですよね。誤字さえなければ、ですが(敢えて、本文内の曲名のみ修正してます)。添付された歌詞、「小さな体験」や「哀愁のページ」に一切漢字が使われてないのはどういう事の成り行きか、ミステリアスな部分もあります…