アトランティック L-6039A
華麗なるドラム・ベスト・ヒット20 雪あかりの町
発売: 1972年1月
A1 雪あかリの町 (小柳ルミ子) 🅷
A2 夜明けの夢 (和田アキ子) 🅳
A3 ちょっと待って下さい (ゴールデン・ハーフ) 🅳
A4 二つのギター (小山ルミ) 🅲
A5 愛があれば (湯原昌幸) 🅲
A6 誰も知らない (伊東ゆかり)☆ 🅲→7/4
A7 水色の恋 (天地真理)☆ 🅴→7/4
A8 君をのせて (沢田研二) 🅱
A9 さよならのロ笛 (加藤登紀子)
A10 なのにあなたは京都へゆくの (チェリッシュ) 🅲
B2 長崎慕情 (渚ゆう子) 🅵
B3 ノアの箱舟 (平山三紀)
B4 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅳→10/18
B5 潮風のメロディー (南沙織) 🅴
B6 雨の御堂筋 (欧陽菲菲) 🅶
B7 望郷子守唄 (高倉健) 🅳
B8 地球はひとつ (フォーリーブス)☆ 🅰→7/4
B9 お祭リの夜 (小柳ルミ子)☆ 🅳→10/25
B10 流れのブルース (森進一) 🅴
演奏: 市原明彦 (ドラムス)/ワーナー・ビートニックス
編曲: 原田良一、穂口雄右(☆)
定価: 1,800円
つい最近もテイラー・ホーキンスという巨星を亡くし、少しずつ地球上での輝きを失う一方のドラム王国。よよかみたいな逸材が育っているのはいいことだけど、いかなる方向にも対応できることもドラマーの強みであって欲しいと願う…このアルバムに針を落とすと、いきなり大胆に炸裂するフリーフォームなドラムサウンド。その影からクリスマスムード満点の鈴の音が忍び寄ってくる。「雪あかりの町」にまさかのイメージを投影する意表をつくオープニングだ。曲そのものはまったりと進行しながら、Bメロでベースが暴れ出し、1コーラスの完結に到達するかと思ったところで、またもドラムソロが炸裂。その後、再びBメロの冒頭に戻るのだ。ロマンティックとシュールな光景が交錯する不思議アレンジ。これこそワーナー・ビートニックスの真骨頂。
ドラムシリーズとしては2枚目にあたるもので、「華麗なるドラム・ベスト・ヒット」が冠されたものとしては記念すべき第1作。穂口雄右アレンジによる4曲は、『ドラム・テナー』で出た華麗なるシリーズ第1作からの流用で、さらに「お祭りの夜」は第1作からのリピート収録。この辺は特に力を入れて聴かせたかったためだろう。1曲目からダイナミックな「夜明けの夢」への転換、さらにロマンティックに揺り返す「ちょっと待って下さい」に至るが、同曲でさえ途中で突然変異的にムードが変わる。囁いていたフルートも、Bメロの一瞬だけ千鳥足的な響きに転じている。ソフトとハードの境界線を曖昧にする過激なアレンジだ。名曲「君をのせて」にも容赦しない、フリーキーなタッチを加味。オルガンの人の指の震えが伝わってきそうだ。「さすらいの口笛」ではまったりとしたノリの中、「ミラクル・ハーモニカ」を予感させる繊細なハーモニカをドラムが挑発。例の京都ディスソング「なのにあなたは京都へ行くの」では、主人公の複雑な感情を前作の「青空は知らない」で聴かれたのと同じ響きのリコーダーが繊細に表現する。フルートと同じチャンネルに入っているので、素早く持ち替えたのだろうか。吹き始めでちょっと指がもつれ気味で萌える…「長崎慕情」はまったりしすぎて、テイチクの「うーうー」ヴァージョンに負けてるな。同じベンチャーズの「雨の御堂筋」の方は、イントロのトランペットの響きがモーグ風だったり、サックスとオーボエの中間のようなメインメロの響き(いずれも多少ディストーションをかけているのかな)など、なかなか面白い仕上がりだ。健さんの「望郷子守唄」は、ハードコアなイントロに始まり尺八が先導していくサグな仕上がり。例の「キーッ」音は入っていず、ビブラスラップで代用しているが、その簡素化した響きが逆に凄みを演出している。というかドラムの存在感がほぼないというアナーキーさ。その後、より過激なアレンジの「地球はひとつ」が続くから、余計シュールだ。元ネタは「ジュディーのごまかし」だろうか。最後も番外地感たっぷりに「流れのブルース」で締める。あまりにも短すぎるが…。多種多様な楽器を取り入れ、従来のドラム盤の常識を打ち破るこの破天荒な構成こそが、ワーナー・ビートニックスの勝負所。2年かそこらで燃え尽きたのが惜しすぎる。