黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は加瀬邦彦さんの誕生日なので

ユピテル/博光 RH-9

ヒット歌謡ベスト16

発売: 1974年

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ジャケット

A1 追憶 (沢田研二) 🅵

A2 みれん (五木ひろし) 🅰→4/9

A3 おんなの運命 (殿さまキングス) 🅰→4/9

A4 うそ (中条きよし) 🅸

A5 ひと夏の経験 (山口百恵) 🅵

A6 ポケットいっぱいの秘密 (アグネス・チャン) 🅴

A7 精霊流し (グレープ) 🅳→10/22

B1 積木の部屋 (布施明) 🅲

B2 傷だらけのローラ (西城秀樹) 🅳

B3 恋は邪魔もの (沢田研二) 🅱→5/9

B4 あなたにあげる (西川峰子) 🅰→4/9

B5 私は泣いています (りりィ) 🅶

B6 愛ひとすじ (八代亜紀) 🅶

B7 恋のアメリカン・フットボール (フィンガー5) 🅴

B8 告白 (野口五郎) 🅱

 

演奏: ザ・サウンズ・エース

編曲: 無記名

定価: 記載なし

 

私信…ザ・ワイルドワンズの曲を収録した歌無盤が底を尽きてしまいました…慎重にスケジュール配分したつもりだったのに…というわけでジュリーの2曲を収録した盤を選びました。こんな情勢でも、加瀬さんや加藤和彦さんの命が絶たれた日のことを思うと、今の比でないほど胸が震える。これが音楽を生きる者の性なんだと。

ユピテルのRH品番、博光ディストリビュート盤の1枚ですが、レーベルを見るとYL-2003という市販盤のスタンパー使用であることが表示されており、品質的には充分市販クオリティ。ただ、15曲しか入ってないのに『ベスト16』だったり、ずぼらな仕事ぶりも露呈している。別に1曲削った形跡もなさそうなのに。博光盤にしては市販盤寄りのジャケットだし。

トップの「追憶」はやはり、6日前紹介の水谷公生&トライブヴァージョンと比べてしまうけれど、やはり場末感は避けられないながらなかなか力が入った音作り。極端にエフェクトがかまされたギターが、この世のものでなさを醸し出す。1コーラス演奏後、直ちにエンディングに突入するが、そこからが相対的に長く続いてるのもユニーク。続く3曲は、11月10日紹介した『大正琴の真髄』と同じバックトラックを使用し、メインメロ(一部その他も含む)をギターやサックスに置き換えたヴァージョン。というか、こちらの方が先のはず。B面の「あなたにあげる」「愛ひとすじ」もそうだ。特に「うそ」にミラクルサウンズと同じカラーが現れており、この頃から東宝との音源共有はあったのかも…と思って、「演歌大全集」ヴァージョンを引っ張り出して聴いたら、そのまさかのまさか…スチールの代わりに山内さんの京琴が、サックスの代わりに村岡さんの尺八が入っている。即ち、この曲には同じベーシックトラックから、3種類のヴァージョンが作られているということだ!うそのような本当の話。念のためにと「愛ひとすじ」も聴き比べたら、やっぱり同じケース。まじでどうなってるのだ…

まさかの演歌ミステリーゾーンを抜けたら、小気味よいアイドル曲を経由して怨念の坂精霊流しに到達。『フォーク歌謡ベスト・ヒット』のジャケの怖さが、どの盤で聴いても脳裏をかすめる。B面も適度にポップで走った演奏が続くが、ノリが平坦だ。「恋は邪魔もの」はさりげなくモーグ入りで、全体の流れの中ではいいアクセントになっている。ドラムがやっぱ岡山和義っぽいプレイだなぁ、とAX-4012盤『最新歌謡ヒット』を引っ張り出して聴いたら、案の定。これもだ…東宝盤の方がマスタリングがしっかりしていて重厚なサウンドなので、同じテイクであることを全く感じさせなかった。あーこわ。この課題は、今後さらに突き止める必要がありそう。まさか、最後の2ヶ月間に突入して初めて、この事実に気づくことになるなんて…