コロムビア ALS-4460
悲しみは駆け足でやってくる/いいじゃないの幸せならば
発売: 1969年11月
A1 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅼
A2 おんな (森進一) 🅸
A3 人形の家 (弘田三枝子) 🅹
A4 まごころ (森山良子) 🅹
A5 私もあなたと泣いていい? (兼田みえ子)
A7 星空のロマンス (ピンキーとキラーズ) 🅶
A8 美しい誤解 (トワ・エ・モワ) 🅱
B1 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅹
B2 花と涙 (森進一) 🅸
B3 真夜中のギター (千賀かほる) 🅱
B4 恋泥棒 (奥村チヨ) 🅸
B5 禁じられた恋 (森山良子) 🆀
B6 今日からあなたと (いしだあゆみ) 🅵
B7 恋の奴隷 (奥村チヨ) 🅹
B8 フランシーヌの場合 (新谷のり子) 🅺
演奏: 稲垣次郎 (テナー・サックス、フルート)/木村好夫 (ギター)/コロムビア・ストリングス
編曲: 河村利夫
定価: 1,500円
今回のアンコール月間はとにかく「69年もの」が豊作で、代表的ヒット曲のヴァージョンカウントが劇的に増加。特に「恋の奴隷」が半端ない。これで年度別カテゴリでずっとトップだった72年に一気に差をつけることになりそうだ。出たアルバムの絶対数から考えると、まだまだではあるけど。
コロムビアでは、洋楽部署扱いで新たにスタートしたHS品番と、新レーベルのデノンを含め、社内ライバル意識も活性化したため発売点数が圧倒的に増え、ヴァラエティも豊富になった。王道路線を躍進していたALS品番扱いのアルバムも、一気に洗練度が加速。従来メインだった「ゴールデン・スターズ」がいつの間にか消滅した。このアルバムでは、好夫ギターと稲垣サックスを軸にストリングスを加え、親しみやすいサウンドで69年のエレガンスを綴ってみせる。最近になって、HS品番で出たエディ・ハート名義のアルバムが手に入ったのだけど、どうやらこれも好夫仕事だったようで、あまりにも多くのアルバムを氾濫させたくないという罪滅ぼしの気持ちもあったのだろうか?そのアルバムとも2曲共通しているが、演奏のタッチにそこまで差はない。一聴して場末ムードのようで、実は途轍もなく芯がしっかりした楽曲こなしがじっくりと味わえる。森進一の2曲だけ場違いと思いきや、そこまで違和感ないし。エレガントさにとろけそうな「まごころ」にチージーな音で食い込んでくるオルガンなどに、かえって妙な場末感を感じる位だ。
今まで全く出てこなかったのが不思議な「私もあなたと泣いていい?」のドラマティックさ、執拗に好夫フレージングをキメまくる「ローマの奇跡」など、職人芸も堪能でき(むしろ「おんな」に好夫の影が全くないのが不思議)、わかりやすく69年のカラーを習得できる。随所に聴かれるフルートのオブリに、やっぱこの人は「夢で逢えたら」を演った人だなと改めて感動せずにいられない。しかし「真夜中のギター」、この盤で2つ目の上、知る限り他社の歌無盤がないのが不思議。大ヒットしたのにね。恐らく専属作家制の名残りがあったせいと推測するけど(「三百六十五歩のマーチ」の場合も同様かも)。後に著名な歌ありカバー盤を出したテイチク(高田みづえ)やビクター(UA)も、当時は単にそれを恐れていたのだろうか?