黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は大野真澄さん (ガロ) の誕生日なので

アトランティック L-6083A 

恋する夏の日・草原の輝き/華麗なるミラクル・ギター・ベスト・ヒット20

発売: 1973年7月

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ジャケット



A1 恋する夏の日 (天地真理) 🅰→4/1

A2 燃えつきそう (山本リンダ) 🅵

A3 草原の輝き (アグネス・チャン) 🅺

A4 くちべに怨歌 (森進一) 🅴

A5 ジェット最終便 (朱里エイコ)

A6 哀しい少女 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)

A7 出船 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅴

A8 傷つく世代 (南沙織) 🅰→4/1

A9 君の誕生日 (ガロ) 🅰→4/1

A10 あなたの灯 (五木ひろし) 🅳

B1 裸のビーナス (郷ひろみ) 🅰→4/1

B2 恋にゆれて (小柳ルミ子) 🅶

B3 赤い風船 (浅田美代子) 🅰→4/1

B4 渚にて (いしだあゆみ) 🅱

B5 かがやける愛の日に (尾崎紀世彦) 🅲

B6 ちょっとだけよ!タブー (ペレス・プラード楽団) 🅱

B7 劇場 (ちあきなおみ) 🅲

B8 春のおとずれ (小柳ルミ子) 🅳

B9 しのび逢い (尾崎紀世彦)

B10 愛愁 (いしだあゆみ)

 

演奏: ツウィン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス

編曲: 原田良一

制作: 大野良治/ミキサー: 平出誠

定価: 1,800円

 

ツウィン・ギターズ名義で出た6枚目に当たるアルバムで、いよいよワーナー・ビートニックスの終着駅も見えてきたかなと思える1枚。それにしても、「恋する夏の日」に針を落とした途端感じた既聴感ったら…おなじみのイントロに絡む独特のギター、ツウィン・ギターズ感満載と思いつつも、その心はやはり、トリオの『魅力のマーチ・小さな恋の物語』にあった。本盤では都合5曲、同アルバムに曲が流用されている。両社間の駆け引きにはまだまだ謎が多いのだけれど、とにかく現在の権利関係がどうなってるかが気がかりなのははっきりさせておきたい。その辺の答えは、大野良治さんが生きている間に是非聞いておきたかった…

さてアルバムは「燃えつきそう」に駒を進める。爽快なリズムに乗せてギターが冴えまくり、ファンシーなトーンでフルートやマリンバが色を添えるのだけど、クィーカが不在なので異質な感じが拭えない…「草原の輝き」は自社の貴重な財産の割に結構思い切りのいい解釈だ。この複雑な和声感覚を生かしたギターサウンドが、意外にもはまっている。「くちべに怨歌」も華麗なギター・オーケストレーションで軽妙なイメージに転生。一瞬メロトロンかと思わせるイントロ(本物のフルートも、ロングトーンを無表情で吹くとそんな感じになる!)で始まる「君の誕生日」は、ワーナー・ビートニックスとしては異例の長い演奏。と言っても3分半程度なのだが。「あなたの灯」で聴けるシンセっぽいギターも、ツウィン・ギターズならではの音だ。

「裸のビーナス」は、最近紹介したクラウンやソニーの盤に比べると真っ当な演奏だけど、なぜか最後の「ビーナス…ビーナス…」の部分を端折っている。「恋にゆれて」は異色の疾走感を伴うアレンジで、ここにもシンセ風ギターが彩りを。「赤い風船」はトリオ盤のラストを飾ったのと同じテイクで、爽快感いっぱい。それにしてもこの曲は名解釈が多いな。そして、ここにも「タブー」をサービス収録。クラウン盤と異なり、ガチなラテン・ヴァージョンの流用ではないので、独自感がある。ワウギターを使用してのエロさ演出は、根底にロックがあってこそ。隠れがちな名曲を交えつつ、最後まで一気に聴かせてしまうギター・マジック。4チャンネルから解放されて、通常ステレオでもくっきり冴えを演出するミックスも素晴らしい。