黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は加藤和彦さんの誕生日なので

フィリップス FS-8047 

カレッジ・フォーク・ギター・ベスト14

発売: 1969年

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ジャケット

A1 時には母のない子のように (カルメン・マキ)Ⓐ 🅿︎

A2 或る日突然 (トワ・エ・モワ)Ⓑ 🅽

A3 坊や大きくならないで (マイケルズ)Ⓑ 🅵

A4 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ)Ⓑ 🅷

A5 白いブランコ (ビリー・バンバン)Ⓒ 🅽

A6 悲しくてやりきれない (ザ・フォーク・クルセダーズ) 🅲

A7 山羊にひかれて (カルメン・マキ)Ⓑ 🅳

B1 小さな日記 (フォー・セインツ)Ⓒ 🅷

B2 風 (はしだのりひことシューベルツ)Ⓒ 🆀

B3 恋の花うらない (ビリー・バンバン)Ⓑ 🅴

B4 若者たち (ザ・ブロードサイド・フォー)Ⓓ 🅹

B5 この広い野原いっぱい (森山良子)Ⓓ 🅸

B6 星に祈りを (ザ・ブロードサイド・フォー)Ⓓ 🅴

B7 バラが咲いた (マイク真木)Ⓓ 🅳

 

演奏: 木村好夫Ⓐ、広瀬三喜男ⒷⒸ、加藤稔Ⓓ (ギター)/(オーケストラ名記載無し)

編曲: 川口真Ⓐ、利根常昭Ⓑ、林一Ⓒ、加藤稔Ⓓ

定価: 1,500円

 

再度、春のギター祭りに舞い戻って、3日前のアルバムに負けず劣らず、フィリップスならではのまったりとしたノリに彩られてのフォーク名曲集。この種のアルバムは、とかく曲の選択が平坦になりがちだが(『フォーク・ルネッサンス』のような異端盤もあるにはあるけど)、ここはフォーク・ブームの火付け役としての意地の見せ所である。1曲目だけは好夫ギターをフィーチャーして、あの侘しさを最大限に引き出しているが、そこから先は親しみやすい雰囲気だ。「坊や大きくならないで」だけは、どうしても横内章次の攻めに攻めたヴァージョンが恋しくなってしまうけど、やはり親しみやすい方がいいじゃないか、真似しやすいし。

ラスト4曲はサウンドの雰囲気からして違っているが、これらはフィリップス得意の「MMOステレオ」仕様による、初期のフォーク・アルバム(恐らく『フォーク・ポップス・ギター・ムード』FS-5007)からの転用と思われる。左チャンネルに主旋律、右にギター陣による伴奏が固められ、どちらも実演の役に立つというミックスで、音数が少ない分セパレーションもはっきりしすぎ。いわば「音声多重カラオケ」の元祖で、こういうのは聴くだけじゃもったいないというか、片方のチャンネルが壊れたステレオで、喫茶店で流すと興醒めだろう。蛇足だが個人的には、「カタクリの花ミックス」と呼ぶのが一番しっくりきます(瀧汗)。

最後に、加藤和彦さんに関する私的な話を。確か90年代の半ばだったと思うけど(安井かずみさんと死別後だったし)、六本木を何気なく散歩していたら、ふと目の前に加藤さんの自宅が現れてびっくりした覚えがある。六本木と言えば一等地ではあるけれど、佇まいは庶民的で、この家で大好きな料理に熱中したり、仲間とセッションしていたのだろうかと感慨にふけった…その世の去り方があまりにも衝撃的であったけれど、トノバンと言えばまず思い出すのはそのことだ。名曲も数知れないけど、高沢順子「青春の1ページ」は歌無盤で聴きたかったような…聴きたくないような…