黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

ロマンスに笛は要らないなんて言わないで

コロムビア KZ-7029

新版 フォーク ロマンチック・ムード

発売: 1975年7月

ジャケット

A1 22才の別れ (風) 🅹

A2 結婚するって本当ですか (ダ・カーポ)☆ 🅴

A3 精霊流し (グレープ) 🅺

A4 君の誕生日 (ガロ)☆ 🅺

A5 岬めぐり (山本コウタローとウイークエンド) 🅳

A6 白い一日 (井上陽水)☆ 🅲

A7 神田川 (かぐや姫)☆ 🅼

B1 バスが坂道を降りてくる (ダ・カーポ)

B2 追伸 (グレープ)☆ 🅱

B3 妹 (かぐや姫) 🅲

B4 あなた (小坂明子)☆ 🅽

B5 夕暮れ時はさびしそう (NSP)☆

B6 夜汽車の音は遠い思い出 (宿屋の飯盛)

B7 襟裳岬 (森進一) 🆂

 

演奏: コロムビア・フォーク・アンサンブル

編曲: 小杉仁三、池多孝春(☆)

定価: 2,000円

 

16トラック・マルチ録音を売りに一挙10枚発売された「日本のメロディ・シリーズ」の1枚。唯一、超コンテンポラリーな内容と言えるフォーク曲を集めたもので、既存のヴァージョンは採用せず、全て録り下ろし。最新技術を高品質の一環としてアピールするには、敢えて冒険的方向に行かないことを選択したのか、まぁそんなもんかという感想しか出てこない。国文社の『フォーク・ムード』のような衝撃や、違った意味でラブリーな要素を期待しすぎちゃいけないんだよね。確かに、ストリングスの奥深さや、ギターの響きがシャープになっているところとかに気合は感じるのだけど、『ギターの秘密』みたいに目の前にある録音環境で精一杯やってみましたというニュアンスが感じられる方が愛しいし、アレンジ面でも例えば岬めぐり「夕暮れ時はさびしそう」のイントロとか、エレピで奏でられたりしてるし。後者なんてめちゃ苦しそう…まぁ、後にクラウンで50回以上リサイクルされた「昔の名前で出ています」を手掛けた小杉氏や、ユピテルの「メロトロン襟裳岬」の衝撃が生々しい池多氏の手堅い手腕であれば、オーディオ的特性とも相性バッチリと読まれたんだろうなと。このシリーズを10枚、一気に制作したとなれば、時間的焦りも必需だったのであろうが。こんな中に1曲、激烈な自社推し曲「夜汽車の音は遠い思い出」がある。この選曲に胸熱になりそうな人は、自分の周りには多分1名しかいないはず(汗)。蛇足ですがこのアルバムと同時期にリリースされた早すぎたオリジナル・カラオケ集『ヒットに挑戦!Vol.1』(KW-7059)には、なんとこの曲の純カラが収録されています。これは激レア盤でしょうねきっと。

純フォーク的アレンジに回帰した襟裳岬に達すると、やっぱメロトロンが恋しいなと池多アレンジ盤に向かいたくなるのです…