黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は山下毅雄さんを偲んで

アトランティック L-6021A

長崎から船に乗って ビッグ・テナー・ベスト・ヒット20 

発売: 1971年9月

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ジャケット

 

A1 長崎から船に乗って (五木ひろし) 🅲→7/4

A2 いつもなら (朝丘雪路) 🅳

A3 青空は知らない (堺正章) 🅳

A4 あなたと私の街だから (大木英夫・二宮善子) 🅱

A5 ポーリュシカ・ポーレ (仲雅美) 🅱

A6 さよならをもう一度 (尾崎紀世彦) 🅱→7/4

A7 ひとりの旅 (あおい輝彦)

A8 さすらいのギター (小山ルミ) 🅲

A9 自由に歩いて愛して (PYG)

A10 17才 (南沙織) 🅰→7/4

B1 お祭りの夜 (小柳ルミ子) 🅱→7/4

B2 おもいでの長崎 (いしだあゆみ) 🅱→7/4

B3 夢でいいから (中島まゆこ)

B4 男のこころ (由紀さおり) 🅳

B5 星のメルヘン (ダーク・ダックス) 🅱

B6 涙から明日へ (堺正章) 🅰→7/4

B7 愛の巡礼 (藤圭子) 🅱

B8 川の流れのように (奥村チヨ) 🅲

B9 甦る明日 (岸洋子) 🅲

B10 私という女 (ちあきなおみ) 🅱

 

演奏: 三笠輝彦 (テナー・サックス)/ブリリアント・ポップス77

編曲: 田辺信一

定価: 1,800円

 

10月25日紹介の『ビッグ・ドラム・ベスト・ヒット』と対をなす、ワーナー・ビートニックスの「華麗なる~」路線の魁となる盤。ブリリアント・ポップス77名義の初登場アルバムでも当然ある。12曲をドラム盤と重複させつつ、ムードの王道たるテナーの唸りで好コントラストを出しており、かつワーナーらしい洗練されたタッチを加えて新鮮な聴後感を誘き出す。さりげなくジャズっぽさを出しながらメロディを軽くこなすところに、今後の大胆な展開の予感も出ていて、ビートニックス・マニアとしては胸騒ぎの1枚。「あなたとわたしの街だから」なんて意外な曲もポップに駆け抜けているし、多少軽くなっているとはいえ「自由に歩いて愛して」もエモさを失わず、決して落胆させない出来だ(これがドラム盤に選曲されなかったのはどうしてだろ)。

本盤で無視できない選曲は「夢でいいから」いしだあゆみのシングル「太陽は泣いている」のB面で68年初出以来、筒美京平絡みのアーティストに愛唱され続けた名曲であり、ここでの選曲及びアレンジは71年6月出た中島まゆこ盤に誘発されたものと思われる。若干テンポが上がったせいで、後に浅田美代子がアルバムで取り上げたヴァージョンに印象が近づいているが、かなりフェイクが加わったメロディこなしをしていて、Bメロなんて原型を全く留めてない。隠れ名曲故別に構わないと思ったのだろうか、それに気を取られて間奏のメロディが思いっきり間違って演奏されているのをスルーしがちになってしまう。あまり責めたくないけれど、名曲すぎる故に、ね。なお、いしだあゆみ盤もこの頃、こっそりA面に昇格して再プロモーションされたのはあまり知られていない(皮肉にも、中島まゆこ盤にもB面だった「見知らぬ国へ」をA面に昇格したジャケットが存在している)。

サックスの思いっきりの良さすぎるプレイで曲本来の魅力が霞む場面も多く見られるにせよ、出発点としては上出来なアルバムだ。