黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は松崎悦子さん(チェリッシュ)の誕生日なので

CBSソニー SOLH-53 

歌謡ワイド・スぺシャル

発売: 1974年7月

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ジャケット

A1 ひと夏の経験 (山口百恵) 🅶

A2 激しい恋 (西城秀樹) 🅳

A3 もう一度 (小坂明子) 🅴

A4 さらば友よ (森進一) 🅶

A5 黄色いリボン (桜田淳子) 🅲

A6 今日も笑顔でこんにちは (森昌子) 🅱

A7 透きとおった哀しみ (あべ静江) 🅱

A8 紅い花 (五木ひろし) 🅲

A9 ひとり囃子 (小柳ルミ子) 🅳

A10 ふたりの急行列車 (チェリッシュ) 🅳

B1 夏の感情 (南沙織) 🅲

B2 君は特別 (郷ひろみ) 🅴

B3 夫婦鏡 (殿さまキングス) 🅸

B4 妹 (かぐや姫) 🅱

B5 夢を抱く女 (ぴんから兄弟) 🅱

B6 うそ (中条きよし) 🅵→11/3

B7 わかれ花 (渡哲也) 🅳 

B8 恋のアメリカンフットボール (フィンガー5) 🅵

B9 虹の架け橋 (浅田美代子) 🅳

B10 恋と海とTシャツと (天地真理) 🅲

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 高島明彦、いしだかつのり、池田正城

定価: 1,700円

 

前作(SOLH-39)までの「正方形枠内写真」レイアウトを脱し、写真の選択的にもちょっと色気を出して軌道修正を図ってみましたという感じのクリスタル74年夏盤。裏ジャケなんて煙草持たせてるじゃありませんか。純潔アイドル路線をひた走るソニーがそれでいいんですか?歌詞カードを見ると、前の持ち主がご丁寧にも歌手名を記入してくれていて、多少誤字はあるとはいえ助かったけど、「透きとおった哀しみ」には「野口五郎」の名が…ちょっとどころかかなり惜しいですよ。ぴんからと渡哲也は未記入だった。大体どんな層が歌無歌謡盤を買っていたかが、何となく読み取れます。

アレンジャーの顔ぶれも一新し(どの曲を誰が手掛けたかのクレジットはないが、池田氏の名前はB面のレーベルにのみ記載されている)、サウンド的にも若干軌道修正しているが、なんか惜しいんだよね…オープニングからソニーの一番星・百恵の最新曲「ひと夏の経験」で勢いをつけているけれど、イントロにきらびやかさが希薄で、2小節目のコードのせいか「およげ!たいやきくん」が始まるのかと錯覚させる(爆)。エンディングのメロもなんかおかしいし。百恵のシングルの翌月発売なので、そこまで細かくアレンジを詰めている余裕がなかったんだろうけど。唯一、EQで高音域を絞ったようなフルートの響きが独特で、恥じらいを感じさせる演奏になっているのが救いかも。「激しい恋」は若干テンポを遅めて、派手さよりもいかがわしさをちらつかせるアレンジだ。多少ドリフ的ニュアンスがあるのは高島氏仕事の証か?「もう一度」はクラウン盤に負けないエレガントな演奏だが、あの「怪唱」がない分落ち着いて聴ける(!)。弾みまくる演奏の「黄色いリボン」もどっか噛み合いが良くない印象だし。「ふたりの急行列車」には、多少フレッシュな色付けが効いていて安心感が。ここからの筒美曲3連発が最も落ち着ける場所だ。演歌曲は別にクリスタルである必然性がない演奏なのだけど、「夢を抱く女」だけは例外で、バス・ハーモニカを主旋律に据え、エレキ・シタールを脇に従えてのぶっ飛んだアレンジ。タム主体のドラム演奏も異様なノリで、ぴんからの秘めたるサイケ性を思いがけず浮き彫りにしている(?)。ブリリアントポップス/サウンドメーカーズ盤「女のみち」ほどではないが、意外な拾い物だ。「うそ」は一聴してミラクルサウンズ盤と同じ演奏か、と思ったが、キーも違ってました。

最後の2曲にこそ美味しいところがと期待したけど、いずれもフルートが健闘しているものの、従来のクリスタルの聴かせどころを熟知した身ではやっぱり物足りないなと。そう、アレが欠けてるんですよね…「ひとり囃子」にオカリナが入ってるけどね。この物足りなさをSOLU-36盤で挽回することになるのですが(2月24日参照)、それまでの9ヶ月間にクリスタルのアルバムが出ていないってことは絶対ないはず…百恵の曲なら「冬の色」とか、絶対演っているはずなのに。根気強く真相を探りたいものです。