黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

越智友嗣さん (シューベルツ)の誕生日は2月10日

ロンドン SKK (L)-560

ミドリーヌ TOP HITS

発売: 1969年11月

ジャケット

A1 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🆃

A2 フランシーヌの場合 (新谷のり子) 🅹

A3 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 🅼

A4 浜でギターを弾いてたら (藤野ひろ子) 🅱

A5 山羊にひかれて (カルメン・マキ) 🅸

A6 ミドリーヌ (ビリー・バンバン) 

B1 雨 (ジリオラ・チンクェッティ) 🅱

B2 ホンキー・トンク・ウィメン (ザ・ローリング・ストーンズ)

B3 西暦2525年 (ゼーガー&エヴァンス) 🅱

B4 ふたりのシーズン (ザ・ゾンビーズ)

B5 愛の聖書 (クリス・モンテス)

B6 ラヴ・ミー・トゥナイト (トム・ジョーンズ) 🅲

 

演奏: グリニッチ・ストリングス

編曲: 石川皓也

定価: 1,500円

 

キングの名門、レオン・ポップスの別働隊とでも言うべきグリニッジ・ストリングス(盤によって表記が微妙に違う)。ポール・モーリア「恋はみずいろ」の世界的大流行に直接影響を受けてか、流暢なストリングスと若者的ビート感覚を融合させたレコード作りは、それまでの歌無歌謡のスタンダードと一線を画し、他社に与えた影響も大きかったのではないか。ロンドンのレーベルが付いていたことで、名門クラシックと同一のイメージを与えられるというメリットもでかかったと思われる。

主に洋楽のカバーを中心に取り上げていたが、最低4枚「和製ポップス」とのカップリング盤が確認されており、これはその3枚目。B面に並ぶ洋楽の選曲を見ると、純粋に「歌無歌謡盤」として楽しむこともできると察せるが、まずはA面から。なんとこれが20ヴァージョン目の登場となる「或る日突然」から、その特性が全開している。キング盤では『フォークの世界』に収録されたヴァージョンも強力だったが、洋楽的洗練性ではこちらも負けていない。とはいえ、ライナーでは「トア・エ・モア」と書かれていてちょい減点だ…(汗)。「フランシーヌの場合」も、他と一味違った高貴な感じと、ちょっとだけながら躍動感も効いていて、絶望から前に進もうというニュアンスが。以下、この辺のアルバムに必須なフォーク曲が並んでいるが、野暮ったさ皆無でさすがにレーベル・カラーが出ている。相対的に取り上げられ頻度が低い「ミドリーヌ」のエレガントさが特に際立つ。

B面の洋楽サイドの方がやはり本領発揮で、当時の自社トッププライオリティヒットだった「雨」が疾走感に溢れ、新鮮な仕上がり。続く「ホンキー・トンク・ウィメン」からは安酒場の匂いが消え、5弦ギターなんて知るかと言いたげな明朗な響きに、ラブリーなフルートがさえずる。ちょっとディストーション気味のバスクラリネット(?)が妙にロック色を出しているが、その音が消えた途端急に虚無な世界に転じる間奏部が、ストーンズの原曲と360度異なる異次元に導く。「ふたりのシーズン」は古巣リベンジ(?)だが、いまいち工夫不足かな。続く「愛の聖書」は、歌謡臭さは抜けているものの、やはり歌い出しで「やめて」と声に出てしまいますね(爆)。この最後の洋楽2曲が、結果的に歌無歌謡ならではの場末感を持ち込んでしまうという皮肉な効果をもたらしている。

この団体のアルバムはもう1枚、アンコール月間で紹介する予定ですが、そこにはさらなる大サプライズが…