Mamie Is Blueもポリドールだけど
ポリドール MR-3195
伊部晴美ゴールデン・ギター マミー・ブルー/愛する人はひとり
発売: 1971年11月
A1 マミー・ブルー (ポップ・トップス/ファミリー・ミュージック・ストア、他) 🅲
A2 望むものはすべて (ヒデとロザンナ)
A3 ゴールデン・ハーフのマンボ・バカン (ゴールデン・ハーフ)
A4 お世話になりました (井上順) 🅱
A5 潮風のメロディー (南沙織) 🅶
A6 涙から明日へ (堺正章) 🅴
A8 シェリーに口づけ (ミッシェル・ポルナレフ) 🅱
B2 雨の御堂筋 (欧陽菲菲) 🅻
B3 雨のバラード (湯原昌幸) 🅶
B4 お祭りの夜 (小柳ルミ子) 🅺
B5 長崎から船に乗って (五木ひろし) 🅺
B6 恋人もいないのに (シモンズ) 🅲
B7 長崎慕情 (渚ゆう子) 🅸
B8 みなと恋唄 (青江三奈)
演奏: 伊部晴美/ポリドール・オーケストラ
編曲: 伊部晴美
定価: 1,700円
71年の世界的大ヒット曲「マミー・ブルー」には何故か、人に言いたくない理由で異常なくらいの執着心を抱いていた時期がある。何種類出たかわからない「本命盤」シングルのうち9枚を所持しており、その全てを同じイベントで立て続けにスピンしたこともあるくらい(汗)で、名曲とかそういう次元を通り越したものになっている。これだけ流行ったんだからインスト盤も大量に作られ、そのうちの二つは「歌謡フリー火曜日」で紹介済み。洋楽をテーマにしたアルバムなら、当時存在した全てのレコード会社が出した盤に入っているのは確実なので、今から集めあげる余地はきっとあるはず(汗)。
そんな「マミー・ブルー」を表題曲&トップに持ってきておきながら、主な収録曲は歌謡曲という特殊な1枚で、イタリアの歌手イヴァンナの盤を「イタリーの本命盤」として出したポリドールが、その盤に乗じてか送り出したもの。発売した月も一緒なので、前月に出てオリコン2位に達したポップ・トップス盤の様子を伺いつつ、完璧に相乗効果を狙ったはず。ちなみに日本盤カヴァーの中では、不気味なエコー効果を生かしサイケの領域にまで達してしまっている異色グループ、ファミリー・ミュージック・ストアによる東宝盤が出色の出来。このアルバムは他にも、ソフィア・ローレンの古典曲をゴールデン・ハーフが焼き直した「マンボ・バカン」、宝塚からお色気に転じた女優・川村真樹が歌うカヴァー盤がひっそり送り出されている「涙のハプニング」、そしてアイドル歌手のアルバムでも何度か取り上げられている「シェリーに口づけ」と、取り上げられた洋楽曲の全てが歌謡曲にゆかりが深いものになっているので、もう「純・歌無歌謡アルバム」でいいんじゃないかと。
安定の伊部サウンドではあるけれど、洋楽テイストを強める為か全体的に派手目の音作りになっていて、特にほとんどというか全ての曲でギター以上に存在感を見せつける女性コーラスの威力がすごい。「マミー・ブルー」は軽いノリの中で挨拶代わり。一番高いパートの声の張りきりが目立っているが、ファミリー~盤の怪しさや、テイチク歌無盤のヘロヘロさに慣れた身には物足りないかも。「マンボ・バカン」は妙に張りきりすぎ、時に空回りして笑えるところもあるが、ゴールデン・ハーフにはない影の部分が露呈し快感に転じている。続く2曲の筒美作品にも、曲本来の魅力に飲み込まれず絶妙なカラーを加えてる。これだけがんばってるのに、個別クレジットを与えないなんて。せめて「ハルメッツ」とでも命名しておきたいもので、その歌声がないとほとんどの曲が腑抜け同然になりそう…いや、他のパートもかなりがんばっているけれど。特にフルートと鍵盤がもたらすさわやかさは、色気と無縁の乙女色をにじみ出す。「潮風のメロディー」のフルートなんて絶品だし、「シェリーに口づけ」ではメロトロンの代わりにエレピが、ちょっとこけつつもがんばっている。エレビとフルートがユニゾンする部分は、何故かリコーダーを幻聴するし。お互いの美味しいところが調和すると、余計美味しくなると行ったところか。「長崎から船に乗って」や「みなと恋唄」も、音の魔法で本来持つ盛り場色が希薄になり、全体の流れに溶け込んでいる。そんな中、御大はあくまでも慎重に余裕のプレイ。音全体の監督としての個性を感じるには、まさに格好のアルバムだ。ジャケの方、露出度や光加減は「もろ」色希薄ではあるけれど、どうしてもリスクは避けられず、裏を載せておきます(汗)。どうか、歌無歌謡のジャケットにまでケチをつけないで下さい、過ぎた昔のことですから(誰に言ってる)。