黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1975年、今日の1位は「あの日にかえりたい」

クラウン GW-3137~8 

ビッグ・ヒット・フォーク ベスト32

発売: 1977年

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ジャケット

 

A1 あの日にかえりたい (荒井由実) 🅵

A2 シンシア (吉田拓郎かまやつひろし)Ⓑ

A3 俺たちの朝 (中村雅俊)Ⓐ 🅰→10/4

A4 心もよう (井上陽水)Ⓒ 🅴→6/21

A5 花嫁 (はしだのりひことクライマックス)Ⓓ 🅷

A6 ふれあい (中村雅俊)Ⓔ 🅳

A7 わかって下さい (因幡晃)Ⓐ 🅲→6/15

A8 白い色は恋人の色 (ベッツイ&クリス)Ⓓ 🅵

B1 揺れるまなざし (小椋佳)Ⓐ 🅱→10/4

B2 結婚するって本当ですか (ダ・カーポ)Ⓑ 🅳

B3 時には母のない子のように (カルメン・マキ)Ⓓ 🅰→5/3

B4 私は泣いています (りりィ)Ⓑ 🅴

B5 俺たちの旅 (中村雅俊)Ⓐ 🅳→6/15

B6 風 (はしだのりひことシューベルツ)Ⓓ 🅼

B7 誰もいない海 (トワ・エ・モア)Ⓓ 🅱→6/14

B8 なごり雪 (イルカ)Ⓐ 🅲→6/15

C1 どうぞこのまま (丸山圭子)Ⓕ 🅲→10/4

C2 春うらら (田山雅充)Ⓖ 🅰→6/15

C3 闇夜の国から (井上陽水)Ⓗ 🅱→11/28

C4 シクラメンのかほり (布施明)🅶→6/30

C5 神田川 (かぐや姫)Ⓒ 🅳→6/21

C6 或る日突然 (トワ・エ・モア)Ⓓ 🅹

C7 精霊流し (グレープ)Ⓑ 🅵

C8 あなた (小坂明子)Ⓔ 🅷

D1 青春時代 (森田公一とトップギャラン) 🅲→10/4

D2 我が良き友よ (かまやつひろし)Ⓐ 🅵

D3 想い出まくら (小坂恭子)Ⓐ 🅰→6/30

D4 22才の別れ (風)🅲→6/30

D5 愛する人へ (南こうせつ) 🅰→10/4

D6 「いちご白書」をもう一度 (バンバン)Ⓐ 🅴

D7 学生街の喫茶店 (ガロ)Ⓙ 🅱→6/18

D8 あの唄はもう歌わないのですか (風)Ⓐ

 

演奏: クラウン・オーケストラ

編曲: 安形和巳Ⓐ、原田良一Ⓑ、青木望Ⓒ、福山峯夫Ⓓ、新井英治Ⓔ、神山純Ⓕ、久富ひろむⒼ、さいとうとおるⒽ、井上忠也Ⓘ、水上卓也

定価: 3,000円

 

クラウンも出してました、インストによるフォーク・アンソロジー。徳間/ハーベストの『フォークの旅』の向こうを張ってか、69年あたりの曲にまで遡っての便利な選曲ながら、曲順に連続性を持たせず、いつものクラウンの歌無歌謡アルバムを聴いてるのとほとんど変わらない印象をもたらす。問題なのは、74年以前の曲の全てが当時のオーセンティックなヴァージョンで収録されているのにもかかわらず、演奏者名義が全て「クラウン・オーケストラ」で統一されていることだ。オーケストラ時代常連組のⒶⒺⒻⒼⒾ以外のアレンジャークレジットは要注意であり、クラウン音源をめちゃ聴き込んでる人でないとあまり気にならないと思うけど、自分はめちゃ気になるのである(汗)。

オープニングの「あの日にかえりたい」は、当然従来何度か「オーケストラ」のアルバムに登場しているヴァージョンで、たまたま当ブログで語るのが初めてなだけである(汗)。耳あたりのいいギターで安心して聴けるなと思いきや、2コーラス目で得体の知れないキーボードの音が耳を掻き乱す…エフェクトのかけ方もボリュームコントロールも、実にトリッピーで、このムーディな曲を異次元へと導いてしまう。続く「シンシア」及び「結婚するって本当ですか」「精霊流しは、水谷公生&トライブ名義で2枚リリースされたアルバムの最初の方『追憶/ギター・ヒット歌謡ベスト16』から持ってこられたヴァージョン。こういうの、気付いてない人にとっては困りますよね…「精霊流し」のトリッピーなギターは聴きものだけど、アルバム本体を取り上げるまで多くを語らないことにしておきます…。

「花嫁」も明らかに、ありたしんたろうとニュービートの音だし。ドラムが一方的に走りまくっているが、ユニオン・ヴァージョンの破壊的演奏には負けるし、「中の人」がビクター・ワールドで演ったヴァージョンの方がずっと正統感ありますしね(10/16参照)。その前の「心もよう」からして走りまくりのありたヴァージョンだし、2曲続けるのもどうかと思いますが。「白い色は恋人の色」は実に長閑な演奏で、70年代中期ノリの中に投げ入れられると異色。これはあらおまさのぶヴァージョンだろうか。「風」はテディ池谷クインテットあたりかな。「或る日突然」はクラウンの中では比較的レアな方の、飯吉馨のチェンバロをフィーチャーしたテイクで、シャープな響きがもっと聴きたい欲をそそる。この辺の曲を、「四季の歌」のクラウン・オーケストラ・ヴァージョンみたいな感じで焼き直すだけでも、新鮮な印象が与えられたと思うのだが、やっぱありものを使って済ませたい主義だったんでしょうか。最終的にはごちゃ混ぜな曲順の中から雑多な風景が浮かび上がり、芸能音楽としてのフォークの一側面を浮き彫りにしてみせる混沌の1セットだ。