黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は西田敏行さんの誕生日なので

コロムビア KZ-7115 

軽音楽 ’81オール・ヒット・ポップス

発売: 1981年11月

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ジャケット

 

A1 モリーグラス (堀江淳)Ⓐ

A2 まちぶせ (石川ひとみ)Ⓐ

A3 守ってあげたい (松任谷由実)Ⓑ 🅱

A4 もしもピアノが弾けたなら (西田敏行)

A5 スローなブギにしてくれ (南佳孝)Ⓑ

A6 ハリケーン (シャネルズ)Ⓐ

A7 青年の樹 (谷村新司)Ⓐ

A8 サチコ (ニック・ニューサ)Ⓑ

A9 ルビーの指環 (寺尾聰)Ⓒ 🅲

B1 サヨナラ模様 (伊藤敏博)Ⓐ

B2 涙のスウィート・チェリー (シャネルズ)Ⓐ

B3 リバイバル (五輪真弓)Ⓐ

B4 不良少女白書 (榊原まさとし)Ⓐ

B5 すみれ色の涙 (岩崎宏美)Ⓐ

B6 川の流れを抱いて眠りたい (時任三郎)Ⓒ

B7 君に捧げるほろ苦いブルース (荒木一郎)Ⓒ

B8 長い夜 (松山千春)Ⓐ

B9 群青 (谷村新司)Ⓐ

 

演奏: ラビー・エイズ・オーケストラ

編曲: 前田俊明Ⓐ、山田良夫Ⓑ、山田年秋Ⓒ

定価: 2,000円

 

81年になっても、息絶えていなかった歌無歌謡。ジャケットを飾る、MONO柄の靴下。今じゃもう真顔で履けません…表向きには明大前のモダ~ン・ミュージックで最新鋭のニューウェイヴ盤を漁り、自分なりにやばいサウンドを実践しようとしていた高1の自分ではあったけど、当時「ザ・ベストテン」にランクインしていた曲とかを聴くと、未だに胸騒ぎもしてしまうわけで。そんなセンチメンタリズムを凝縮した内容ではあるけれど、所謂「超アイドル」の曲は排除されており、「サチコ」という微妙な線上の曲はあるものの、演歌の領域に属するものもほぼ皆無。いわば、メインストリームに近いニューミュージック、みたいなものを中心に選曲されている。というか、11月の発売だからイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」が入っていてもおかしくないはずなのだけど、「超アイドル」に属すると判断されてはねられたのだろうか。それにしてもこの楽団名、どこから命名されたのか不明ではあるけれど、80年代中期以降ならまず考えられない名称だ(他意無し)。

個々の曲に関しては想い出が優先しそうなので言葉を控えるとして、70年代歌無歌謡を彩った冒険性は排除され、聴きやすいサウンドで統一されている。「まちぶせ」は三木聖子時代にクラウンで歌無歌謡化されており、存在的にレアだったが(レコードの価値的には別問題として)、ここでもアレンジ的にはそこまでいじられてはいず、面白い比較の対象となるわけでもない。もう1曲、リメイクものとしては「すみれ色の涙」があり、結果的に原曲メーカーからの恩返し的選曲になっている。多くの曲でハーモニカがフィーチャーされているのが特徴的で、寧ろ70年代には鍵ハモの方が多用されていたから、ここでの活躍はなかなか新鮮な印象だ。もっとも、ワーナー・ビートニックスにより大胆なフィーチャー盤があり、それに比べちゃ地味だけれど。

この名義では翌年もう1枚ヒット集大成的アルバムが出ており、そちらはもっと凄い作品になっている。やはり、歌無歌謡の火は消してはならなかったのだ。