黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1980年と2020年を結ぶもの

アポロン KSF-1276 (カセット)

最新ベスト・ヒット歌謡20

発売: 1980年

ジャケット

A1 狂った果実 (アリス) 🅱

A2 やさしさ紙芝居 (水谷豊) 🅱

A3 漂泊者(アウトロー) (甲斐バンド)

A4 哀愁でいと (田原俊彦) 🅳

A5 How Manyいい顔 (郷ひろみ)

A6 トゥナイト (シャネルズ) 🅱

A7 恋の綱わたり (中村晃子) 🅱

A8 Yes・No (オフコース) 🅳

A9 ドゥー・ユー・リメンバー・ミー (岡崎友紀)

A10 蛍火 (小柳ルミ子)

B1 いまのキミはピカピカに光って (斉藤哲夫) 🅱

B2 青い珊瑚礁 (松田聖子) 🅳

B3 順子 (長渕剛) 🅲

B4 恋月夜 (森進一)

B5 ダンシング・オールナイト (もんた&ブラザーズ) 🅴

B6 雨の慕情 (八代亜紀) 🅲

B7 その日海からラプソディ (加山雄三)

B8 RIDE ON TIME (山下達郎) 🅲

B9 ロックンロール・ウィドウ (山口百恵) 🅲

B10 別れても好きな人 (ロス・インディオス&シルヴィア) 🅲

 

演奏: ニュー・ポップス・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 2,500円

 

ますますカセットネタの増加が止まりません。と言えども、歌もののパチ歌謡テープの価値を無茶に高めようという風潮も一部であって、そっち方面も気になる者としては複雑な気持ちがあるのですが、たまに出てくるマイナーレーベルの歌無テープに、とんでもない選曲があったりすると、それだけで目の色が変わったりして…そんな訳で、早くも次の復活月間に向けてネタが蓄積され始めています。いつになるかはまだ言えません…

老舗アポロンから出たテープを語るのはこれが2本目。ワーナー・ビートニックスが活動を停止した74年以降、定期的に出しているはずなのだけど、全容を掴むことが未だに出来ていず。まともなレーベルだった分、怪しいレーベルのテープのように売上管理が有耶無耶になることもなく、デッドストックがどこかに埋蔵されてるとか、忘れた頃に激安で処分されたものが中古市場に流れるという可能性が考えにくいのが、あまり姿を見せない最大の理由なのではと考えているのだけど、まぁとにかく安く出てきたら買いたいものです。特に75年前後のものは。

これは80年夏あたりの代表的ヒットを集めたもので、それなりに耳あたりの良いサウンドでドライブの邪魔をしない。かといって、カラオケ対応にも傾いていず、随所にフィーチャーされているコーラスも歌のバックというニュアンスが薄い。さすがに「トゥナイト」のガチドゥーワップ指数低いコーラスには笑ってしまうが。今やシティポップ界隈で超人気曲となっている「ドゥー・ユー・リメンバー・ミーの選曲が目を引くけれど、「螢火」「恋月夜」もなかなかなめられない曲だし、もはやB面曲がみんな大好き的ステータスに上り詰めている「その日海からラプソディ」も貴重な選曲。気になるRIDE ON TIMEは演奏全体の出来がなかなかで、チージーなシンセや肩の力を抜いたコーラス、唐突な間奏でのフルートの叫びも負の要素になっていない(この曲や「Yes・No」のコーラスが歌詞を歌ってないところが、妙な意味で純歌無歌謡のいいところを引きずっているな…)。狂った果実「順子」にフィーチャーされているハーモニカが純情いっぱいで、今作でのユニークなアクセントになっている。対して「ロックンロール・ウィドウ」では、ガチなロックサウンドにチージーなシンセが不釣り合いすぎで、笑うしかない。

そして、やはり「漂泊者(アウトロー)」。ここ数年の世間の動きを考えると、この曲は40年早かったんだなと一頻り思うけど、歌無で聴くと余計新型キャデラック感が際立つ(瀧汗)。